09.おじさん、気付いてしまう
(ディクロ……確か、ボスリストに掲載されている魔王ランクはロデラ、ラファンダル、ノヴァアーク、そして討伐されたアンディマ。……ディクロなんて奴は、載ってなかったな)
「サラ……もしやこいつ隠しボスか?」
「そのようです」
「まさかそんな奴がいるとは……」
「あ、はい……そ、そうですね」
ジサンの隣にもいる。
本人は少々、複雑な心境のようだ。
「挑みし者か、と質問すると言うことは挑まないことも可能か」
「無論だ。ワープ床のトリックを見抜いてここまでやってきたことは賞賛に値する。しかし、ここへ到達した者のほとんどが我を目指して訪れたわけではないだろう。事故で魔王クラスと戦闘となっては、流石に『フェア』ではないだろう」
(ワープ床のトリック? そんなものを解いた記憶はないが……)
そんなことを思いながら、ディクロが『フェア』という単語を強調したことに気付く。
それにより、ジサンは思い出す。
ゲーム開始時にAIから発せられた二つのメッセージがある。
このメッセージはご丁寧なことにメニューウィンドウからいつでも閲覧可能である。
<ゲームはフェアである。理不尽を排除した設計を心がけた。存分に楽しんで欲しい>
<先入観を抱くな。パラダイムシフトこそが本ゲームをクリアする上で肝要である>
ディクロはまさにこの前者を主張しているということであった。
ジサンは考える。
俺は死んでもいいから、挑む分には問題ない。
しかし……
「サラ……あいつはテイム対象ってことはないよな?」
「対象のようです」
(……なんと!?)
リストのボスはテイム対象外であるが、隠しボスは対象になることがあるということか。
「ですが、マスター……現在のテイム武器では、成功率はそう高くありません」
「そうか。テイム失敗した場合、どうなる?」
「一定の期間を経て、同設定のモンスターがどこかの隠し部屋で復活します。ただし報酬は最初の一回のみです」
(……そうか)
『同設定の』という言葉が引っ掛かる。それはつまり『別の存在』ということか。
「……止めておこう」
「わかりました! マスター!」
サラは嬉しそうに言う。二人旅を邪魔されたくなかったのだ。
一方で、ジサンは思う。今回、ディクロを発見できたのは偶然中の偶然。日本中の隠し部屋を再び探すなんて無理ゲーだ。
より高確率で捕獲できるテイム武器を入手してから、またここに来る方が合理的だ。
「承諾した。挑まぬもまた英断……」
ディクロはそんなことを言う。が、
「ん……? 挑むという意味では其方であろう?」
「っ……」
(ん……?)
サラはディクロにだけ見えるように横を向き、ニヤリとしながら普段より偉そうな口調で言う。
否、むしろこちらが彼女の普段の口調である。
ディクロは焦燥を浮かべながら口ごもる。
「それじゃ、帰りましょう! マスター」
サラは踵を返すようにディクロに背を向け、歩き出す。
「あぁ……そうだな」
二人は、撤退を決めた瞬間から出現したワープ床にて地上へ戻る。
その時、ジサンは考えていた。
サラのクラスって大魔王…………もしかして、こいつ……『隠しボス』なのではないか。




