記憶
「ほら、飲めって言ってんだろ。早くしろよ先生が来るだろ」
彼女は涙目で首を横に振る。元々大きく二重で可愛い印象をもつ丸い瞳が、涙でより強調されている。
長い髪が左右に揺れ、必死に嫌だと訴えてくる。
両肩を少年らに押さえつけられ、手入れされた長い髪は乱れていた。
「やだ、離して、やだっ」
「喋んな」
彼女の腹部に拳を沈めた。本気ではない。
うぅ…と静かに呻く彼女。
たのしい。たのしい。たのしい。
どんなゲームより、どんな遊びよりやっぱりヒナを遊ぶのが楽しい。
「給食残しちゃいけないんだよ、ヒナ」
「ダメなの、ほんとに、苦手で、牛乳とか」
「知らねえよ、ほら、食べやすいように全部混ぜてやったから、ちゃんと飲めよ?」
「無理なの、お母さんも知ってて先生も食べられないの知ってるから、まってダメなの、うぅ…」
無理矢理詰め込まれた食べ物だったそれを、戻すことなく嚥下するヒナ。
何度かの嗚咽後、顔を白くし、頬を膨らました。
うぉえおえぇえエェエ…ッ!!!!
「わー、ヒナが吐いたーきたねー」
周りの少年たちが囃し立てる。
ヒナは汚した床と服を見ながら動けず、僕を見た。
綺麗な瞳は涙で真っ赤に腫れ、焦点は合わずこちらをボーッと眺めている。
あぁ、かわいい。
静かに彼女に歩み寄って拳を握った。
「せっかく食べさせてやったのに戻してんじゃねえよ!」
女の子は柔らかくて、壊れそうで、だから、
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