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14・街の神殿にて。

 街の神殿で施療をしている。

神殿の神官が全員回復魔法のエキスパートという訳ではないので私たちは

歓迎された。

彼女・リンゴに色々指導しながら平穏無事な日々を過ごしている。

最近、悪阻つわりも治まってきたようだ。


リンゴは時々祈りながら泣いているようだ。

いや……涙を流している訳では無い。

私がそう感じているだけだ。

けれどそれをどうしてやることも出来ない……


中央神殿に手紙を出して勇者の様子を知らせて貰うことにした。

もし連絡が取れるならコノ街まで来てくれるようにと。

残してきた資料で勇者を帰せているかどうかは怪しい。

若手の優秀な神官達を総動員してもギリギリくらいの魔力量だろう。

召喚で魔石もかなり使ってしまったし……


リンゴは聖女としての才能を伸ばしている。

私の後継者は既にいるのだがあの子よりずっと優れているだろう。

だが勇者と共に元の世界に帰してあげなければとも思う。

帰せるかどうかは分からないのだけれど。 


勇者は帰る気があるだろうか? 

それすら確認せずに神殿を出てきてしまった。

私も目的ではない人まで召喚してしまったことに動揺していたのだろう。


リンゴは併設されている孤児院の手伝いや施療をしている。

孤児院の子供達にも好かれているようだ。

笑顔で優しい顔を見せているけれどふとした拍子に悲しげな表情がのぞく。

でも……私には何もできないのだ。

聖女の修行をさせてあげることだけしか……


子供が生まれる前に勇者に連絡がつきますように。

二人でさえ彼女をちゃんと召喚することはできなかった。

三人となると一体どうなってしまうだろうか。

勇者が不承不承ふしょうぶしょうでもこの世界に留まってくれるなら話は

少しは簡単になると思うけれど。


彼女を奴隷から解放した。

行商から買い取って私に売ってくれた奴隷商が手続きを引き受けてくれた。

奴隷では無くなったけれど彼女は私の保護下にある。

でも実は神殿の信徒にはなっていない。

彼女の信仰は元の世界の神様に捧げられているのだ。

ココの神様を信仰しろ! などと押しつけることはできないと思う。


表面上は穏やかな日々が過ぎてゆく。

リンゴは施療し孤児院の子供達の世話をし、そして祈っている。

一体何を祈っているのか……

どうにもならない悲しみを抱えながら。


勇者が私たちの所にたどり着いた時には彼女は妊娠6ヶ月になっていた。

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