15・ドラゴンゾンビ。
神殿騎士達に囲まれた。
彼等は神殿と神官達の警護が主な仕事で国軍から派遣されているのだ。
別に聖職者というわけでは無い。
言うなれば神殿に対する見張りみたいなモノだな。
定期連絡のために街の神殿に来たら囲まれてしまった。
なんで平神官な私を取り囲んでいるんだろう?
用があるとすれば私じゃあ無く勇者の方が可能性は高いと思うが……
「お急ぎの所申し訳ありません。
少し聞いて頂きたい話がございます。よろしいでしょうか?」
ダメだ! と言ってもこの手の人間が聞くわけも無い。
一応素直に話を聞くことにした。
「ドラゴンを倒した勇者に同道されているコルナス・ジギタス神官で
間違いありませんか?
勇者と面会したいのですがなんとか紹介をお願いしたいのです」
なんでそんなことをわざわざ私を通してしようとするんだろう。
国軍はドラゴン退治の時は支援もしてるし知り合いだって居るはずだ。
「あー……彼等にはもう頼んだんですがね。
みんな積極的には引き受けてくれなかったんです。
勇者には同情的というか彼の立場が分かってる上に彼の感情を理解しているようで
これ以上刺激したくないってのが本音だと言われましてね。
なので今現在、勇者の一番近くに居るアナタにお願いしようということに……」
一体、何を話すつもりなんです?。
彼は老聖女様を探しています。
元の世界に……家族の元に帰るために……
できたら邪魔はしないで頂きたいのですが?
「ご協力頂ければ国軍や神殿騎士を動員して老聖女様の情報を集めます。
たった二人で国中をウロウロするよりずっと早いと思いますが?」
まあ、確かにその通りだろう。
なので宿にいる勇者に彼等を引き合わせることにした。
なにを話すのかまでは明かされなかったが……
勇者は渋い顔をした。
神殿騎士と言いながら実態は国軍だと知っていたからだ。
どうせまたロクデモナイ話だと感づいたようだった。
「実はまだ内密と言うことにはなってますが『ドラゴン』が出ました。
もう一度退治をお願いしたいのです。
資材や人材は集めている最中です。
お引き受け頂ければ老聖女さまの捜索は我々の総力を挙げて行います。
お二人でよりずっと早いと思いますが?」
結局勇者は引き受けた。
断ったらまた召喚を行うかも知れないことを危惧したらしい。
言えなかったが老聖女さまが居たからこそ成功したのだ。
彼女が神殿に居ない以上やろうと思っても出来ないだろう。
でも新たなドラゴンが出現したなら誰かが対処しなければならない。
勇者には経験があるのだ。
一番対処しやすい人物なのは確かだな。
だが問題のドラゴンを遠望した勇者は言った。
「アレって……オレが倒したはずのヤツにしか見えねぇぞ!
お前等ちゃんと後始末をしなかったのか?!」
ドラゴンはドラゴンでもドラゴンゾンビがそこに居た。
国軍の連中め!!
なんでちゃんとドラゴンゾンビだって言わなかったんだ!!