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13 迷える子羊の懺悔の歌《ブースリート》

 借り物競走は、一年女子のレースからはじまる。


 出走のピストルとともに走り出して、カードを拾う。


 何が書いてあるのか、読んだ瞬間悲鳴に近い声がいくつかあがる。

 観客席や生徒の応援席を見回して、札に書かれた人を見つけ出して走っていく。


 そして第三レースで横井の彼女がお題を拾い、男子待機列に突進してきた。


「よっちー! うちと一緒にきてーん!」

「モチのロンだよりんりーん! 世界の果てまでフォーエバーラーブ!」


 語尾にハートを飛ばしながら恋人繋ぎで駆け出す二人。


 まわりの男子から、


「このバカップル!」

「もげろ横井ー!」


 なんて、とても応援と思えない声が飛び交う。


 横井たちがゴールして、あとに続くように、華音がお父さんと一緒にテープを切った。

 

 次のレースは葉月がいた。

 カードを拾うと、迷うことなく、まっすぐにこちらに走ってきた。

 


「響司くん、来て!」



 必死な様子の葉月に、腕を引っ張られる。


「え、僕!?」

「はやく!」


 これはレース。迷っている暇はない。

 せかされるまま、葉月とゴールに走った。


 ゴールテープを切って、走り抜けた僕らに係の生徒が話しかける。


「引いたカードをみせてください」


「……は、い」


 葉月はその場にへたりこみ、答えるのもやっとの状態で、くしゃくしゃになったカードを差し出した。


「お題は友だち、ですね。確認したので一番のフラッグの前に並んでください!」




 ──友だち、か。


 わかっているけど、ちょっと切ない。 



 葉月は体操着の胸の部分をおさえ、荒い呼吸をくりかえす。


 僕の腕を掴んだままの右手は、汗びっしょりで、震えていた。


「葉月、大丈夫?」


 葉月はうっすら目に涙を浮かべて、無理やり笑おうとして、失敗した。


 地面を見下ろしたまま、ぽつりとこぼす。


「あーあ、……ま、けちゃった、な」

「負けた? 一位になったのに、何言ってるのさ」


 

 葉月は息を整えようとして、むせてる。


 なんどか深呼吸して、やっと顔を上げた。


 その目は辛そうで、とても真剣な色をしている。


「…………うそついて、ごめんね。もう、協力、してくれなくて……いいの」


「嘘? 何を言って……」



 とぎれとぎれで、何を言いたいのかうまく掴めない。

 でもなんだか、礼拝堂で懺悔しているみたいな、そんな真剣さがある。



 ずっとしゃがみこんでいる葉月を心配して、救護班のテントにいた先生がかけつけた。

 

「吉田さん、大丈夫? 貧血? それとも過呼吸でも起こしちゃった?」


 すぐには答えられず、葉月は僕を見上げて、ためらいがちに手を離した。


 

「……す、みません。もう、だいじょうぶ。すぐ、行きます」




 葉月はゆっくりと立ち上がって、一位のフラッグのほうに歩き出す。


「当馬くん、女子のレースが終わったらすぐ男子のレースだから、早く戻って」

「はい」


 先生に言われて、待機列に戻った。


 僕のもといた場所に座ると、沢がつついてくる。


「響司。どうかしたのか、葉月ちゃん。なんかずっと座り込んでたみたいだけど」

「ちょっと頑張りすぎたみたいで。もう大丈夫」


 葉月のためにも、さっきのことは心にしまっておこう。

 きっと、他の人には聞かれたくないことだから。




挿絵(By みてみん)

フルネーム横井翔太郎よこいしょうたろう

フォーエバーラブなりんりんと愛を叫ぶバカップル。

声でかくてうるさいからと応援団に任命された。

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