焦り
物思いに耽る私に、アンナさんが問いかける。
「セレスさん、もしかして何か悩んでいらっしゃいますか?先ほどから気になっていたのですが、数ヶ月前より痩せているように見えます」
「え、私痩せてますか?自分では気づいてませんでした」
そう言うと、アンナさんが医者の顔になって言う、
「無自覚に痩せる時は危険信号です!体か…心が、悲鳴を上げている事が多いのです。何か気になる事はありませんか?」
「…きっと、中間発表とかで忙しかったからかな」
私はへへへ、と笑う。
「…セレスさん、私には二人の子どもがおります。もう成人して家を出ましましたが」
成人……?
「ええっ!?お子さんそんなに大きかったんですか!?」
恐ろしや、魔法使いのアンチエイジング。
「今のセレスさんは、私の子ども達が大人になろうともがいていた頃によく似ています。けれど、表情は全く違う。私の子ども達は、子どもでいたい気持ちと、大人扱いして欲しい気持ちが同居した、不安定だけど未来を楽しみにしている顔をしていました。今のセレスさんは、焦りと不安で今にも泣き出しそうな顔をしている」
「………………。」
「何があなたにそうさせるのです。あなたに焦らなくて良いと、声をかけてくれる人はいないのですか?」
「アンナさん……」
「あなたには、ゆっくり大人になる権利があります」
頭ではわかっている。でも、それで間に合わなかったら、私は自分を許せない。
「…どうしても、側にいて欲しい人がいます。その人に、いなくならないで欲しい…。私の前から、いなくならないで欲しいんです!でも私には知識もスキルも足りなくて、グズグズしてたら間に合わないんじゃないかって、早く早く、何とかしなきゃって…!!」
アンナさんは私のたどたどしい言葉を黙って聞いてくれた。
「…セレスさんは、その方がとても大切なのですね。その方もあなたを大切にしてくれている?」
私はコクコクっと頷く。
「でしたら焦るのをおやめなさい。あなたが大切に思うその方は、きっとセレスさんにそんなやつれた顔をさせる事を望んでいません。二人でたくさん話をして、二人で一緒に進むんです」
二人で…?
「ふふふ、任務の時も思っていましたが、あなたは素敵な女性ですね。純粋で真っ直ぐで、温かくて。きっとその方も、そういうセレスさんをお好きなんでしょうね」
「え…好き…?」
「あら、そういう話でしょう?私は娘の恋の話を聞く母の気分でしたよ?」
そう言ってスススと紅茶をすするアンナさんは、何かものすごい爆弾を私に落としていった。




