8話獣人娘はワケアリお嬢様
ここが町か…
獣人娘に案内してもらったおかげでやっと町に辿り着くことができた…
いやぁ死ぬかと思った…
「いやー本当ありがとな…ってわけで達者でやれよ」
「ちょっと待ってよ!なに颯爽と立ち去ろうとしてんのよ!」
「え…町まで案内してもらえばお前にもう用ないし…」
「ひどくない!こんな幼い少女一人で置いてくつもり!?」
獣人娘は涙目ながらに訴える…
泣くのは反則だろ…
「んじゃどうしろってんだよ…」
「ほら…森にいるとき私追われてるって言ったじゃん…だからもしもの時の為に護衛が欲しいのよ…」
「なるほどね…」
確かに追われてるとなれば
一人は心細いか…
「だからアンタに護衛をやってもらおうと思って…ダメ?」
目を潤ませながら上目遣いで訴えてくる
顔も整ってるだけあり破壊力なら「こうかはばつぐんだ」レベルだ
だがしかし
俺は子供に興味が無いのだ
むしろ子供は嫌いな方だ
俺の好みは年上のムチムチ系おねぇさん
こんなペチャパイガールに興味など微塵も湧かない…
「他当たれ…」
俺は冷たくいい放った
「でもほら…アンタお金も持ってないんでしょ?
もし私の護衛をやってくれるならご飯と宿くらいなら保証できるわよ」
「…!?それは本当かッッ!」
「本当!お金だけはあるんだから!」
…エッヘンと言わんばかりに平らな胸を張りながら獣人娘は言う
確かに悪くない話だ…
この世界で落ち着いて生活できるまで
このガキに寄生させてもらうか…
でも本当にこんなガキが金を持ってるんだろうか…
服装から察するに金を持ってるようには見えない
「お前本当に金持ってるのか…?」
「んじゃ証拠みせたげる!」
そういうと獣人娘は
懐から金貨袋を取り出した
その金貨はパンパンにふくれており
この娘が金を持ってると断定するには十分だった
「…すげーな…その金どうしたんだよ…」
「ハハ…まぁ細かいことはいいじゃないの」
獣人娘はバツが悪そうに目を反らした
まさか盗みでも働いて手にいれたんだろうか…
なら追われてるって話にも納得がいく…
「お前…犯罪はいけないだろ…犯罪は…」
「え…違うよ!犯罪して手にいれたお金じゃないもん!家のお金だもん!」
「家…?」
「…ゥ」
またバツが悪そうな顔をする獣人娘
別に家から持ってきた金なら隠す必要は無いだろうに
「と、とにかく護衛やってくれるの!?やってくれないの!?」
獣人娘は早口でまくし立てる
まぁ悪い話では無いし
犯罪を犯してるわけでも無さそうだから
とりあえず乗っかっとくか…
「よし!乗った!俺の名前はカゲルだ!
お前の名前は?」
「え!本当に!私の名前はマルタよ!
よろしくね!」
マルタは嬉しそうに目を輝かせながら
自己紹介をする
今気づいたことなんだが
獣人族ってまるで本物の犬みたいに
感情が尻尾や耳に出やすいらしい
今も嬉しそうに尻尾をふっている
「まぁ…とりあえず飯食おうぜ!飯」
「そうね!森から出てきて私達まだなんも食べてないもんね」
んじゃ飯屋を探すか…
と意気込んでいたら
「ちょっとそこの君…人探しに協力してもらえないかね…」
と後ろから声をかけられた
振り向いてみると
重厚な鎧に包まれた騎士
おそらく衛兵ってやつだろうか…
「人探し?」
「うむ…ある名門家のお嬢様が家から出ていってしまったらしくてな…」
「へー…そりゃ元気の良いことだ…」
「それでだ…君小柄で金色の髪をした獣人族の女の子を見なかったかね…」
あれ…どっかで見たことあるぞ
どっかって言うかめっちゃ近くで…
まさか…違うよな…
と俺はマルタの方を見る
マルタは俺のジャージの袖をギュッと握りしめ
震えていた…
うわ…コイツ…ビンゴだよ…
でも護衛するって約束したしな…
これはなにがなんでも守り通さなければッッ!
「いやー知りませんねぇ…」
「そうか…それは残念だ…もし「マルタ様」の捜査に有力な情報をくれた者には賞金100万ゴールドが払われるんだけどな…」
「あ、やっぱ知ってます!実はコイツで…グフォ!」
このガキ…後ろから蹴りをいれやがった…ッッ!
「ちょっと大丈夫か…君」
心配そうに衛兵が俺の顔を覗きこむ
「は、はい全然大丈夫なんで…気にしないでください」
「そ、そうか…では私はこれで失礼するよ
もし有力な情報を掴んだら教えてくれ」
そう言って衛兵は丁寧に一礼して去っていった…
「俺の100万ゴールド…」
「アンタ…今私を売ろうとしたでしょ!」
「いやぁちょっとした冗談だって…」
「冗談じゃ済まされないよ!」
…頬を膨らませて相当ご立腹のようだ…
さすがに悪いことをした…
反省しよ
「それにしてもお前お嬢様だったのかよ…
なんで家出なんかしたんだ?」
「別にアンタには関係ないでしょ…」
一瞬表情を曇らせたマルタ
相当突っ込まれたくない事情がおありのようだ…
「この話はもーやめにしよ!ご飯食べにいこ!
もちろん私のオゴリだから!」
「あいよ…」
俺達は飯屋に向かった