9話カゲルの城
ここが飯屋か…
俺とマルタは飯屋に来ていた
内装は少しボロい居酒屋って感じだ
バーテーブルにイスが4個ほど並べられており
後は丸テーブルが規則性も無く
大雑把に並べられている
「おいおい…マルタ…いくらオゴリだからってケチりすぎじゃないの…コレ」
「いやいや…こういう少しボロい店の方が美味しいの法則をアンタは知らないの?」
「いや…そんなの聞いたことねーよ
誰情報だよそれ…」
「私の友達の親戚の友達」
「なにその都市伝説みたいなクチコミ!」
俺達がグダグダ言い合ってる間に
奥から老人が出てきた
老人と言ってもヨボヨボなじいさんと言った感じでは無く、なんか年のわりに元気そうですねぇっていわれてそうな感じのじいさんである
「あー…お客さんかい
まぁとりあえず座りな」
その言葉には接客しようと言う意思は感じられず
とりあえず形式上の挨拶をしただけといった印象を受けた
とりあえず老人に促されるまま
俺達はバーテーブルのイスに座った
「ご注文は?」
まず最初に俺が注文する
「肉!肉ならなんでもいいや…ガッツリしたのを頼むわ」
その注文に対して老人はうなずいた
そしてマルタの方を見る
おそらくさっさと注文しろよと内心思っているのだろう
それを察してかマルタも注文を決めたようだ
マルタは俺を指差しながら注文する
「私もコイツと同じので」
老人は少し驚いたような表情を見せたが
そのまま奥の厨房へと入っていった
「おいおい…このじいさんえらく無愛想じゃねーか」
小さな声でマルタに語りかける
「ほら…アレは職人ってやつよ
職人はみんな無愛想ってよく言うでしょ?」
「言わねーよ!」
他愛もないやり取りをしてる間に
注文したモノが出来上がったようだ
じいさんが肉が乗っかった皿を
俺達の前に置いた
それにしても早いな…
まぁ見た感じ肉焼いて塩コショウ振り撒いただけの簡単料理に見えるし
そんなに時間もかからないか
異世界の肉だからトカゲの丸焼きとか出るんじゃ
無いかと内心不安だったが
出てきた肉は俺が元いた世界でもよく食べられていた
ステーキそのものって感じだ。
なんの肉を使ってるかはわからないけど…
少し警戒してる俺を横目にマルタは気にせず
肉にガッツく
元お嬢様とは思えない
マナーの悪さだ…
マルタは俺の方を見て
まだ食べないの?と言いたそうな眼差しで見つめてくる
まぁ食べられないものじゃ無いんだし
細かいことは気にしたら負けか…
俺もマルタに続いて肉にガッツく
うまい…!少しクセがあるものの
堅すぎず、柔らかすぎずの程よい歯ごたえに
塩コショウが良い感じに効いてて
スゴく米に合いそうな味だ…!
そういやこの世界に米はあるんだろうか…
パンはさっき町を歩いてるとき見かけたんだが
米は見かけなかったな…
まぁ今はそんなこと、どーでもいいか
俺はひたすら無心になって
肉にガッツく
肉が空っぽだった腹を満たしていく…
その様子を見て老人は少し微笑んでるように見えた
「もうお腹一杯!幸せ~…」
先に食べ終えたのはマルタのようだ
俺も後を追うようにすぐ食べ終わる
「じいさん…ご馳走さま!」
老人はさっきより明らかに笑みを浮かべながら
「あいよ」
とだけ応えた
んじゃ勘定を…ってその前に聞いとかなきゃならんことがあった
「そういやじいさんよ、ここら辺に宿とか無いのか?」
少し老人は考え込むようにして黙りこんだ
そして三秒くらい沈黙が流れてから
老人が口を開いた
「宿では無いが、ウチでは部屋貸しならやっている…」
「マジか!月いくらよ?」
「1500ゴールドだ」
高いのか安いのかわからん…
マルタにとりあえず聞いてみるか…
「マルタさんよ…一泊宿代の相場ってどれくらいのもんなのかね?」
「んー私も詳しくは知らないけど、300ゴールドくらいだったと思う…」
そう考えると
じいさんが貸してくれる部屋は破格の値段じゃねーか
「よし!んじゃじいさんに部屋借りるか!」
「そうしましょうか」
マルタは素っ気なく答えたものの
尻尾が少しだけ揺れている
住む部屋が決まってコイツも嬉しいのだろう
「じいさん!そういうわけで部屋貸してくれ!」
「…あいよ」
じいさんはゴソゴソとカウンターの下で何かを探し始めた…
しばらくしてから
「ほら…これが部屋の鍵だ…
部屋は二階にあるから自由に使いな」
じいさんは俺に鍵を投げるように渡す
それを受け取った俺はマルタにハイテンションで呼び掛ける
「よっしゃ!んじゃ部屋見に行くぞぉぉ!
マルタ!」
「ヤッホー!」
ドタドタと騒がしく二階の階段をかけ上り
じいさんに指定された部屋のドアを勢いよく開ける
内装をみた感じ
そこそこ広いけど何もない部屋だった
まぁ二人暮らしには十分な部屋だ
14畳くらいのリビングの横に8畳くらいの寝室
トイレはあったがキッチンと風呂は無かった
おそらく安さの秘密はここにあるのだろう…
まぁ細かいことは気にしない
ここから俺達の新生活がスタートするのだから