部活動はコミュニケーションを広げる場であると誰が言った?
俺と佐久間と篠田さんは、新校舎、教養棟、プールを順に巡りつつ、そこで行われている部活動を見学した。余談だが、女子ウケと友人の多い佐久間は、部活動をしている人たちの手を止めさせて挨拶に来させるほどの人望だ、うらやm、いや、集中している人たちの手を止めるとは迷惑な野郎だ。
そして、やってきた、ここ旧校舎。外見はレンガ調の壁が蔦で覆われていて、夜にでも来たら肝試しスポットに成り果てるだろう雰囲気を醸し出している。旧校舎自体は普段の授業では扱われないが、部活動の部室にでも使ってくれという学校の理事長の(粋なのかは知らんが)計らいによって未だに取り壊しが行われていない。
その旧校舎三階の階段上って左に向かって四番目の教室、つまり三階の最奥の教室である。そこに俺と佐久間が所属している「レジャー部」の部室兼活動の場がそこにある。レジャー部なんて舐めた部活動を承認する生徒会もどうかと思うが「校則には人数が規定を満たしていればどんな部活があっても構わない」ということらしく去年レジャー部が設立された。
で、今、俺たちは三階の最奥の教室に向かっている。正直、憂鬱だ、この階段が永遠に続いてればと願うが叶うわけがない。そんなとき佐久間が篠田さんに話しかける。
「篠田さんは、体育館の部活に興味あったりした?バレーとかバスケとか」
「いえ、私は運動はからっきしダメで、加えてこの身長ですし、あまり興味はないですね」
「ふ~ん、そっか、よかった、体育館は今、改装工事中で体育館部活は他の施設を借りてやってるからね、もし興味があったらどうしようかと思っていたところだよ」
「あ、そうなんですか」
「それで、今向かってるレジャー部の部室なんだけど、ここは俺たちが所属していて活動は仲良く遊ぶだけって感じな緩い部活だよ、見学してみて興味がわいたら入部してね、歓迎するよ」
「は、はぁ」
そうこう話しているうちに俺たちの足は三階の最奥の教室の前で止まった。
「よし、着いた、じゃあ俺たちの部活、レジャー部へようこそ」
佐久間が最奥の教室の扉を開ける。中は教室というより準備室のような空間に女の子が三人、長机に向かい合い座って談笑していた。
俺たちが入ってきたことに気づいたか、女の子たちはこちらに視線を集める。
「おっす、新年度早々活動してるね」
「そうね、佐久間君、誰かさんのせいで春休みに何もできなかったから、こうしてみんなの顔を見に来たのよ、、あら?櫻木君が珍しく来ているのね」
この人は藤堂美紗樹、一つ上の先輩で、三人の中で一番背の高い、かわいいと褒めるよりかは、きれいだと褒めるのが正しいようなスレンダーで、顔が整った美人だ。学校でも有名な美人の一人だ。その人の髪の毛は、見ると枝毛という言葉が頭の辞書から消えるような、深い飲み込まれそうな漆黒の長い髪が美しい顔を引き立たせている。丁寧な言葉づかいではあるが、端々(はしばし)に棘を感じさせる。
「よう!佐久間!、けーいちも来たのか、久々に全員集合だな」
この見るからに元気な子は桧原千春、三人の中で一番うるさい、こちらはきれいだというよりかは、かわいい感じの顔で、赤みがかった茶色のポニーテールの髪を揺らしている。背は低いわけでも高いわけでもない平均サイズではあるが、少々胸が目立つような体型である。誰にでも仲良く接することのできるコミュ力の化物だ。こいつとは幼馴染で長い付き合いである。
「佐久間、啓一を連れてくるなんてグッジョブ、それで、後ろにいる子は誰?」
この子は小野瀬光、三人の中で朱里に変わって妹にしたいランキング堂々の一位を飾れるくらいの小動物感を醸し出している。ショートカットの髪に珍しい銀髪で小さくてかわいい顔を際立たせている。名前に反して性格は少し暗いところがあるが、そこもじっとしているリスのようで愛らしい。
「この子は篠田さんだ、うちのクラスに転校して来たんだ、んで俺と啓一で学校案内と部活動見学をしていて、ここが最後ってわけ」
「篠田結衣です、よろしくお願いします」
「うん、よろしく」
「よろしくね!」
「櫻木君がまた女を釣ってきたのね」
「藤堂先輩、人聞きの悪いことを言わないでくださいよ、変な誤解を生んでしまうじゃないですか」
あまり人聞きの悪いことを言うならば、藤堂先輩には鋭い棘があると、全校放送で知らせたいところだ。
俺の反論にどこか不満そうな顔をする藤堂先輩、どこが癇に障ったのか全くわからない。
「ねえ、櫻木君、ここは私たちだけよ、いつものあなたにしてくれないかしら、あなたの敬語は、なにかむず痒いわ」
「いえ、すみません藤堂先輩、篠田さんもいるのでできませんよ」
「いいじゃないの、あなたの変な噂を聞かされる前に知られておいたほうが良いでしょう?」
「いや、でも、、」
「佐久間君」
「あいさ!」
佐久間がニヤつきながら俺の背後に回り、俺を羽交い絞めにする。前から悪魔のような藤堂先輩が近づいて俺の顔に手を伸ばす、まるでそれは、悪魔の契約を交わそうとするメフィストフェレス、さすれば俺はファウストといったところか。目の前の光景に篠田さんは呆気にとられている。
藤堂先輩が俺の顔から眼鏡を外す、そしてどこから持ってきたのか、ワックスを手になじませ、俺の下ろしてある前髪を掻き上げる。
「放せ、佐久間、もういいだろ?美紗樹先輩も気が済んだか?」
藤堂先輩はにっこりと満足げな表情を浮かべる。
「久しぶりの本性けーいちだね」
「私はどっちの啓一でもいい」
光が冷たいことに若干心が傷つけられたが、かわいいから許した。
しかし、ここに動揺を隠せない人物が一人いる。
「あ!!え?!この前の!」
そう、この転入生、篠田さんだ。
一番懸念していたことが起きた、ばれてしまった。まあいつかはバレるだろうと思っていたがこんなに早くバレるとは、全部藤堂先輩のせいである。
「あら?この櫻木君を知っているのかしら」
「知っているっていうか、この春休み中に、この子がレイプ」
「あーーーーー!それは言わないでーーー!」
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