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10・泣く女。

 村から女の奴隷を仕入れた。

言葉がたどたどしい妙な女だが顔立ちは可愛らしい。

売ったのは馴染みの村人だが兵士の経験があるようでこの辺りでは猛者だろう。

死んだ親父も知ってるが力が強いだけのアホだったな。

息子の方は油断できないヤツな雰囲気だが。


オレ達行商は奴隷を買い入れるのも仕事のウチだ。

許可された者だけだがな。

もっとも買い入れるだけで販売はできない。

販売ができるのは登録された奴隷商たちだけだ。

オレ達は連中の仕入れ担当あるいは下請けみたいなものだ。


女は大抵娼婦にされる。

ソレが一番需要があるからな。

だからオレが仕入れた女をつまみ食いしてもだれも咎めないしそんなのは

普通のことだ。

そうしてオレは女に夜の相手をさせた。

女は逆らわなかったが楽しんだようには見えなかった。

初めてじゃあなかったんだが……


オレのことを怨んでいるようにも見えない。

だが女は泣いている。

いや……涙を流している訳じゃあない。

なんというか……オレがそう感じるんだ。

コイツは泣いているんだと。


泣き叫ぶ女を扱ったことが無いわけじゃあない。

女を売るのは大抵男だしな。

コイツは売ったアイツを怨んでるようにも見えなかった。

ただ静かに馬車の荷台に座っている。

それだけなのに泣き叫ぶ女達より強く泣いてると感じるのはなぜだ? 


鬱陶しいとは思うがまあ次の街までだ。

このところ奴隷の出物は無かった。

コイツは臨時収入になってくれるだろう。


そう思ってた。そう思ってたんだ。

オレは今、臨時収入どころじゃあ無くなっている。

先を行く隊商で悲鳴が上がったんだ。

何事?! と思う間もなく魔獣が現れた! 

ヤバイ! アレはこの辺りでは上級の魔獣ベアゴルドだ! 


このところこんなヤツは出てなかったのに! 

隊商の護衛達が相手をしているが並みのヤツじゃあ敵わないだろう。

あ! 一人飛ばされた! 

オレがパニックを起こして馬車を操り損なっても無理ないと思うよな? 

ところが途中の村から乗せた旅の老尼が飛び出して行った。

バァさん! 一体何のつもりだ! 


ところがバァさんは氷魔法の一撃でベアゴルドを始末しやがった。

そうして負傷者に回復魔法まで掛けて廻っている。

まあ、即死させられた連中はどうしようないんだがな。


護衛の冒険者たちは素早く魔獣を解体すると老尼に次の街で代金を払うと言う。

老尼はオレにその代金で女を買いたいと言った。

でも規定があるからな。

オレは奴隷商にしか売れないんだ。

それを聞いていた隊商の商人の一人が自分が買うと言って来た。


「もう奴隷商は引退する気だったんですがまだ登録はしたままです。

私が買って聖女さまにお譲りいたしますよ。

ご助力頂いて助かりましたし皆に回復魔法まで使って頂きましたから」


結局女は老尼……いや聖女様のものとなった。

なんであの女を買う気になったんだろうか? 

馬車の荷台で二人でボソボソと話していたのは分かっていたんだが……


まあこれであの女とも縁切れだな。

可愛らしくても鬱陶しい女だった。

聖女には助けられたから値段を吹っ掛ける訳にもいかなかったが利益は出た。

欲をかくと碌なコトは無いからな。

女も娼婦よりは聖女の世話係にでもなるほうが楽だろう。

これでメデタシってところかもしれないよな。

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