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12・聖女。

 少しでも違和感のある女性達にはコッソリ鑑定をかけていた。

彼女は勇者と同じ黒髪・黒目だった。

行商が連れていた奴隷……まさか奴隷にされてたなんて……

誰が彼女を奴隷にしたんだろう? 


出立をしようとしていた行商にかなり強引だったと思うが頼み込んで乗せて貰う。

行く先はどうでもいい。

なんとか彼女を解放しなくては……


老人を労ることを知っている女性だった。

言葉はたどたどしいがちゃんとこの国の言葉だった。

森でオークに襲われて助けてくれた男に彼の母の薬代のために売られたと。

言葉はその母親に教わったらしい。


ココにどうしているのか分からない。

夫と夕食の買い物をして帰る途中で彼が光る魔方陣に捕らわれたのを見たのが

最後の記憶だったそうだ。


夫……あの勇者……結婚してたんだな。

絆が深いわけだ……

彼女はその絆に引っ張られてココへ召喚されてしまったともいえる。

だが無理矢理な召喚をしたのは我々なのだ。

なんとしても彼女を勇者の元に返して彼等の世界に帰さなければいけない。


そんなことを考えていたら行商の馬車の先にいた隊商から悲鳴が聞こえた。

魔獣が出現したのだとすぐに分かった。

護衛の冒険者が何人か飛ばされている。

飛び出して護衛達が抑えている間に詠唱をし自分の最強魔法をぶちあてた。

やっぱり歳は取りたくないね。

威力が落ちてる。


それでも魔獣ベアゴルドは倒せた。結果オーライってことにしておこう。

負傷者に回復魔法をかけてまわった。

冒険者たちはゴルドベアを解体して私にも分配してくれるという。

なのでソレで彼女を買いたいと行商に申し出た。


奴隷は仕入れしかできないという行商。

引退寸前だが助力したことで協力してくれるという奴隷商。

彼等のオカゲでなんとか勇者の妻を奴隷から解放することができた。

まあ、解放とはいっても私の奴隷ということにしてはあるのだけれど。


一日も早くと思ったのだけれど彼女が体調を崩してしまった。

暫く移動は無理だろう。

売ってくれた奴隷商の住むという街の神殿へと行く。

ココの神殿長は古い知り合いの一人だ。

しばらく居候をさせてもらおう。


勇者の妻はなんと妊娠していた。

つわりだったのか……

だけど……誰の子供なんだろう? 

本人も分からないという。

勇者の子供ならこのまま彼の元に返せば良いだけだが。


売った男と行商に夜の相手をさせられたのだと言う。

鑑定の出来る者でもまだ産まれていない子供の鑑定まではできない。

産まれてくるまでは誰の子供なのかを鑑定するのは不可能だ。


妊娠中絶はこの国では禁止されている。

母体保護とかでは無い。

単純に少ない人口を増やしたい為政者側の都合でしかない。


彼女の宗教でも自殺と妊娠中絶は禁止されているそうだ。

自殺は禁止事項なのか……

もしかしたら自殺してるかも……なんてことを思ってもいたのだけれど。


そうして思いがけないことに彼女は「聖女」だった。

結婚してるのに……聖女の力が無くなりもせず彼女の中に有るなんて! 

異世界の宗教だとそういうことも有るのだろうか。


体調を配慮しながら彼女に聖女としての修行をさせた。

勇者が彼女を妻として受け入れてくれるかどうか分からない。

一緒に帰ると言ってくれるかどうかも……

ともかくなんとか勇者と連絡を取らなければ! 

帰還させるためにも、彼女と子供のためにも……                      

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