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夢見坂高校、怪異対策委員会。  作者: 毒島複狼
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第六話:部室棟四階の怪

 翌日。なんてことはない現代文の授業で、隣の奴に話しかけられた。名前は憶えていない。多分、新橋とか言った気がする。


「わり、タカハシ。教科書ちょっと見せてくんね?」


 別に断る理由もないので承諾し、机を寄せて教科書が二人で見えるようにする。こういうイベントは女子相手に発生して欲しいものだ。まあ、両隣は男子なので、叶わぬ夢であることは明らかなんだけど。


 にしても、新学期が始まって早三か月、こんなことは初めてだった。普段は空気のような存在でしかない僕が誰かに頼られるというのは、あまり悪い気はしない。昨日の入部届の流れも、頼まれたと言えなくもないが、あれは依頼というより脅迫と呼ぶのが相応しいだろう。まあ、快諾したのは僕だから文句は言えないんだけど。


「そういえば、怪異対策委員会って知ってる?」


 せっかくの機会だから、話を振ってみる。授業中におしゃべりをするのは推奨されたことではないが、現代文の先生はかなり寛容(あるいは放任主義)で、生徒の態度をどうこう言ったりする方ではない。それよりも、別に全知を名乗るつもりは毛頭ないけども、クラス中の話を耳に挟んで(断じて盗み聞きではなく)いる僕にとって、細かい人間関係だったり隠されていることを除いて、学校のことで知らないことは何もないと思っていたのに、怪異対策委員会についてはまったく聞いたこともなかった。

 新橋が知っているとも限らないけど、これもクラスメイトとの交流だ(こうして僕の存在感を上げられればいいなという邪な考えがなくもない)。


「いや、知らないな。何だそれ?」


「なんか、部室棟の4-Cにあるらしいんだけど」


 新橋が「オレンジを噛んだはずが苦かった」みたいな顔になる。


「部室棟の4階っつったら七不思議だろ?出入りできないはずなのに、たまにうっかり踏み込むと、そのまま帰らぬ人になる、っていう。その一部なんじゃね?」


 これは初耳だった。僕の情報収集能力もまだまだと言ったところか。というか、部室棟の4階が「出入りできない」?気になるところではあるが、これ以上新橋が知っていることはないだろう。


「そうかも。ありがと」と適当に返事して話を打ち切った。


 思えばクラスメイトとのこうした会話はかなり久しぶりだったかもしれない。授業の内容は全然頭に入って来なかったけど、こういうのもたまには悪くない。……楽しいし。


 ***


 そして放課後。僕は出入りできないはずの4階に足を踏み入れる。

 ちょっとだけ新橋に揶揄われただけの気がしないでもない。僕は帰宅部だ(った)から部室棟に近づく用事はないし、うっすら怖いイメージを抱いて終わりだ。他の誰かに話したら「そんな七不思議はないよ」と笑われることもあるかもしれないけど、まあそれくらいのものだ。軽い冗談だったのかもしれない。

 でなければ僕が一段ずつ昇っている階段は一体なんだというのか?「立入禁止」の張り紙もロープもない、ありふれた普通の階段は。


 4-Cのドアを開けると、まだ誰もいなかった。来るのが早かったのかもしれない。仕方がないので、適当なパイプ椅子にあたりをつけて腰を下ろす。こうしてみると、廊下から見たときより中が広い気がする。

 部室は整頓されているとは言い難い状態で、なんなら昨日のスーパーボールがまだ床に散らばっているほどだから大したものだ。誰も掃除する気がないのかと思ったが、しかしそれでもやや奥の一角に鎮座している執務室にあるような一人用の机だけは綺麗になっている。机の上には「委員長」と書かれた卓上ネームプレートがあるから、これは委員長の机なんだろう。


 そういえば委員長はどんな人なんだろうか?二人は多分違う(あの机に近寄る気配もなかったし、毒島先輩はともかく歪先輩が整理整頓をできるとは思えない)し、昨日はたまたま来ていなかったのだろうか?やっぱり、こんな委員会の長ともなれば忙しいのかもしれない。やることも色々あるだろうし。


 がちゃり。ドアノブに手をかける音がして。


 ドォン!ドアを蹴る音がした。


 然して物騒な入り方をしてきたのは、毒島先輩でも歪先輩でもなく、全身が埃やら油汚れやらにまみれた男子だった。ネクタイは緑なので、三年生か。


「あれ、栗城のバカまだ来てなかったのか……」


 溜息混じりに愚痴る先輩は、こちらに気づくと片手をあげるとこう宣った。


「オヤオヤ。新しい実験体くんか?」


「違いますっ!」


 思わず立ち上がって否定する。いきなり初対面の人を実験体呼ばわりとは。とんでもないマッドサイエンティストだ。ここはサイエンスとはかけ離れた空間のはずなのに。いや、だからこそ、か。オカルトとマッドなサイエンスの親和性はきっと高いだろう。


「なーんだ」


 僕が相手の動きを警戒して拘束されないように構えるのに対して、先輩は興味なさそうに適当なパイプ椅子に腰かけてスマホをいじり始めてしまった。例の机に座る様子はないから、この人もきっと委員長ではないのだろう。いや、じゃあ誰だよ?

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