生まれ変わる悪徳貴族
「魔法波ぁぁああぁぁぁああぁぁぁっ!!」
「「ぎゃあぁぁぁああぁぁぁあぁぁぁっ!?」」
リコンロの屋敷にて、僕は魔法波を放ちました。僕の放った魔法波は執務室の壁を破壊し、庭にでかい傷跡を残したのです。
あまりの威力にリコンロたちは腰を抜かしましたよ。この豚のような体躯のちょび髭がリコンロですか。そして、あっちの宝石に身を包んだケバい化粧のババアが叔母のようですね。
それと、たまたま部屋にいたハゲも腰を抜かしています。やっと、僕の恐ろしさがわかったのですか?プククク・・・。
「さて、言いたい放題、やりたい放題やってくれたようですね?」
『・・・それはお前もじゃないか?』
ええいっ!ご主人は今は黙っているですよ!!今は僕のターンで良いとこなのですから!これから、この悪徳貴族を処罰するのです!僕の独断でっ!!
「お、お、お、お前!妖精と言えども貴族の屋敷を襲ってただで済むと思っているのかっ!!」
「思ってますよ?ほら、これを聞くのです」
僕は丸い水晶を掲げました。魔石が輝き・・・。
『ふふふ、昨日妖精がこの街にやって来たことは知っていたけど。こんな素敵な物を持っていただなんて。リコンロ、もっと孤児院を叩きなさい!そうすれば、更に魔石を出すかも知れないわ!!いえ、妖精を拉致した方が良いかしら?』
『ええっ!?で、でも、その妖精は王都に向かうと聞いてますがっ!?それを拉致すると言うことは・・・』
そう、それは先ほどのこの部屋での光景でした。あの魔石は周囲の映像を記録する事も出来るのです。これは妖精に危害を加えようとした大きな証拠となるのでした。
「「お、お、おのれぇぇええぇぇぇっ!!」」
リコンロと叔母は怨嗟の声を上げました。そして・・・。
「いたぞ!リコンロだっ!!」
「その叔母もいるぞ!!」
私兵団たちを片付けた僕の使徒たちがこの部屋に雪崩れ込んで来ました。なお、この屋敷にいる人間は使用人だろうと水をぶっかける様に指示していますから、それらも片付けて来たのでしょう。
「殺せ!!」「殺せ!!」「殺せ!!」「殺せ!!」「殺せ!!」「殺せ!!」「殺せ!!」「殺せ!!」「殺せ!!」「殺せ!!」
そして、広がる殺せコール。リコンロと叔母は抱き合いながら身体を震わせました。貧民街の方々はそれほどまで彼らを恨んでいるのでしょうね。
しかし、僕がさっと手をあげると先ほどコールが嘘の様に止まりました。
「プククク・・・貧民街の皆さんはこう言っていますが?」
僕はニヤニヤと笑いながらリコンロと叔母を見下してやります。それはもう、思いっきり。すると、二人は土下座をして命乞いを始めたのでした。実に滑稽ですねぇ。
「よ、妖精様!!どうか、お、お命ばかりはお助けをっ!!」
「謝りますから、何でも致しますから、お願い致しますぅぅぅっ!!」
二人とも必死ですねぇ?でも、お前たちへの罰は既に決まっているのですよ。よって・・・。
「よいでしょう。命だけは助けてあげます」
「「・・・・・・・・・・・・え?」」
よっぽど、僕の言葉が意外だったのか。二人は唖然とした表情で間を開けたのでした。
「さあ!皆の者!!手伝うですっ!!」
「「「「「おおぉぉぉおおぉぉぉぉおぉぉぉぉぉっ!!」」」」」
「な、何をするぅぅぅっ!?」
「や、やめなさい!や、やめてぇえぇぇっ!?」
二人は首から下を縄で簀巻きにされて、頭を下にして数人の大きな体躯の力持ちのおっさんに持ち上げられました。そして、用意されるのは二つのドラム缶でした。
そう、例によってドラム缶の中には洗脳薬がたっぷり混入された【生命の泉】の水が入っているのですよ。
「お前たちには後生涯を僕の使徒となってもらいます。まずは頭からこのドラム缶風呂に入り、性根の悪さを叩き出すのですよ!!」
「「いやいやいや、これは処刑なのでは!?」」
「いいえ!邪悪な心を叩き出す為の儀式です!!さあ、やるのですよ!?」
「や、やめ・・・ブクブクブクブクブクブク・・・」
「た、たす・・・アバブブブブブブブブ・・・」
こうして、悪は滅んだのでした。あと、これを数十回も繰り返せば、邪心は消え去るでしょう。僕の使徒たちにも殺すなと命令しておきましたし、【生命の泉】の効果で普通の水よりも溺れにくいはずです。すぐに回復しますからね。ある意味で悪魔の拷問なのですよ。
・・・さて、そろそろ準備をしておきますか。
〜〜〜〜1時間後 リコンロの屋敷 もう一人の大貴族視点〜〜〜〜
「・・・やけに静かだな。暴動はどうなったのだ」
私は今、憎むべき悪徳貴族リコンロの屋敷に来ていた。
私の名は『トモマ・ノッマル』。このゴイチの街の領主であり、二大貴族と呼ばれている男だ。
この屋敷の主人であるリコンロは貴族の面汚しだ。貴族の地位を利用しやりたい放題。しかも、この街の経済の大部分を握っているので、私の家でも簡単には文句が言えない。
全く、何が『領主』だ。何が『二大貴族』だ。あんな屑どもに街の財政を握られて名ばかりの良いところである。
リコンロの親父さんはいい人だったのに・・・いや、やめて置こう。叔母の野心に気が付けなかった私の落度だ。
「トモマ様!準備が整いました!!」
「む、わかった。では、中に入るぞ」
「はっ!」
部下の兵士の言葉で私は我に返った。何をやっているのだ私は、今はそれどころではないと言うのに・・・。
そう、私がここに来た理由。それはリコンロの屋敷で暴動が起こったと報せが入ったからだ。いつかはこんな日が来るかと思ってはいたが、それがまさか今日になるとは思わなかった。
私と数十人の兵士たちはリコンロの屋敷の門をくぐる。庭には誰もいない。ならば中か?私たちは慎重に進み、屋敷の中を覗き見た。すると・・・。
ーーーーワッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!ーーーー
中では皆が酒を飲んでいた。それはリコンロの私兵団、使用人、そして貧民街の住民たちもだ。訳が分からない。
彼らの顔を見る限り暴動が起こったと言われても信じられなかった。な、何が起こったと言うのだ・・・。
「おや〜?こりは領主様じゃぬぇか?」
「おおっ?領主様か?よし、リコンロ様を呼んでこい!!」
「おうさ〜〜!!リコンロ様って何処に居るんだっけ?」
その光景を見て唖然としていると彼らは私たちに気付いたようだ。そして、貴族である私の前でも無礼さを変えない。普通ならば極刑ものである。それが分からないくらいベロベロに酔っているようだ。
「おやおや、これはトモマ伯爵様では無いですか。一体、どうしたのですかな?」
しばらくすると、人の波が割れてリコンロと叔母が私の元に歩いて来た。暴動が起こったと言うのに、なぜ無事なのだろうか?
「これはリコンロ男爵。夜分に失礼を。私たちは暴動が起こったと聞いて駆けつけて来たのですが・・・」
「暴動?はて、何のことやら?そんな物は存じませんが?」
「・・・幾つか質問させて頂いてよろしいでしょうか?」
「ええ、勿論」
リコンロに暴動の事を聞いてもそんな事実は無いと言うのだ。一体、どう言う事なのか・・・私はリコンロに質問をして真意を引き出そうと試みる。
「そもそも、何でこんなところで酒を飲んでいるのですか?」
「これはパーティですよ。今までに無い斬新な。見なさい、この笑顔を皆喜んでいるじゃないですか」
「・・・そこで酒を飲んでいる貧民街の住民たちは?」
「私がパーティに誘ったのです」
「・・・屋敷の一部が破壊されているようでしたが?」
「ああ、夜空の星が見たくなりましてね。心優しき貧民街の皆様が壊してくれたのですよ。いやいや、夜空の星はいつ見ても良いものですな」
「・・・・・・・・・・・・・」
私が訳が分からないと頭を抱えているとリコンロは笑いながら言った。
「・・・トモマ伯爵。私は間違っていました。私は今まで、自分と叔母さえ良ければそれで良いと考えていました。しかし、ここにある笑顔を見て考えを変えました。全てはこの街に住む人々の為。貧民街の人々の現状は私が招いたもの。彼らの生活の生活の保障、仕事の支援。私はこれから彼らの為に尽力を注ぐ決意を致しました」
「・・・・・・・・・は?」
私は唖然として口が開いてしまったのだった。だって、まさか、まさかあのリコンロからこんな言葉が聞けるとは思わなかったからだ。しかも、リコンロは少年のようにキラキラしている・・・はっきり言って気持ちが悪い。
「そして、もう一つ。私たちを導いてくださった、あのお方の為に・・・」
「あ、あのお方?そ、それは一体・・・?」
私はつい、リコンロに聞いてしまった。リコンロはふっ・・・と笑うと。
「モツ様ぁぁああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁっ!!」
ーーーーモツ様!!モツ様!!モツ様!!モツ様!!モツ様!!ーーーー
・・・と貧民街の連中も混ざって謎のコールが始まった。何なのだ、これは・・・はっきり言ってヤバすぎる。モツ様とは一体?いや、確か街に来た妖精の名前が確か・・・。
私はリコンロたちのモツ様コールを聞き続けたのだった。彼らのテンションは最骨頂。コールは朝まで続いたのだった。




