ファミレスでドリンクバーだけ頼んで長時間居座るほど迷惑なものはない
「まだけっこう混んでるな」
佐久間が昼時を少し過ぎたファミレスの混みあった店内を見まわして言う。俺も店内を覗き込むと確かに混んでいた。店内には学校から近いからか生徒がまだチラホラといるようだ。
俺たちは、篠田さんと部員の顔合わせも終わって暇になったところ、千春が「お腹空いたな~」と言ってしまったため、ファミレス行こうという空気になった。もちろん俺は帰りたかったが、佐久間に「俺たちもまだ何も食ってねぇんだよな、腹空いてるよな、啓一」と先手を打たれ、カウンターの手持ちがなかったのと、実際にお腹が空いていたこともあって、返事が遅れてしまったため空気に流され、今に至る。篠田さんも一緒に来ている、転校初日から友達作りが活発な子だな、と思った。ちなみに、俺はすでに髪を下している、ワックスで固まった髪を梳かすのには手間がかかった。髪を下している作業の様子を不満気に見つめる藤堂先輩がいたが、スルーした。
「いらっしゃいませ~」
バイトらしき女性の店員に、人数と、制服で吸うはずのない(制服でなくても吸ってはいない)喫煙か禁煙かを問われ、奥の窓側の席に案内された。六人なので机を隣から一つ借りて三つの机で座っているが、ギュウギュウになっている。もちろん俺は女子の隣は嫌なので、佐久間の隣でソファではなく、椅子の席の端に座っている。
みんな頼むものを決めてオーダーすると、そこに座ってしまった宿命か、飲み物を取りに行かされる。もちろん佐久間も一緒に。飲み物を一通り淹れ終えて席に戻り各自に配ると、佐久間の話題提起とともに、談笑が始まる。
「みんな春休みの合宿は無かったけど何してた?」
「友達と遊んだり~、春物の服を買い物したり~、色々!」
「私は、本を読んでいた、他にやることもなかった」
「ん~、そうね、誰かさんが、祖母の家に帰省するから参加できない、なんてつれないこと言うから春休みの合宿はなかったから、勉強していたわ。私は、今年、受験生だからね、大変なのよ」
確かに祖母の家に帰省したと嘘をついたが、この部活の合宿に参加するとロクなことがないから参加しなかっただけである。バレなければ問題ではない。
「何言ってるんですか、藤堂先輩、あなたの成績だったら推薦で行けるでしょう」
「美紗樹先輩、頭いいもんねぇ~」
「行けるでしょうけど、勉強しといて損はないでしょ?留学したいなんて急に思いついたら間に合うものも間に合わないわ」
「藤堂先輩、留学するの?」
「どうかしらね」
俺の方を見て答えられても困る、聞いてるのは光だ。
ちょうど会話が切れたところで、注文していた料理が運ばれてくる。成長期の男子高校生にはファミレスの品の量は少ないが、どうしても女の子の前だと複数注文を躊躇ってしまう。
俺は、頼んだパスタを、いつもよりゆっくりキレイに食べる。隣の佐久間は躊躇うことなくガツガツ食べている。イケメンの余裕の差を感じる。
食べ終わった後は、放心していた。ボーっと窓に映る景色を見ていた。周りは食べ終わった後も話し込んでいた。篠田さんも会話に参加できているようで少し安心する。俺は、話を振られるが「あ、ああ」とか、受け流していた。
ふいに、携帯を取り出して、画面を付けると朱里からの通知が溜まっていた。内容は「昼飯はどうすんだ」とか「昼飯は、兄貴の分、作ったほうが良いのか?」などの昼飯の心配メールが溜まっていた。そういえば、昼飯を外で食うことを報告していなかった。帰ったら、めちゃくちゃどやされるだろうな。でも、帰るいい口実ができた。
「ちょっと、盛り上がってるところ悪いけど、俺は先に帰るわ、妹に連絡するの忘れていて心配して待ってるらしい、すまんね」
「けーいち帰っちゃうの?」
「妹が心配しているなら仕方がない」
「あら?あなたの不注意じゃない、それでも帰るのね」
「すいませんでしたね」
妹の心配をダシに帰るのは気が引けるが、まあ罰は妹からの叱責があるし、いいか。
「啓一が帰るなら、俺も帰るわ、男一人いても気まずいしね」
こうして、俺と佐久間はテーブルの上に代金を多めに置き「釣りはいいよ」と言い残しファミレスを去った。
俺と佐久間は、家が同じ方向で、聞けば佐久間も家が近いという理由で志望したらしい。
佐久間と並んで歩いていると佐久間の方から話を振る。思うが、佐久間は会話の回し方を心得ているのか、いつも話を振るのは佐久間だ。
「藤堂先輩は今年で卒業か」
「そうだな」
「そうだなって、何か思うことはないのかよ」
「まだ三年になったばかりだぞ、それに、あと一年あの人のおもちゃにされるのかと考えるだけで長く感じるわ」
新年度が始まったばかりなのに、もう卒業のことを考えるなんて生き急ぎすぎだ。藤堂先輩が卒業したら今度は、俺たちだっていうのに。
「そうかい、じゃあ、もし先輩が、さっきの話通り留学してもなんも思わない?」
「別に、何も思わないさ、勉強できるし、してもなんら不思議じゃないだろ?」
「お前が勉強のこと言うのか、入試一位で、未だに学年一位をキープしているお前が」
「藤堂先輩も似たようなもんだろ」
「まあな、でも入学スピーチで、お前みたいなことはしなかったらしいけどな」
「触れるなよ、俺の黒歴史に」
あの時の俺はどうかしていたよ、ほんとに。
「そういやさ、篠田さんとは何で知り合いだったの?」
「彼女の尊厳のために伏せます」
「なるほどね、まあ、またお前が女をひっかけたことには変わらねぇか」
ひっかけたとは失礼な、れっきとした人助けだっつうのに。
こうして話していると住宅街のT字路に突き当たる。右に行けば、佐久間の家。左に行けば、俺の家。
ここで、佐久間と別れる。
「じゃあな、また明日学校で、ちゃんと来いよ!」
「ああ、じゃあな」
佐久間と別れた俺は、朱里の怒りを抑えてもらうための献上の品を買いに一度コンビニに向かう。
コンビニでシュークリームと好きそうなお菓子を買ってやる。これで、許してもらえたいいのだが。
帰宅すると、妹が玄関で仁王立ちし腕を組みながら待っていた。
そのあと、めちゃくちゃ怒られたが、供物を捧げると怒りはだんだんと治まっていった。ちょうど小腹も空いてたため朱里が作ったオムライスをガツガツ食べた。美味いと言ってやると、もうほとんど怒りは治まったみたいだ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
それと、話の展開は遅いと感じますか?
少しゆっくりめのペースで書いているので、どちらが良いのかわからなくて。
早くしてくれ、このままでいい、どちらかをできれば感想の方に書いていただけるとありがたいです。
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