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青山さん家 2  作者: 宇佐美 風音
13/21

青山日和が出来るまで 1

お久しぶりの更新となります、宇佐美です。

唐突ですが本日の更新から丸ごと長文を投げつける形から、章が切り替わるところでページを更新する形に変更とします。

まぁ、1ページで終えてたものを数ページがかりで更新すると捉えて貰えるとありがたい。

それでは引き続き、または久しぶりに青山さん家をお楽しみ頂けたらと思います。

木目の濃い天井が、一日の始まりに映した光景だった。


ベッドの横から射す朝焼けが目を焦がすように光を放ち、一度だけ目を腕で覆ってしまう。それでもこんな時間かと意識がはっきりして来た「僕」は、渋々ながら上体を起こして行く。


まだ開き切らない瞳で映すのは、無地の掛け布団。タンスや机、椅子にかけてすべて木造で出来た自室を見やり、ようやく完全に覚醒したのだと理解した。


体を天高く目指すように伸ばして凝り固まった背筋なんかをピンと張り詰めさせる、ふと窓を見れば僕の目を潰さんと輝く太陽を背にした金髪の少女がたゆまぬ笑顔で居た。


目が合うと驚くことなく先ほど以上の笑顔でぶんぶん手を振って、僕に存在証明を働きかける彼女に、思わず溜息と苦笑いが込み上げた。


窓をスライドさせると、待ってましたと言わんばかりに身を乗り出して彼女は言った。


「おはよう、日和(ひより)! 見て見て、今日も快晴だよ!」


一体その笑顔のことなのか、はたまた指差す空のことなのか些か疑問は残るけれど、それでも僕は笑顔で後者であると踏んだ。


「おはよう、日傘(ひかさ)。今日も元気だね」


「あたぼーよ、日和! ウチから元気を取ったら某有機生命体ヒューマノイドばりの、簡素な反応しか残らないってかほら! 空! 良い天気! 最高だね!」


日傘は天気の良い空に興味を示して欲しいのか、身振り手振りが大きな躍動感を表している。


溌剌なことは悪いことではないけれど、少し大仰な元気だな。まるで眠気のピークを過ぎたハイテンションのようだが、これが通常営業なのだから何も言えない。


朝の生理現象が収まったのを確認し、ベッドから出る。靴を脱いで窓から進入を試みる日傘だが、バランスを崩して一度庭に背中を打ち付けた後お邪魔した。


涯名(はてな)村の朝は早い雰囲気なのだ!」


まず間違いなくお前のせいだけどな、なんて無粋なことは言わず。


「……そうだな」


深く頷いた。


涯名村。


取り立てて地理に詳しくないのでどこにある、なんてのは分からないけれど、とかくどこだかの山にある鬱蒼と生い茂った森林を諦めずに進んでいく。


すると加工された木材で囲われた壁があり、村はその中にある。


世間じゃこういう場所は田舎と呼ばれる発展の遅れた、はたまた煌びやかな都会と真反対に位置する隔絶されたこの村を指す。本当木材加工技術以外に取り立てて目ぼしい文化がない。


ただ、総人口数百人前後。


顔と名前を暗記出来てしまいそうな人の数のせいか、勝手知ったる人の家。そう、この村には鍵がない。


誰が来ようといつだってウェルカム、皆が平等であり、少ないからこそ人の声が行き届き、活気に満ち溢れた村。


そんな涯名村が、僕の生まれ故郷。育ち、この命果てるまで生活を続けるであろう地。


「そろそろお仕事だけど、準備はオーケーかい!」


シャドウボクシングに勤しみ急ぐ仕草を表現する日傘は、そう遠くない未来で僕の方にパンチを繰り出す。


微弱な威力を感じながら寝巻きの上を脱ぎ捨て、ズボンにまで手をかけた辺りで、ヤケに下半身へ集中する視線を気にした。


「何さ」


いやまぁ、日傘なんだけどさ。この部屋には僕とお前しか居ないんだから、振り返ったところで謎の恐怖心に苛まれるだけだから是非やめろ下さい。


覗く気満々の日傘を部屋から追い出し、光の速さで手早く着替えを済ませる。


ここら辺は慣れだよ。どうせ部屋から追い出しても「何すんのさ!」とかこっちの台詞でしかない発言が飛び出ることは明白だ、ゆえに先手を取って着替えると言う用事を済ませる。


案の定扉がスライドされて、日傘の眉間に寄せていた皺が消し飛んだ。


「あれ? 何さ、もう着替えちゃったの?」


「期待に満ち溢れた思いを無視して申し訳ないが、着替えたよ」


「覗かせてよ」


もはやガン見だったじゃん。どっちも嫌だわ。


と言うか感情ストレートに伝え過ぎでしょ、どれだけ見たかったんだよ僕のパンツ。需要無さすぎでしょうが。


「日傘がパンツ見せてくれたら良いけど」


横切って部屋を出て行く。その発言と共に来るであろう日傘を置き去りにしたままダイニングへ向かう。


「マジ!? よーし見せちゃうよーパンツの一枚や二枚、日和のためならよっこらしょーってあれー! 日和が居ないー!」


有言実行を地で行く日傘のことだから、マジで見せて来そうなので、そそくさとその場を後にして正解だった。遠くなって行く声をそのままにダイニングに来たが、簡単に摘めるお握りが二つ並んでいるだけで、両親の姿はなかった。


「父さんと母さん、もう職場行っちゃったんだ」


「昨日の疲れがある雰囲気だから、ゆっくり出勤しろって言ってたよ!」


そう言うことは早く言えよ。父さんたち的には僕普通に遅刻じゃん。


お握りを口に挟み、もう片方をマシンガントークを炸裂させようとしている日傘の口に捩じ込む。


「行こうぜ、遅くなった分頑張らなくちゃ」


「ほっほあっえおー!」


注釈すると、ちょっと待ってよーと言いながら手で口の中にお握りを押し込んでいる。


おかかお握りを食しながら、期せずして家を出た。

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