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6. お月見と脱出

(お月見と脱出)


 夕食後……

 俺たちは、テラスに出て、お月見をしながら、黒糖の饅頭とハルナが立ててくれた抹茶を一服いただいた。

「俺は研究室に上がって仕事の続きをするから、君たちは下で二人の時間を楽しんでくれ」

「俺も手伝うよ……」

「いや、せっかくのデートの日に付き合わせてしまったから、手伝うのは明日からでいいさ……、太陽は逃げないからな」

「じゃー、お言葉に甘えまして……」

 二人で、カズヤに向かって感謝の微笑みを送った。

「私、お風呂、沸かしたけど、先に入ってもいい……?」

「もちろんさ……、二人で楽しく入ってくれ……」

「入らないわよ……、でも、大きなヒノキ風呂で嬉しいわ」

「温泉じゃないけどね」

「温泉の素でも入れるわ」

「それは、いい……」

 カズヤは、それだけ言うと、足早に二階に上がって行った。

「奇麗な月ね……、去年も天文台でお月見したわね……」

「あれから、一年か……、……」

「そうね……、まさか無職の彼になるとは、思わなかったわ……」

「また、それを言う……、でも、僕の心は、変わらないよ。君を初めて見た時から……」

「私は、冷めちゃったわ……」

「じゃー、もう一度、君の心に火を付けるよ……」

 僕は、椅子から立って、春菜の細身の肩を持って、キスをしようと顔を近づけた。

「いやよ……、……」

 ハルナは体を捩って、そっぽを向いた。

 僕の振りほどかれた腕は、そのままハルナの体を滑り胸の膨らみに辿り着いた。

 僕は、それを優しく掴んだ……

 ハルナは、拒まなかった……

 拒まなかったことで、僕はハルナの胸を大きく、大きく、揺するように撫ぜた……

 撫ぜながら、僕の足は春菜の股の奥に深く入って行った。

 ハルナが大きく足を広げたので、僕はワンピースの裾を捲り上げた。

 ハルナの白いパンツが見えた。

 ハルナは起き上がり、体の半分まで捲り上がったワンピースを自分から脱いで、ブラウジャーも外した。

 満月の光に照らされて、彼女の裸は美しい……

 ハルナは外で裸になることが好きだ。僕は、それを見るのが好きだ……

 彼女は、僕の首に腕を回して抱き着いて……

「一緒にお風呂……、入ろう……、……」

「……、……」

 僕は無言で頷いて、裸の彼女を抱きしめた……


 多くの人は、意外と気にしないが、満月も太陽と同じように季節によって、見える高度が違う……

 それに月は、太陽とまったく反対の高さで現れる。

 つまり、太陽が最も高く見える夏至の頃は、月は最も低い位置に見える。

 そして、太陽が最も低く見える冬至の頃は、月は最も高い夏至の頃の太陽と同じ位置になる。

 しかし、月は太陽に照らされているだけで季節的変化を起こすだけの力がない。

 でも、冬至の頃の十二月、高く上がった満月は南中する0時ごろ、真昼のような明るさで街を照らす。月の明るさで影踏み遊びができるくらいだ……

 僕は、この時期の真夏の太陽のような月が好きだ。

 中秋の名月は、中国から中秋節として伝わり、家族団らんと秋の収穫を祝う行事だ。

 夏の猛暑が落ち着いた秋の十五夜の頃、まだ夏の湿気の多い空気で黄色く色付く月も名月にふさわしい……

 その幽玄な光に照らされている彼女を見ていると、恋心を揺さぶられずにはいられない。

「……、好きだよ……、とっても奇麗だ……、……」

 僕は、裸の彼女の唇にキスをした……


 風呂上がり、裸のまま風呂場にあった真っ白いバスローブを着て、テラスに出た。

「アイスコーヒー、淹れましょうか……?」

 ハルナの優しい言葉……、彼女も裸のままバスローブを着ている。

 大きな胸が、着崩れそうなバスローブの襟から覗いている……

「嬉しいね……、風呂上がりで、外は気持ちがいいぞ……」

「後で、アイスコーヒー持っていくわ」

 少したって、春菜はアイスコーヒーを二つ持ってやってきた。

 それをテーブルに置くと、彼女は僕の膝の上に座った。

 僕は、彼女を抱きかかえた……

「はい、アイスコーヒーよー」

 ハルナは、僕の口元にストローの刺さったグラスを差し出した。

 僕は、それを彼女の手の中から半分だけ飲んだ……

「……、美味しいよ……」

「ほんとう……?」

 ハルナは、僕が飲んだ半分を飲み干した……

 僕は、彼女がコーヒーを飲み干す間に、バスローブの帯を解いて、彼女が持っているグラスの腕まで脱がして、出てきたおっぱいの乳首を吸った。

「……、でも、ハルのおっぱいの方がもっと好きだ……」

「おっぱい、しゃぶるだけでいいなら、安上がりで、いいわね……」

 その時、何処にあるのか、部屋のスピーカーが鳴った。

「警告、警告、爆装した無人機、接近中……、距離二千……、距離千メートルで偽装爆破します……」

 その声は、聴きなれた量子コンピューターのベガの声だった……

「何だ、爆装無人機は……?」

 しばらくして、向かいの山から赤く炎が上がって、爆発音が届いた。

「……、おいおい、ここは平和な日本だぞ!」

 カズが、慌てた様子で下りてきた。

「す、凄いね。お楽しみで、悪いが、帰る支度をしてくれ。すぐに報道陣で一杯になる」

 カズヤにテラスで裸になっているところを見られてしまった。

 ハルナには、まだ状況が掴めていない様で、僕の胸の中で抱かれている……

「……、ハル、急いで服を着て……、荷物をまとめるんだ」

 僕は、春菜の半分脱げかかったバスローブを着せた。


 遠くで、消防車のサイレンの音がする……

「……、用意できたけど……、どこに行く……?」

「とりあえず、家に帰ろう……、来た道は危ないから、名古屋を回って帰ろう」

 カズヤは、口頭で叫んだ……

「ベガ、天文台は閉鎖、後は頼む……」

「了解……、閉鎖します。セキュリティ、オンライン……」

 スピーカーからベガの返事がすると、窓のシャッターが自動で締まりだした。

「さー、行くぞ……」

 俺たちは、急いで天文台を出た。

「まるで、秘密基地だな。天文台もろとも、俺たちまで抹殺しようとしたのか……?」

「さー、そこまでは分からないが……、たまたま俺たちが居合わせただけかもしれん」

「破壊したかったのは、天文台だな?」

「政府は何が目的だ……?」

「爆装ドローンを使うとなれば、国防軍だな……、揺さぶりを掛けたのかもしれん。これで、こちらが、どう動くのか見たいんだろう」

「一体、お前の会社は、何者だ……?」

「そんなことは、後だ!」

「また、ごまかして……」

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