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 それにしても高性能ロボットを作る技術はあるのに、迷子の子供を探し出すシステムを持ち合わせていないとは。優秀なのかそうでないのか、よくわからない。

 日本のデパートならば迷子センターなり店内放送なりがあるから、すぐに問題が解決する。外で迷子になっても交番がある。その点で日本は恵まれていたな、と鈴木は思った。

 鈴木はロトに先を歩かせて進んだ。これならもし行先に崖などがあって気づかなかったとしてもロトが落ちるだけですむと考えてのことだった。

 崖なんてものがあったら普通気づくだろう、という甘い考えはすぐに消え去った。人の手が入っていない山では草木が猛威をふるっていた。

地面は緑で覆われ、丈の高い草が視界の半分近くを埋め尽くしていた。それだけではない。草をかきわけたり、木をよけたり、歩きやすいところを探したりするのに気をとられてしまうので、崖のことなど頭から抜け落ちてしまうのだ。

幸いなのはロトが前を進んでくれていることだった。ロトは草が顔面にあたってもひるまないのでずんずん進んでいく。その後ろにぴったりついて歩けば、ある程度は歩きやすくなるのだった。

それにしても、なぜあんな馬鹿なことをしたのだろう、と鈴木は後悔し始めた。あのときは死んでも後悔はないという気持ちで撮影していたが、その結果はひどいものだった。ひどい人生から抜け出すどころか、余計ひどい状態になってしまっている。

 せっかく動画を撮っても、こうなってはどうしようもなかった。意味のない動画を撮ったがために、余計な苦難を背負い込むはめになるというのは、あまりにもお粗末な結末だと感じた。

 しかもリュックの中にあるのは、飲みかけのメロンソーダと、この世界では役に立たない貴重品が複数と、あとは先ほど脱いだ防寒着のみだった。これだけで山を生き延びることなどできるはずもなかった。

人間は水なしで三日生き延びられるという説がある。しかしそれが果たして今の状況に適用できるのだろうか。もともとそれほど水分を摂っていなかったことに加えて、猛烈な暑さで、汗がどんどん出てきていた。もうすでに喉は、からからだった。

できればペットボトルの中のメロンソーダは温存しておきたかった。しかしすぐにそうも言っていられなくなるような状態になるだろう。また川がそう都合よく近くにあるとも思えなかった。

「まだ子供は生きていると思いますか?」

 少し不謹慎な話ではあるが、ふと気になって鈴木は尋ねた。せめて自分が実のある作業に同行しているかどうかだけでも知りたかった。


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