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「警告。ワープを開始します。警告。ワープを開始します」
警告の文言が変わった。文言が変わった瞬間も撮れたし、話題を呼ぶには十分すぎるほどの動画が撮れていた。そろそろ逃げよう。
二メートルならダッシュすれば数秒で移動できるはずだ。まだ間に合うはずだ。いや、絶対間に合わせてみせる。ここまでの動画を撮っていまさら死ぬなどごめんだ。
鈴木が動き出した時、ロボットの警告音は止まっていた。青い光は今まで以上に強くなっていた。
鈴木は身をひるがえしてコンクリートの地面を蹴った。日頃からランニングシューズを履いていてよかった、と思いながら軽やかに動き出していった。
青い光が周囲を飲み込んだ。鈴木は背後で光が強くなるのを感じていたが、それでもあきらめず逃げようとしていた。
ロボットの姿が消失した。同時に青い光も消えた。そして鈴木もまた東京の街から姿を消していた。
鈴木は一歩踏み出した。しかしその足が踏んだのはコンクリートではなく地面だった。目の前に広がっている景色も東京のものではなかった。
一面広がっていたのは膨大な草木で埋め尽くされた大自然だった。木漏れ日が差し込んでいたので森の中は比較的明るかった。
(夜なのに日差しがさしている? いや、昼なのか?)
すぐ目の前に生えている草の丈は彼の目の高さくらいまであった。見たこともないような大きさの雑草を見て彼は圧倒された。
ついで猛烈な暑さを感じた。すぐに体が汗ばみ始めた。リュックをおろしてダウンを脱ぎ、ニット帽も外した。そしてそれらをリュックに詰め込んだ。
ここは夏のように暑かった。しかし真夏というほどではない。初夏ぐらいの暑さだろうか。長袖でも暑く感じるほどだった。