98.聖騎士さん、考察する
「行くぞ! 星助!!」
「きゅぅうううん!」
「!?」
センの掛け声に合わせて、ヒトデ・スライムが直線的に突撃してくる。
「っ……」
ツキハはそれを真横に回避する。
ヒトデ・スライムは地面にぶつかると、弾かれるように空中に投げ出される。
それを確認したツキハは一瞬、安堵する。
「!?」
しかし、その安堵はすぐに同程度の驚きへと変わる。ヒトデ・スライムはなぜか空中で弾んでいるのだ。それはまるで見えない壁があるかのように高反発のスーパーボールのように勢いを失わずに空中で何度も方向転換をしては再びツキハに襲い掛かる。
「つ……」
ヒトデ・スライムの体当たりはツキハをかすめ、ツキハのHPは微減する。
が、ツキハは無暗にヒトデ・スライムに攻撃を加えようとはせずに、最小限の動きで前方への警戒は解かない。
今度はガキンという金属がぶつかり合う音が響く。
センの正面からの攻撃をツキハが剣で受け止める。
「やっぱりやるねぇ……ツキハさん」
「そりゃどうも……! おりゃっ!!」
「っ……!」
今度はツキハが攻撃に転じる。
ツキハとセンは激しい剣戟を演じる。
◇
「なぁ、あんたら、最強のパーティがどうのこうの言ってたな?」
ライゲキが援護に入り、数的に同数となったもう片方のグループは鍔迫り合いとなっていた。
その中で、ユウタは対峙していた自身と同じ聖騎士のクラスでありStarry☆Knightsのリーダーらしき存在、ゲンゾウに質問を投げかける。
「そうだが……何か問題でも?」
「ちっ……それ自体は別に構わねえよ」
ユウタのその言葉の奥には歯がゆさがあった。
別に構わない……が、肯定はしたくなかった。
それは月丸隊の主たる目的……命を懸ける理由が人々の解放や安全の確保のためであり、彼らのそれとは相反するものであったからだ。
ゲームは自由だ。テイムを楽しむもよし、外の世界に好奇を持つのも、正義を執行するのもAIにとっては歓迎の対象なのかもしれない。勿論、最強を目指すのも自由だ。
であれば、人々の解放を目指すのも自由であり、最強を目指すなどと宣ものをエゴイスティックであると感じ、疎ましく思うのも当然、自由である。
「んで、ってことはつまり狙いは”最強千”か?」
「…………その通りだ」
ゲンゾウは少し間を置くが、諦めたようにあっさりと認める。
「……そうか」
暴君の手袋による最強千の強奪。それがStarry☆Knightsの主目的であった。
だからこそ、早々に攻撃を仕掛け、”戦闘状態”を作り出した。
リアル・ファンタジーは戦闘中のアイテム使用は渋い。決闘状態になると、戦闘時アイテム枠に指定しているアイテム以外は使用することができない。戦闘時のアイテム枠の数はクラス毎に異なるが装備と共通の枠となっており、一般的には装備以外のアイテムは持ち込めないクラスがほとんどだ。
この少ない枠に最強千を入れている可能性は低く、Starry☆Knightsは戦闘状態を作り出すことで、最強千をこの場で使用されることを防いだのであろう。
「んで、もう使ったと言ったら?」
ユウタは意地が悪そうに口角をあげて呟く。
「それはないだろう」
ゲンゾウは自信ありげに言い切る。
「一応、聞いておく。どうしてそこまで確信できる?」
「最強千はいわば切り札だ。そして最強のプレイヤー同等の力を得ると言う性質上、ギリギリまで使わない方が効果が大きい。最強のプレイヤーが強ければ強い程、自身も強くなれるのだから。従って、よっぽど無計画な奴でもない限りはホイホイ使うような物ではない……」
「なるほどな……」
その回答はユウタがある程度、予想した回答であった。故に驚きはなかった。
確かにアレは使えずに結局、最後まで使わないで終わる類の道具だ。
使った……!




