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3.新たな生活

 ヘレナは二人が暮らしている家に案内される。

 家は大きくはないが木造で雰囲気のいい感じだった。

 中に入ると清潔感が漂っており、余計なものは一切ない感じだった。


「狭いですわね」


 しかし、お屋敷で過ごしているヘレナにとっては当然のことだった。


「ハハハ! まぁなれると思うよ」


 エイは気にしていないがメアリーは違っていた。


「……さっきから思っていたのだけれどもあなたの態度気になっていたのよね」

「私の態度ですか?」


 メアリーは近寄った。


「あなたのような人が何故、ステータスに恵まれるのよ」


 彼女は自分が努力家なんて思ったことはない。

 ただ、エイは人より鍛錬を積んでいるのだし、その姿を見てきた。

 だから彼とチームを組まないかと言われたときには嬉しかった。

 自分が彼と一緒に戦えることが、彼女にとっての自信につながるからだ。

 だからこそヘレナを簡単に容認できない。


「私は……主に筋トレをやっておりましたわ」


 彼女の答えは意外なものだった。


「専門のコーチを付けて適度な負荷をかけることで体型を維持しておりましたの」

「……っ! その程度で!」

「メアリー、よさないか」

 

 エイが割って入ってくる。


「これからチームとしてやっていくんだ。仲良くしていきたい」

「エイはいいの!? 自分を上回る人を見て何とも思わないの!?」

「世の中には天才もいる。仕方のないことだ」

 

 エイの優しさは誰よりも知っている。

 だからこそ彼を気遣うのだ。


「もし気を悪くされたのなら謝りますわ」


 彼女のお嬢様な態度が余計に逆なでをする。


「とりあえず部屋を案内しておくよ。その間、メアリーは食事の準備をしてくれ」

「……分かったわ」


 エイに2回の部屋を案内される。


「使っていない部屋だからほこりがすごいかも」


 ドアを開けると寝具と机があったが、ほこりまみれだった。


「……ここで過ごすのは骨がいりますわね」

「掃除は明日にして、今日はメアリーの部屋で寝る?」

「いいのですの? 彼女に嫌われている気がしますが?」

「彼女は警戒心が強いだけだよ。本当は優しいんだ」


 2階から降りるとメアリーに話しかける。

 当然嫌がったメアリーだがエイに頼まれて仕方なく了承した。

 

「その代わり料理ぐらいは手伝いなさいよ!」

「承知しましたわ」


 お嬢様気質な彼女にはできないだろうと思っていた。

 見たことない食材に対してどうすれば良いのかと聞いてくることはあった。

 しかし、彼女の手さばきは想像以上のものだった。

 少し教えればすぐに覚えてしまう。

 天才を見させられている。

 しばらくすると料理は出来上がっていた。

「ここで初めての食事ですの」

「口に合うといいな。料理もしたんだし」


 初めての異世界での食事。

口に運ぶと案外おいしかった。


「まぁ! 美味ですわ!」

「それは良かった!」


 食が進む進む。

 お嬢様として気品を保ちつつも箸は進む。

 あっという間に食べ終えると体を洗い、寝ることとなる。


「私はベッドで寝るから」

「あら、私もベッドで寝ますわ」

「はぁ? 一緒に寝るってこと?」

「仕方ありませんわ」

「あなたが決めることじゃない!」


 二人は口論になったが結局同じベッドで寝ることになった。

 メアリーは内心ぶつぶつと思うことがあったがヘレナはすぐに寝ていた。

 そんな横顔を見ていると、さっきまで怒りを覚えていたのが少し馬鹿らしく感じた。


「眠れない……」


 誰かと同じベッドで寝るなんて初めてのことだ。

 ただでさえ嫌な奴なのに、こんなにドキドキするものなのか。

 さっさと寝てしまいたかった。

 

「あーよく寝れましたわ!」

「……」

「メアリーは寝れなかったのかい?」


 彼女の眼にはクマが出来ていた。


「とはいえ今日はクエストがある。気を引き締めていこう」

 支度を済ませると森に向かう。


「今回もゴブリン退治だ。最近は何かと多くなったな」

「あら、多くなっているのですの?」

「そうなんだよ。こんなに活発なのは珍しいんだ」


 森の中を進んでいくとエイが手を伸ばして歩みを止める。


「奥にゴブリン達がいる。奇襲をかけよう」

「私が魔法で仕掛けようか?」

 メアリーは杖に魔力を貯めていた。

「それでいこう。僕たちが位置に着いたら合図するから」


 エイと共にゴブリンに気づかれないように近づいていく。

 合図の手を上げるとメアリーは火の魔法を放ち、ゴブリン達は慌てふためく。

 すぐさま飛び出し、攻めようとする。

 最初の内は普通に倒していたが徐々に様子が変わってくる。


「……! 気を付けろ!」


 森の奥から矢が飛んできた。


「ゴブリン達が矢を使うなんて……!」


 ありえないことだった。

 本能のまま生きるゴブリン達は使える武具は限られていたり、作戦などはありもしなかった。

 しかし、今戦っている相手は違った。

 奇襲によって崩れた体勢も今は持ち直している。


「どうなっているの……」


 すると奥から男がやって来た。

 男は戦士の恰好をしており、ゴブリン達に指示を出していた。


「あいつが入れ知恵をしているのか!」

「私に任せましてよ!」


 ヘレナは男に近づき、アッパーをいれようとするも躱されてしまう。


「……中々強そうだな」

「こんのぉ!」


 何度も拳を振るうも躱され続ける。

 エイ達は徐々に押され始めていた。


「これ以上は危険だ! 逃げるぞ!」

「逃げるですって!? そんなこと……」


 その時、弓を張ったゴブリンがヘレナを狙っていた。


「危ない!」


 ヘレナを庇いエイが矢を受けてしまう。


「エイ!」

「エイを担いで! 早く!」


 ヘレナは言われた通りにして逃げる。


「ギャギャギャ! 追わなくていいんですかい?」

「ほっておけ。よそ道をしている場合じゃない」


 何とか村まで戻り、医者に診てもらう。

 

「これは……矢に毒が塗られていますね」

「毒ですって!? 相手はゴブリンなのに……」

「とにかく解毒が必要です」


 病室からメアリーが出てくる。


「どうでしたの?」

「矢に毒が塗られていたみたいです……」

「毒ですか……」


 彼女は怒りを抑え込んでいた。

 ヘレナがいなければと思っていた。

 けれども優しいエイがそんなことを望んでいるわけではないと分かっている。

 何を話したらいいか分からずその場を立ち去ってしまう。

 ヘレナは彼女の気持ちが分かっていたがどうすればいいのか迷っていた。


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