『さくら』の開花と春が訪れ
桜舞い散る季節、春。
それは出会いの季節であり、別れの季節。
そんな嬉しくて、悲しい季節。それが春。
今年もまたやってくる。僕は桜の下で待っている。
2019年4月。天候は快晴。
世間は平成が終わり、新しい年号への期待へ胸を躍らせている。平成が終わる。それはどんな物なのか。どう感じるのか。僕自身もかなり興味があった。だが、それ以上に胸が高鳴る出来事がある。そう、高校の入学式だ。今年から僕は、高校1年生になる。少し田舎から神戸に引っ越したため友達はいないが、新しい環境での、新しい出会い。不安もあるが楽しみが勝ってしまっている。これから僕の青春の1ページが幕を開けるのだ。
入学式を終え、指定されたクラスへと向かった僕は指定された席についた。クラスでは何人かグループになって話をしている生徒が見られる。同じ中学なのだろうか。まずは話しかけるところから始めなければ。
「あの」
「は...い.....」
声のする方へ振り向くと、そこには見知った女性の顔があった。そんなはずはない。だって彼女はもう。
「私の顔に、何かついてます?」
「いえ、すみません。昔の知り合いに似ていたから」
「そうなんですね。隣の席になりました佐倉小春です。これからよろしく」
「さ、くら、、」
「?」
さくらって。いや偶然だ。そもそもあいつは名前が『桜』だ。苗字じゃない。それにしても他人の空似にしてはなすぎているな。
「あのぅ。どうかしました?」
「あっごめん。何でもない。僕は向井和人。よろしく」
「はい!向井さん」
こうして俺と佐倉小春の物語が始まった。