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「わかりました、どうぞ」
「私はあるものを探しています。全体をきつね色の毛に覆われていて丸い生物のようなものです。大きさはこれぐらいです」
ロボットは子犬がすっぽり入りそうなくらいの円を手で表してみせた。だが鈴木はむろん、そんなものを見たことがなかった。
それと、生物みたいなもの、という言葉がひっかかった。生き物ではないのだろうか? しかし生き物でなければ、なんだというのか。狐色の毛に覆われたもの、といったら鈴木は狐かぬいぐるみぐらいしか思い浮かばなかった。しかしまさかぬいぐるみを探しているわけはないはずだった。
「一体何を探しているんですか?」
「私の子供です」
鈴木はロボットに子供がいると聞いて驚愕した。しかし考えてみれば目の前で話しているのがロボットであるとは断言できなかった。中に誰かが入っているかもしれないし、ロボットをとおして誰かが話しているのかもしれない。
しかしきつね色の毛に覆われた丸い生物を子供に持つ人間はまずいないだろう。そもそも地球にそういう生物がいない。
「あの、失礼な質問になるかもしれませんが、地球人ですか? それとも、宇宙人と呼ばれるような類の方ですか?」
「私は宇宙人です。これは私が操っているロボットですが、私自身は別のところにいます」
ロボットは言った。
「本当ですか?」
「本当です」
予想していた答えだったとはいえ、それでも驚かずにいられなかった。自分の目の前に宇宙人の操っているロボットがいる。
鈴木はロボットから視線をそらして遠くの木を眺め、気持ちを落ち着かせようとした。しかしちっとも落ち着かなかった。自分が今、宇宙人と会話しているという事実に動揺を抑えきれなかった。