はじまり
--最果ての村 アシタヘ--
「ナモミ~!今日から出発でしょ!?早く起きなさい!スミレちゃんたちも下で待ってるわよ!」
レンガづくりの一軒家の外まで聞こえる大きな声が響く。
「眠む~。めんどくせぇ~。」
緑色の長い髪をうねらせながら、少女が寝返りをうつ。
その5秒後、雷が落ちる。
「あんた、いい加減にしなさいよ!王様からきた勅命の旅、今日からなんでしょ!スミレちゃん達、何分待たせるつもりなの!」
エプロン姿の女性が、仁王像のごとくベッドの前で立っている。
「そんなの、王都の成金くそじじいが勝手に送ってきただけじゃん。
あたしは今の生活が気に入ってんだ。ああ、布団の中あったかいなり~。」
「ナモミ!!!!」
・・・
一軒家の玄関が開く。
出来立てのたんこぶをさすりながら緑髪の少女が出てくる。
「スミレちゃん達、ごめんねぇ~。ナモミ!あんた、世界救うまで帰ってくるんじゃないよ!」
そういうと後ろから出てきたエプロン姿の女性は、緑髪の少女の背中をバンッと叩いた。
「い、いえ、私たちはそんなに待ってませんから・・・。」
長身でスタイルの良い、ショートカットの紫髪の女性が苦笑いで手を横に振る。
「ナモナモ!おそよう!もうすぐお昼だよ。」
黄色いツインテールを振りかざして、小柄な少女が元気に挨拶する。
「OK!これでイツメンそろったな。おばさん、ナモミちゃんのことはウチらに任しといてや。」
自分の胸をポンと叩いて、緋色のポニーテールの女性が独特の訛りで答える。
「なんでお前らはそんなに元気なの?チワワなの?とくにフォセ。ああ、日光が眩しい。溶ける~。体が溶ける~。」
ナモミが目を細めながら大袈裟にその場で膝をつく。
「ナモナモはいつも通りだね、これから冒険が始まるってのに。」
フォセと呼ばれたツインテールの少女が笑顔で答える。
「ここでぐだぐだしててもしゃーないから、はよ行こやぁ。」
赤髪の女性がワクワクを隠し切れない様子でみんなに呼びかける。
「そうですね。この世界、早く何とかしないと・・・。」
紫髪の女性は、
白と黒以外の色が奪われた色あせた世界を見渡し、ため息をつくかのように呟いた。