ヴィシュヌ
他の参加者を襲っていた獣が、ついに食べ飽きたと言わんばかりに
こちらを見ている…
すると突然獣の顔が、ぐにゃりと歪み
まるで勝利を、確信したかのような笑みを浮かべる。
一瞬のこちらの隙を見つけると
後ろ足を、バネのように蹴り上げ
一気にこちらへと迫る
「ぐっ!?」
和人はゆりと獣の間に体が引き寄せられるように動き、
獰猛な牙がゆりへと向かうのを防ぐ。
しかし獣も通常ありえない動きで和人へ連続で渾身の一撃を与えようと迫る
和人はギリギリの範囲で猛攻を、防いでいたが、
身体を、大きく反らし避けたところで
ありえない下からの鋭い蹴りを和人に叩き込む
「ごほ…ごほごほっっ」
蹴りを叩き込んだ後、何故か動揺したかのように体を震わせると
不適な、笑みを見せた後、
「へへへへ」
「人間如き最初の、一撃で終わると思ってたんだけどナ」
!
獣が不意に語りだした。
「まさかここまで粘るとは想像してなかったヨ」
「つい本気を出してしまったジャアナイカ、死んだとおもったんだケドナ」
酷い打撃を受けた身体を、起こしつつ和人は
「なん…だ喋れるのか…」
「しかも今の僕では全く蹴りが見えなかったよ…」
立つのがやっとだと言わんばかりの和人をゆりが支える
「あんた今死んだ思ったって言ったけど本気で殺そうとしたわけ?」
「いやいやーさっきのやつらまでは精神に直接攻撃して幻想をみせていただけなんだケド」
「こいつ予想外に強いもんだから精神攻撃に変えるの忘れてタ」
「なによそれ!」
今の攻防を、見たゆりは相手のlevelに疑問を抱いた
「あんたlevel私と5しか変わらないのに強すぎる気がするんだけど」
獣がまたも不適な笑みを浮かべる…
「そりゃソウダ」
「ほんとのlevelはそんなもんじゃあ、ないからね」
「見せてあげようか?」
すると
獣の体が体内に何かいるかのように動き出す…
獣の口からなにやら黒い角のが出てきたかと思えば、
一瞬にして天に、向かい伸びていき
巨大な人の形になり、顔が現れる
その顔はおぞましく
半分は牛もう半分は何人もの人間の顔が出たり入ったりしている
そしてステータスが現れる
ヴィシュヌ
level 不明
クラス
幻想神
スキル
不明
特殊スキル
変幻
神眼
絶対的幻想
吸収
神格化
深淵の結界
不明
さきほどの獣だった物のステータスを見たゆりは困惑しながらも
「かか、み神様?、」
「なんかスキル六個もあるし不明って?」
「この化身になるのも村長のばばぁ以来だっけなぁー」
四本の、腕を捻りながら語りだしている
「その小僧が少し面白いのでちと本気で相手してもらおっかなぁ♪」
ヴィシュヌは日々の変わらぬ毎日に、飽きていた…
和人のただならぬ気配
努力や訓練ではとても越えることのできない、限界を、越えていた
動きに心が踊って巡り巡る鼓動が抑えられずにいる
「あーもうどーなってもいいやぁー村長も楽しませてくれたけどこっちのほーが楽しそうだわ!」
ヴィシュヌの興奮した姿を見つつゆっくりと後退していくゆりが呟く
「反則だわ勝てる訳ないじゃあ、ない逃げるわよ和人!」
距離を、確実に空けていっていたが
突如背後にヴィシュヌの腕が叩き込まれる
「せっかく久しぶりに見つけたのにだめだよ!」
ヴィシュヌの瞳の光が光りだす。
和人の背後に激しい殺気がしたかと、思えば
刹那、四本の腕が、和人目掛けて振り落とされる、
和人も振り落とされた一本目を身をかわし回避
同時に来た二本目、三本目を両腕で防ぐ
隙を見て四本目が突きだされる
これも紙一重でかわす
しかしヴィシュヌは最初にかわされた自らの腕を引きちぎり
投擲
同時に激しい蹴りを蹴り上げる
「さぁ防げそうにないけどどうする?♪♪」
和人の両腕は塞がったままだ…
ぐりんっ
和人の腕をえぐる
投擲された時の風圧でゆりは吹きとばされる
さらにえぐられた腕は黒くなっていき、体の方へと侵食し始めた
和人はそれを悟ると迷わず自ら腕を切り落とす……
「んっっぐっぐっっ…」
刺々しい痛みが走る
「おやおやー迷わず自分の腕を切るとはやるねぇ♪」
「当たった時はもう、終わりかと思ったじゃあないかぁー」
「私の体の一部が人間の体の中に入ると拒絶反応で腐っちゃうんだけど今ので理解するとはさすが!うん!うん!」
痛みを抑えながらヴィシュヌを睨む和人
「すまないが、もっと楽しくしてやるから結界を張ってくれないか?」
その言葉を聞くと歓喜の表情で
「ほんと?もっと面白くなる?じゃあかけてあげようかなぁ」
今のままではヴィシュヌが能力、身体共に圧倒的有利過ぎる為
一方的な攻撃だったので面白くない
判断したヴィシュヌは結界を発動させた。
「これでいいのかい?さぁ面白いのみせてよ?♪」
不気味な笑みで問いかける
「これで誰にもみられないね」
ヴィシュヌの発動した深淵の結界は
あらゆる干渉を遮断し、連絡は愚か、結界内の存在を認識出来なくする神のみに与えられた理不尽な結界である。