うんこバーで出会った女性(?)
銀行でたくさんのうんこのお金を引き出した俺は、うんこのスーパーに行くことにした。
5億うんこ円。日本円にして約5円。1日で使い切れる額じゃないな。スーパーで何買おうかな。
「いらっしゃいませ〜」
全身黄土色の人型の何かが出迎えてくれた。この島にはうんこ以外にも、元々人間だったが順応してうんことして生きている者も稀に混じっているそうだ。この人は人型だから多分元人間なんだろうね。俺もそのうちこんな姿になるのかな。楽しみすぎる。
せっかくだし今日はすき焼きにしようかなぁ。良いうんこ牛肉買って、良いうんコンロでグツグツ煮て。
とりあえずうんこネギは必須だな、あった。ネギというよりただの超長一本グソに見えるけど、まぁネギって書いてあるし美味しいやろ。うんこ味のシャキシャキ食感なんて初めてだからすでに楽しみなんだが。
あと白菜は絶対にいるよな。あった! けど、白菜って名前じゃないんだな。うんこく菜って名前なんだ。ならここにある野菜は全部うんこく菜だろ。
春菊⋯⋯は要らんかな。臭いし。人気らしいけど、俺は春菊よりうんこの匂いの方がいいんだよなぁ。
椎茸も欲しいなぁ。よし、ちゃんとあるな。あ、この椎茸どっかで見た気が⋯⋯
そうか、以前に俺が海辺でした野グソに似てるんだ。程よく柔らかかったそのうんこは、自分の重さで形が変わり、最終的に丸いキノコの傘のような見た目になったんだ。写真撮ったけどどっか行っちゃったなぁ。
あとなんか野菜いるっけ?
まあいいか、思い出したら戻ってこればいいし。しらたき探そ。
あった。説明が書いてある。
『お尻の穴にシャワーヘッドを装着した兵士が出したうんこを収穫し、そのままパック詰めをしております』
兵士なんだ。
豆腐⋯⋯も要らんかな。俺豆腐嫌いだし。鍋に入れると高確率で崩れるし。
あとはなんだ、肉くらいか? 卵もいるか。
あれ、牛肉がない。やっぱり生き物はうんこと元人間しかいないのか? そもそもうんこって生き物なのか? なんで生きてんだろアイツら。
「お客さん、独り言全部聞こえてますよ」
腕にびっしりタトゥーの入った大柄のうんこが俺に話しかけてきた。店員だろうか。
「なんで生きてんだろって、ひどいこと言いますね。なんでそんなこと言うんですか? そんなにうんこが嫌いなんですか?」
とんでもない。
「なんで生きてんだろっていうのは死んで欲しいって意味じゃなくて、どういう原理で生きてるんだろって話です」
「あ、なんだぁ〜! そういうことだったんですね! 簡単ですよ、僕達は元々人間のうんこだったんですけど、ある日突然命が宿ったんですよ! それからはうんこだけで自給自足で生きてます! 僕達うんこが人間を食べて、それをうんことして排泄する。するとそのうんこにも命が宿るんです! 不思議ですよねぇ」
長々と説明ありがとう。結局どういう原理で生きてるのかは分からなかったけど、うんこがうんこをするという情報を聞けただけでも収穫だったよ。こんな情報本島に持ってったら世界がひっくり返るぞ。多分。
「すみません、牛肉って置いてないんですか?」
「いや、僕店員じゃないっすよ。分かんねっす」
店員じゃねーのかよ。
生肉コーナーには「うんコーン」という肉しかない。うんコーンと聞くと、消化されずにそのまま出てきたトウモロコシが混じったうんこを想像するが、それは肉ではない。
説明を読んでみると、うんコーンとは本島で言うところのユニコーンであることが分かった。本島にユニコーンはいないぞ。
でも、ユニコーンの肉ですき焼きが食べられるなんてすごいな。めっちゃ楽しみや。
あ、あとタレも欲しいなぁ。自分で割り下作ってもいいけど、既製品に頼った方が美味しくなるからな。
『うんこすき焼きのタレ』
あったあった。めっちゃスタンダードな名前だなぁ。けっこうサラッとしてる感じだけど、これは水様便かな?
そして生卵! ⋯⋯あった! うんこニワトリが産んだうんこ卵! これで完璧よ! 洞窟帰ってすき焼きだーいっ!
俺はうんこカゴをレジに置いた。
「931うんこ円になりま〜す」
お、ちょうど931じゃん! いい事ありそう! んで物価めちゃくちゃ安いな。
さて、さっさと帰るかっ!
「おい人間!」
自動うんこドアのを抜けると、見覚えのある巨大なうんこが立っていた。プニプニうんこだ。
「死ねぇ!」
うんこパンチを食らった俺は身動きが取れないほどの激痛に襲われた。プニプニうんこという名前に反してなんという攻撃力だ⋯⋯!
結局お金とすき焼きの材料を奪われてしまった。だが残念だったなプニプニうんこ。こんなこともあろうかと札束を身体中に隠しておいたんだ! 100分の1程だが、数年は遊んで暮らせる額だ!
俺は残ったお金を握りしめてうんこバーに向かった。うんこバーってアイスの名前じゃないからね。お酒飲むとこ。
「いらっしゃい」
渋い顔をしたまさにベテランという雰囲気のマスターが出迎えてくれた。渋いうんこ。良い響きだ。
「いつもの」
通じるだろうか⋯⋯
「いや、君初めてだよね」
そうだね。
「じゃあオススメをください」
「あいよっ!」
寿司屋みたい。この島にも寿司屋あるのかな。醤油もちゃんとあるのかな。あるよな、すき焼きのタレがあるんだもん。
「お待たせ致しました。こちら、下痢をションベンで割ったものでございます。どうぞ」
キャラ変わりすぎじゃない? 毎分変わるのか? 怖いな。まぁいただくとするか。
むむっ!
飲みやすい! 芳醇なうんこの香りにツーンとくるアンモニア臭! そしてほのかに香るミントの香り! この下痢便を製造した酒造の担当者は普段からミントを摂取しているに違いない!
って、味の感想「香り」しかないやないかい! でもそうなんだよ! 味より香りが強いから、それがメインだと思うんだ!
「お味はいかがですか?」
バーってそういうの聞かれるの? マスターに話しかけられるのってなんか緊張する。
「今まで飲んだ液体で1番大事な味がします!」
「大事な味⋯⋯? そうですか、良かったです」
微妙な顔をされた。確かに1番大事な味ってなんだろうね。俺も咄嗟に答えたから自分でもよく分かってないよ。でも、めちゃくちゃ美味しいのは事実だ。おかわりもらお。うまー。おかわり。うまー。おかわり。ねむー⋯⋯
「お客さん! お客さん!」
目を覚ますと、マスターが俺の肩を揺すって声をかけていた。しまった、寝てしまっていたか。
「すみません、寝てました⋯⋯飲みすぎですね。そろそろお暇させていただきます。お会計おいくらですか?」
「あ、お会計でしたらあちらのお客様が支払ってくださいましたよ」
あちらのお客様?
マスターの視線の向いた方を見てみると、人の顔ほどの黄土色の球体を持ったうんこが座っていた。
「飲みすぎちゃったようね、坊や」
バーで出会うお姉様キャラ的なうんこ? 見た目ただのうんこだから正直よく分からんのよ。
「そうですね、飲みすぎたみたいで。あの、お代なんですけど⋯⋯」
「いいのいいの、気にしないで! その代わり、ちょっとそこの公園まで付き合ってくれる?」
公園? 遊ぶの?
「わ、分かりました⋯⋯」
ここから徒歩5分くらいのところにその公園はあるそうで、そこで俺を占ってみたいのだという。この大きな黄土色の球体はうんこの水晶だそうだ。
「さてさて、あなたを占ってあげましょう⋯⋯」
占いとかお化けとか、今まで生きてきて1回も信じたことないんだよなぁ。
「えっ!? こんな、こんなことって⋯⋯!!」
お姉様うんこは狼狽えるような感じでうんこ水晶を見ている。なんなんこいつ。
「心して聞いてね⋯⋯あなたは⋯⋯」
みんなそろそろ飽きてきたよね。さすがに私もしつこいと思ったけど、もう後戻り出来ないわ。ここからうんこが極端に減ったら変だもんね。しつこくてもこのまま行くわ。
次回! 悲しき運命! 米異死す!
米異って名前めっちゃ久しぶりに出てきたね。多分第1話の冒頭以来だね。これで「メイ」って呼んで女の子にしても良かったんだけど、さすがにこんなうんこまみれの物語の主人公と同じ名前の人がいるのって可哀想じゃん。だから藤子先生がジャイ子の本名を用意しなかったように私もそうしたの。
ただ、めことちゃんも日本中探したら居そうなんだよなぁ。愛琴とか、芽琴とか、目小盗とかね。いたらごめんね。