17・職業判定。
ロブは勇者の従者ということになっている。
どういうつもりなのか勇者はロブに剣の稽古を付けたりしていた。
稽古名目でイライラをぶつけているのかもしれない。
ロブはそういうことは分かっているらしく文句も言わずに付き合っている。
ドラゴン退治に付いてくる必要はなかったハズだが付いて来ていた。
従者扱いなのは軍や冒険者の連中への言訳みたいなものだな。
勇者は皆から敬意を受けてはいたけれどそれでも勇者なので一歩引かれていた。
でもロブは違う。
気が付けば兵士や冒険者達から仲間扱いされていた。
徴用されて兵士の経験があるのだと言っていたのだが……
馴染みすぎだよなぁ。
勇者は召喚されて無理矢理勇者の役目を押しつけられているということを
皆知っている。
召喚した当事者で無くてもこの世界の者は彼に負い目を感じてしまうのかも。
なので一歩引いた態度になってしまうのかもしれない。
ロブは皆の気持ちを楽にしてくれているらしい。
勇者の側で勇者の気持ちを受け止めているのだから。
皆、意識しては居ないだろうがロブを仲間扱いするのはその辺りのことが
原因だと思う。
ロブは強い。
勇者ほどではないが並みの兵士なんかよりずっと強い。
なので勇者との稽古が終わると入れ替わり立ち替わり対戦希望者が現れる。
対戦と言いつつほとんど指導だね。
ドコで身につけたのか指導が堂に入っている。
なんというか対戦者の動きが見違えるようになっていくのだ。
なので軍の部隊長が訓練を見て欲しいとまで言ってきた。
大勢を指導したことなど無いと言っていたけれど結局一応みるだけでもと
食い下がられて引き受けさせられていた。
「徴用されたときの班長がジジイだったんだがコイツがもう鬼畜野郎でな。
思い出したくないくらいの目に遭わされたのさ。
でもまあ、オカゲで生きて帰れたんだと思うよ。
コイツラに仕返し代わりに指導したら生きて帰れるヤツラが増やせると思う。
まあ、運次第ってところが無い訳じゃあないんだがな」
結局、指導された連中は増えて行った。
ドラゴン退治が終わった後で生き残っていた兵士は指導された連中の割合が
かなり多かったそうだ。
タダの農民で狩人で元兵士とはとても思えなかった。
でも神殿の職業判定石は持ち出しはできない。
今度神殿に寄ったら確かめてみたいと思う。
でも本人はそんなコトは気にしてないように見える。
いや、全然気になんかしてないよね……お前!
そうしてロブの職業が判明して驚いた。
いや……驚くなって無理だろ!
なんと! 「勇者」だったんだから!!