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 ロボットの中に人がいると考えるほうが自然だった。それなら歩行する様子が人間そっくりなことにも説明がつく。目立ちたがり屋の誰かがロボットのコスプレをして渋谷の街を歩き回るというのは決して考えられないシナリオではなかった。

 ロボットが立ち止まった。それからロボットのボディのあちこちで青い光が点灯した。その青い光が徐々に強まっていった。

「危険です。私から二メートル以上離れた場所へ避難してください。危険です。私から二メートル以上離れた場所へ避難してください」

 深みのある成人男性の声で警告の言葉が発せられた。さらにビー、ビーと耳障りなブザーが鳴りひびいた。

 ロボットを取り囲んでいた人たちが騒ぎながらロボットから離れていった。鈴木一人を除いて。

 鈴木だけはスマホを構えたままロボットを撮影し続けていた。青い光が強すぎるせいでロボットの姿が見えなくなり始めても撮影をやめなかった。

「バカ、離れろバカ野郎!」

 男の怒声が聞こえてきたが鈴木は無視した。そんな鈴木を誰も引き戻そうとはしなかった。あらゆる警告を無視してまで残ろうとする命知らずのために動く人間がいないのは当たり前のことだった。

 鈴木もブザー音や繰り返し発せられる警告が聞こえていないわけではなかった。鈴木はこういうはらはらするような映像がネット上ではウケるということを知っていた。もちろん炎上する可能性があるということもわかっていたが、炎上商法というものがあることも知っていた。

 クソみたいな人生なんて吹っ飛んでしまったほうがいい。吹っ飛ばなかったとしても、ネットで話題になることさえできれば人生を逆転させるチャンスがつかめる。そんな捨て鉢な思いが鈴木をその場にとどまらせていた。


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