表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢見坂高校、怪異対策委員会。  作者: 毒島複狼
4/6

第四話:ようこそ怪異対策委員会へ

「反応?変質?」


 何の話をしているのか全くわからない。


「歪くん、まさか何も説明してないの……?」


 毒島先輩が呆れた視線でヤンキーを責める。全くもってその通りだと思う。今のところ、カツアゲとか脅迫というわけでもなさそうだし。

 

「もしかして、ここが何なのかも?」


「知りません」


 かぶりを振る。実際、僕は何も知らない。


「だ、だってよぉ!あんまりパンピーに情報を漏らすなッつーのは」


「わかるけど、彼は当事者なんだし、用語を出しておいて説明しないのは不親切でしょう。それに正しい手順を踏めたってことは適性があるかもしれないし。憑物を拾ったのもあるし」


「それもそうか。じゃーいいか。論!」


「なっ、なんですか」


 呼びかけるときに大声を出すのはやめてほしい。心臓に悪いから。


「お前、なんか部活入ってるか?」


 拍子抜けだ。「命を捨てる覚悟はあるか?」とか「大事な人はいるか?」とか、そういう怖い感じの質問をされると思ったのに。


「帰宅部ですけど」夢見坂高校は別に部活必須の高校ではない。


「じゃあ手間が減って良かった。これ書け」


 どこから取り出したのか、彼の手には一枚のプリントが握られていた。入部届だ。まさか、ここは部活だったのか?でも何の?


「名前だけ書きゃあ後は埋めといてやるから。ほら、早く」


 急かされるも、さすがに躊躇する。名前の自筆だけ求めるなんて、今日日詐欺でもやらないだろう。可能な悪用のバリエーションが多すぎる。


「お願いしてもいい?今、人手不足で困ってるの」


 毒島先輩が上目遣いで頼んでくる。正直効く。まあ、入部届であることに違いはないのだ。この足で退部届を出しに行ったっていいし、自筆があってもハンコがなければ多少はマシだろう……多分。名前を書く欄にさっと記入する。やってしまった。一抹の後悔が胸をよぎる。


「ようこそ、怪異対策委員会へ!」


 毒島先輩は追い込んだ獲物が上手く落とし穴にかかったような――これは直喩かもしれない――笑顔でそう言った。って、委員会?


「部活じゃないんですか?」僕が書かされたのは確かに入部届だったはずだ。連帯保証人にでもされたら困るから確認はしている。


「ああ、普通の部とは扱いがちょっと違うの。でも基本的には同じだから大丈夫だよ」


 毒島先輩が大丈夫というなら大丈夫なのだろうと思わせるだけの不思議な何かが彼女にはある。というか、もうそう思うしかなかった。なにしろ、僕は昨日、都市伝説とカツアゲ(?)に遭っているのだ。これまでの日常を構成していた法則は歪められたと言っても過言ではない。


「そういえば、君の名前をまだ聞いていなかったかも」毒島先輩から改めて自己紹介を求められる。


「ああ、多可橋(たかはし)(ろん)です。一年、帰宅部です」


「うふふ、今はもう怪異対策委員会だよ?」


 そうだった。僕はもう踏み込んでしまったのだった。クーリングオフできればいいんだけど。学校に消費生活センターがあるか探してみようかな……。

 それにしても毒島先輩の笑顔は眩しい。優しい月明かりが照らすみたいだ。僕が暗すぎて直視できない。


「そういえば俺も名乗ってねぇな。栗城(くりしろ)(いびつ)だ。見ての通り、二年」


 雲が差し込んできた。この後の僕は雨模様だろう。


「それで、ヤ、栗城先輩。怪異対策委員会って何をするところなんですか?」


 どう考えても入ってからする質問ではないが、聞かないことには始まらない。


「読んで字の如くだろうがよ。怪異の対策をする委員会だ」


「あの、具体的に」


「ごめん、私から説明するね……」毒島先輩が申し訳なさそうに目を伏せる。どう考えても悪いは歪の方だから謝らなくたっていいのに。


「ざっくり言うと、校内とか学区に広がってる噂を調べて、怪異を祓うのが主な活動だよ」


「怪異?」


「それこそ、怪人Aみたいな、ね。都市伝説って言うのかな。そういう話の存在は、認識の閾値を超えると実在を獲得しちゃうの。そうすると、元になった話の通りに害を為すようになる」


 そんな小説のような話が、と言いたいところではあるが、実際僕は怪人Aを目の当たりにして、質問されて、消えるところまで確認している。「まさか」とは口が裂けても言えなかった。「ある」し「いる」のだろう。


「で、怪異の実在度っていうのはその怪異が信じられているほどに強くなる。だから一度被害が出るとまたその話が広がって実在が強化されるっていう悪循環に陥っちゃうの。そうなる前に仕留められるように、日々活動しているわけだね」


「仕留める、って具体的にどうやるんですか?」祓うとか言っていたような気がするけど、神主が持っているようなフリフリの棒を振って色々唱えたりするのだろうか。


僕と怪人Aの場合でも何が起こったのかはさっぱりわかっていないし。だいいち、あれは祓えたと言っていいのか。


「逆に言えば信じられなくなればいいってことだから、関係ない噂で塗りつぶしちゃうとか、逆に意味不明な目撃情報を追加して信憑性を低くしちゃうとか。これが一番簡単かな」


「そうかァ?ぶっ飛ばした方が楽だしわかりやすいだろ」

読了ありがとうございました。よろしければブクマ・評価お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ