ずるい
「ずるい…?」
「そうですよ、ずるいです………」
彼女の瞳にうっすらと涙が溜まる。
「…私が一番、自分のこと知りたいんです。いつもいつも思ってました。どうして私はみんなと違うんだろうって。何で普通じゃないんだろうって」
彼女の言葉にハッとする。
「所長はもうご存知ですよね?私が小さい頃、孤児院にいたこと。ビークスの……」
「あぁ…。君に関する書類は一通り確認させてもらってる。君の産みの親は…きっと……」
ゲオルグと目を見合わせる。
「…残念なことだが、一部魔法使いの中には、魔力無しで生まれた子を隠す風習がまだ残っている。…隠すというのは言い方が綺麗すぎるが………」
「ビークスの孤児院には、そういう子が捨てられるって、村の人間なら誰でも知ってます」
彼女は苦しそうに再び握りしめた手に目線を落とす。
「…子どもの頃、呪文なんて一つも知らなかったけど、確かに私の周りでは、私のせいでおかしな事がたくさん起こっていました。だから、ずっとずっと隠して来たんです!ビークスの孤児は、魔法が使えないのが普通だから!」
彼女の瞳は悲しみで染まっている。
「今でも毎日思います。何で私は普通じゃないんだろう、私が普通だったら、もっとみんなの役に立てるのにって……」
「セレス……」
ゲオルグの目がみるみる潤む。
「でも、今日、私にも何かあるかもしれないって、中途半端に知らされて……。私が知らない私のことを、二人だけ知ってるなんて…ずるいですよ……」
胸に苦い水が広がるような気持ちになる。
「………そうだね、僕が本当に悪かった。君に正直に言えばよかったんだ。君のことを知りたいって」
「そうですよ…。そう言ってもらえれば、任務じゃなくても会いに行ったのに」
「--!!」
「だから、任務継続させてください。所長の疑問が解けるまででいいんです。お願いします!」
そう言い切った彼女の目は、いつも以上に真剣で、そして、とても澄んでいた。
「…わかった。ありがとう。僕からもお願いするよ。改めて、これからもよろしく」
そういうと、彼女は春の陽だまりのように微笑んだ。
「えー…ごほん、何だ、あれだ。セレス・コールデン、とりあえず任務継続決定だ。この際何か言っておく事はあるか?」
彼女が軽く首を捻り、そして何かを思いついた顔をする。
「…あの、私も謝らなきゃいけないかな、と思うんです」
「何をだ?」
「知らぬこととは言え、研究所の所長に掃除させたり、料理させちゃったり。…あと、裸も見ちゃいましたし」
そう言ってちょっとななめ下を向き照れている。
「え、いや、あの、ちょっと待って、」
「本当にごめんなさい!でも所長の体すごく綺麗でビックリしました!」
「……それってこのタイミングで言うこと………?」
背後から物凄い殺気を感じる。
「アァ〜レェ〜〜ン……?」
「い、いや、僕はどっちかっていうと被害者で、」
「てめぇぇぇ!!消し炭だ!!ゴルァ!!」
そうだった。
彼女はちょっと残念なの忘れてた。




