中間発表
いつもの喧騒、いつもの怒声。
第一研究室は今日も平常運転だ。
-約2名を除いて。
セレス・コールデンは最近明らかに心ここにあらずだし、そんな彼女を見て、副所長はただでさえ怖い顔を赤くしたり青くしたり忙しい。
この親子の間に何があったのか、直接聞ける猛者なんて…
「あっれー副所長、何か体調悪いっすか?」
…いた。エイデン・クグルト先輩。
「まさか有り得ないっすね!副所長が体調不良なんて、俺が連休貰える以上に有り得ないっす。というわけで、ゴードン!コールデン!集合!」
え、僕!?と一瞬頭を掠めたけど、行かない選択肢は無い。
「というわけで、二人の中間論文の締切日が決まりました。おめでとう二人とも。準備はしっっかり出来てると思うけど、1ヶ月後の今日!この日!とりあえず運命が決まる。」
エイデン先輩がパシッパシッと書状を弾きながら演説する。
…終わった。本当に終わった。短い研究員人生だったなあ、なんて思いながら隣を横目で見ると、彼女も魂が抜けて白目になってる。
「いやぁ、そうだろそうだろ。嬉しいなぁ?俺がお前らの指導係になって早5年、この日が来るのを待っていた!」
「…エイデン、お前が自分の負の記録を塗り替えたいのはよくわかるが、後輩を煽るな」
副所長が溜息混じりに言う。
「お前ら…まさかと思うが、論文の下書きをしてたりは…」
「「ありません!!」」
二人で声を揃えて主張する。
「……わかった」
ゴゴゴゴとマグマが地表に出るように、副所長がゆっくりと立ち上がる。
そして大声で叫んだ。
「第一研究室!!緊急配備だぁあッ!!ケインズはゴードンの任務を肩代わり!キースは二人の添削指導!エイデンお前はイライザ女史の侵入阻止ぃぃい!!」
「「「はいっ!」」「えーーっっっ!?」
「いいか、他の研究室に負ける訳にはいかんっっ!絶対勝利!!」
「「おうっ!!」」「えーーーっっっ!?」
約1名の魂の叫びは置いておき、僕ら二人は終始ポカンだった。
「いい?二人とも。以前話した通り、この中間発表には各研究室の名誉がかかってる。とにかく業務は後回し。肉体と精神の限界まで絞り出して書き切るんだ!」
普段爽やか一辺倒のキース先輩までおかしくなってる…。
「君たち同期入所は総勢30名。その内第一から第五までの総合研究員は6名。残りは専門研究員だ。例年の統計だと論文提出まで至るのは7割。提出率は専門研究員の方がいいけど、過去代表論文に選ばれたのは総合研究員の方が多い。わかった?敵は第二から第五までの研究室だよ!」
「「はい……」」
正直まっったく理解できなかったけど、ノーなんて言う勇気はなかった。




