結束バンドを常に持っている奴にロクな奴はいない
今日は二話連続で投稿しています。間違えて先にこの回に来てしまった人は、一話前の回に戻って、読んできてからまた来てください。
難有った、昼食を終え。俺は、この先のことを考えて気が重くなりながら、午後の授業に臨んでいた。
この先、デートしなきゃならないし、それに三人と。みんなが思う甘いデートなんてできるはずがない、ただ俺をおもちゃにして遊ぶだけだ、特にあの意地悪な先輩とのデートは。とりあえず、そのための金集めのために佐久間とバイトせにゃならんし。めんどくせぇなぁ。
「なあ、今日のお前、ボーっとしすぎじゃね?」
授業が終わったのか、佐久間が後ろを向いて話しかけてくる。
「あの三人とデートする俺の身にもなってみろ」
佐久間は、手をひらひらとさせながら、呆れた表情をする。
「お前って奴は、傲慢な人だねぇ」
「何がだよ」
「あんなにかわいい女の子たちからのデートの誘いを憂鬱に思うなんて、お前、もしかしてゲイか?」
お前にだけは言われたくない。度々、女の子からの告白をフッてきたくせに。お前がゲイだろ。
「バカ言うな、俺だって普通のかわいい子からのデートのお誘いなら喜ぶわ、相手はあいつらだぞ、甘いデートなんかできるはずがねぇよ」
「そうかなぁ、まあ、決まったことだし、またバックレないようにな」
「はぁ、そうだな」
今度、バックレたら何されるかわかったもんじゃない。
佐久間と話していると担任の雪ちゃんが入ってきて帰りのホームルームが始まる。話の内容はつまらないものだった。周りを見れば、鞄の裏で携帯をいじるものばかり。それも終わり、委員長の号令で生徒たちは蜘蛛の子をを散らすように教室から出ていく。
俺と佐久間も帰る用意をして昇降口に向かい、靴を(この二年で自分の足のサイズになじんできて少しボロボロになってしまったローファーに)履き替える。校門までの道のりに一人歩く篠田さんの背中を見つける。
転校二日目だもんな、まだ確立されたクラスのどっかしらのグループには入れていないか。
「お~い!篠田さーん!」
佐久間が、俺を取り残し走って篠田さんに呼びかける。
はい、出ました。イケメンの気遣い発動。これだからイケメンは。
大声で名前を呼ばれて、気恥ずかしそうにこちらに顔を向ける篠田さん。
「な、なんですか?」
「いやぁ、一人なら一緒に帰ろうかなって」
「そうですか、まあ、いいですけど」
篠田さん、すげぇな。イケメンに一緒に帰ろうって言われてるのに、表情一つ変えずに、寧ろ少し迷惑そうな顔してるよ。
「んじゃ、帰ろうぜ」
というわけで、俺は佐久間と篠田さんとの三人で帰ることになった。そういえば、篠田さんの家も、俺の家からそこまで遠くなかったしな。
途中、佐久間が篠田さんに話があると言って、ちょっとした公園のベンチに立ち寄る。話を聞くと部活の勧誘だった。正直がっかりした、話があると言って公園にまで来たのに部活の勧誘かよ、告白じゃないのかよってね。まあ考えてみれば、俺のいる前で告白する意味が分からないしな。
佐久間は、言いたいことを言い終えると、チラリと左腕の腕時計を見てからスッとベンチから立ち上がり「飲み物買ってくるわ」と頼んでもないことを言い出し、有無を言わせず俺と篠田さんをベンチに残し、飲み物を買いに行ってしまった。
「行ってしまったな」
「そうですね」
「あいつは、少し強引なところがあるからなぁ、部活のことは気にしなくていいよ」
「は、はぁ」
あ、そんな気にしてなかったみたい。なんか俺が逆に推してるみたいじゃん。
それから篠田さんと他愛もない話を交わしていた。
数十分経った頃か、佐久間の帰りが遅いなと不審に思っていたとき、公園には似合わない、七人ほどの男がやってくる。それに、七人の中には見覚えのある男もいた。すぐに、俺は佐久間に要件をスマホでメッセージメッセージアプリで、できる限りの速さで送った。
男たちは、一直線にこちらの方へ向かってくる。横を見ると、篠田さんは目が泳いでいる。この展開に驚き怖がっているように見える。
「ホントに居やがったぜ、久しぶりだなぁ、嬢ちゃん」
声を聴いて思い出した。先日、篠田さんを助けたときに蹴散らした三人だとは分かっていたが、どいつだったか思い出せなかった。けど思い出した、バタフライナイフを持っていたリーダーぽかった人だ。
篠田さんも、声を聴いて思い出したのか、体が少し震えだした。
「なんだぁ、この冴えない野郎は、彼氏かなんかかぁ?あの男ではねぇようだが」
よし、俺のことにはまだ気づいていない様子だ。ここでバレては一方的にやられてしまう。七対一はさすがに無理だ。先日の、三対一も裏路地という条件だから勝てたものだ。
「いきなり、なんですか?あなたたちは」
恐怖で放心しちゃっている篠田さんの代わりに俺が言う。
「あん?お前さんにゃ、関係ねぇなぁ」
「関係ありますよ、現に僕は迷惑しています」
「チッ、うるせぇな、ぼっくんは黙って寝とけ」
そういうと、俺に近づき、鳩尾に拳をめり込ませる。
痛いだけで、気を失うほどではなかったが、寝とけと言われたので、気を失ったフリをしておく。
「きゃあぁぁあ!!」
俺が殴られて気を失ったフリをすると、篠田さんはようやく現状を受け入れ、我に返ったようだ。
「あー、やかましい、もっと騒いでほしいが、場所が場所だ、このうるさい女の口を塞いでおけ、この男も連れていく、目の前で知り合いが犯されるのを見させてあげようじゃねぇか」
趣味が悪いことをするもんだ、そんな性癖も俺には持ち合わせてないっていうのに。
篠田さんは口にガムテープを、俺は、両手首と両足首を結束バンドで縛られた。そして、男たちに抱えられて、俺と篠田さんは誘拐された。白昼ではないが、夕方のまだ明るい頃に堂々と。
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