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ダンジョンおじさん  作者: 広路なゆる


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87.自治隊員さん、九死

「うわぁああああ」


 グロウは情けない声をあげ、尻餅をつく。


 彼の残りの命の灯とも言えるHPゲージは1/4程度の値を示す。


 ウルトマと表示された白いウェットスーツのような姿に、サングラスを付けた男性の腕から放たれた帯状の光線によるダメージによるものだ。


「一体、何なんだ……!?」


 グロウは追い打ちをかけるように目の前に仁王立ちする男に対し、現状のあらゆる不可思議、理不尽、恐怖に対する疑問を投げかける。


「何なんだと言われてもな~」


 ウルトマと表示された男は頭を掻く。


 グロウにとって、もっとも頭を悩ませる現象の一つがその表示名であった。

 プレイヤーには本来、プレイヤー名は表示されない。それが表示されていることが、その男、ウルトマの言う“プレイヤーのモンスター化”という現象が事実であることを示唆している。


 グロウを悩ませる現象は他にもある。それが現在、謎のフィールドに閉じ込められているということだ。

 それは特定の空間、いわゆるボス部屋に留まらないタイプのボスに挑戦した際に、展開されるフィールドに類似していた。

 この現象も相対する敵のモンスター化の事実を後押しすると共に、外部への逃走を困難にしていた。


 そしてモンスター化が事実であるならば、認め難い、いや認めたくない彼らの発言も事実となる。


“モンスターに狩られたら普通にゲームオーバーでしょ。”


 その言葉が頭の中を想起し、グロウの中で急激に恐怖が増大する。


「きゃぁあああ!」


 グロウから少し離れたところでは、彼の仲間である眼鏡の少女、アンも同じように追い詰められている。

 アンの相手は、魔王を初めて討ち取ったP・Owerの精鋭、アーク・ヒーラーのズケの姿をしている。筋肉質な四十代くらいの女性であった彼女はP・Ower史上初めて、魔王ランクのボス:ガハニを討伐した。しかし、しばらくした後に何者かの襲撃に遭い、死亡しているはずのプレイヤーでもある。その襲撃により、三名のメンバーが犠牲になった。

 だが、そのズケには、ズケではなく“パンマ”という名称が表示されている。


 そして、アーク・ヒーラーであるにも関わらず、好戦的な戦いを仕掛けてくる。


「うーん、君、なかなか可愛いね。貰っちゃおうかな」


「っっっ……!」


 ズケの姿をしたパンマはそんなことを呟きながらアンに微笑みかける。

 アンの顔は恐怖で引き攣る。


「あの……流石に殺したりはしないですよね?」


 グロウは、お伺いを立てるような口調で目の前の男に語り掛ける。


「ん? 普通に殺すよ?」


「っ……! な、何で!? 俺達が何をしたっていうんだ!?」


「あえて言うなら、着ぐるみに気付いちまったことかな」


「っ……!」


 着ぐるみとはズケのことであろうか。つまり口封じであると、グロウは考えた。


「でもまぁ、そうでなくても……俺達、割とカジュアルにやっちゃうので」


 ウルトマはサングラスにより表情の全容を確認することはできないが、その口元は歯をチラつかせ、口角が吊り上がっていることから、ニカっと爽やかな笑顔であることを窺わせる。


「えーと、それじゃ、俺達、シゲサトを追わなきゃいけないので」


「っっ……!」


 その言葉は、この現場をまもなくクロージングする意図であることを汲み取るには十分であった。


 やばいやばいやばいやばいやばいやばい……!


 グロウはいよいよ以って、生命の危機が最高潮に達する。


 何か手立ては? 助けを求める? 誰に……?

 ……シゲ……サト?

 そうだ、シゲサトに助けを……!


 グロウはあたふたとメニューを出し、メッセージを作成しようとする。


「おいおい……それは意味ないぜ?」


「っ……!」


「プレイヤーは俺達の生み出したフィールドに外部から侵入できない。あとな、遅すぎだ。やるならもっと早くにすべきだった」


 ウルトマは対象の愚策を憐れむように語り出す。


「そして、お前、まさかシゲサトに助けを求めようとしてないか?」


「っっ……!」


「戦いが始まった時、シゲサトを守るんだーだの何だの、息巻いていたような気もするが……気のせいだったかな?」


 ウルトマは今度は悪戯にニヤリと笑ってみせる。


「う、うわぁああああああああああ!!」


 恐怖に加え、誇りをズタズタに引き裂かれたグロウは我を忘れたのか、這いずるように逃走を図ろうとする。


「あはははは! いいぞ! 無様に足掻け! その方が面白い! ……なんだけど」


「っっっっ!」


「急いでるんだわ……」


「っ――」


 ウルトマは腕を交差し、構える。


「やめてぇえええええええ!」



「はっ、これはまぁ……確かに面白い」



「「「「っっ……!?」」」」


 四人は驚く。


 唐突な第三者の声が響き渡る。


 四人がその方向に向き直ると、ドーム状の空間の境界面に、脚をぷらぷらさせながら腰かける褐色の少女が笑みを浮かべながら座っていた。


 この時、とりわけ驚いたのは、むしろウルトマとパンマの方であっただろう。その少女には見覚えがあった。サロマコにて、シゲサトらと一緒にいた少女であった。


 それよりも彼らを驚かせたのは、彼女がここにいること。

 このフィールドにはプレイヤーは侵入できないはずであるからだ。


 だが、その疑問はすぐに解消される。


 その少女にはモンスター名称“サラ”が表示されている。


 この時、モンスター化していたウルトマとパンマは本能的に察する。


 狩る立場から狩られる立場へと変わったことを。



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【作者新作】

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