86.おじさんの釣竿
「オーナー! これ……報酬の“仙女の釣竿”です!」
魔帝:ジイニの討伐報酬は“仙女の釣竿×4”である。
今回、MVPであったシゲサトが四本の報酬のうち、三本をジサンに寄越す。
「えっ? こんなに?」
一本はジサン、もう一本はサラ用として、一本余る。
「オーナーが受け取ってください。俺の周りには仙女の釣竿が欲しい人はいなそうなので……あ、そうだ。黄金の釣餌をくれたツキハさんに渡してはどうでしょう?」
「え? そうですね……わかりました。そうします」
「はい!」
シゲサトはニコリと微笑む。
(よし……)
ジサンは早速、仙女の釣竿を具現化してみる。
現物を拝みたかったのである。
(おー、ピカピカだ……)
ジサンは愛おしい者にするかのように竿を撫でる。
(お、これはジイニが戦闘前に渡してくれた釣竿と同じデザインだな……)
ジサンが仙女の釣竿を愛でていると、通知がポップする。
魔帝討伐の通知だ。
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◆2043年3月
魔帝:ジイニ
┗討伐パーティ:ああああ
┝シゲサト クラス:ドラグーン
┗匿名希望 クラス:アングラ・ナイト
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(……またサラは離脱したのか)
「あれ? サラちゃんは?」
早速、シゲサトが反応する。
「知らなかったか? 我は極度の恥ずかしがり屋だ。なので、勝利寸前で離脱した。ジイニには離脱許可権限があったからな」
「な、なるほど……って、恥ずかしがり屋?」
サラはいつものゴリ押し理論で堂々と言い訳するが、シゲサトはサラのどこが恥ずかしがり屋なのだろう? と普段の言動との乖離を疑問に思うのであった。
ジサンも考える。
魔王ランクのボス:タケルタケシの報酬として特殊クラス:魔王が解禁されている。
だから、以前よりは不審に思われないだろうが、それにしても大魔王は確かに目立つ。
そのことを考えると、少々、複雑な気持ちになる。
(……)
と同時に、複雑になるのは一緒にリストに掲載されたかったからなのだろうか? と、以前の自身の考え方と多少の変化が起きていることに不思議な感覚になる。戸惑い半分と、残りは温かい何かが混ざり合った感覚だ。
「……ナー」
(……ん?)
ジサンはサラのことを悶々と考えていると、今度はシゲサトに呼びかけられていたことに気付く。
「オーナー……俺……実はオーナーに謝らないといけないことが……」
(……)
「って、あれ? メッセージだ。何だろ」
シゲサトが何かを言いかけたその時、シゲサトの元に一通のメッセージが届く。
「えっ? アンちゃんから?」
(眼鏡の子か……)
「み、見てもいいですか?」
シゲサトは少し焦ったような表情でジサンに許可を取る。
「どうぞ」
[アン:さとたすけておねがい]




