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ダンジョンおじさん  作者: 広路なゆる


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85/120

85.おじさんと魔帝

[プレイヤー:ジサンの装備による弱体化を本戦闘に限り無効とします]


(えぇえええ!?)


「え、えーと……」


「どうだ? この方が楽しいだろ?」


「……あ、有難うございます」


 ジサンはそのようにお礼を言い、改めて、ゆったりと武器を構える。


「っ……!」


 ジイニは直感的に何かを感じ取る。


「おらぁっ!」


 その直感を確かめるように蒼い光弾十数発をジサンに向けて放つ。


「っ……!」


 そして、その直感が間違っていない確度が上昇する。

 光弾は一つも命中していない。


「っ……! 急に強くなりやがって……」


 ジイニは自身の行動が想像以上の変化を齎したことに気が付く。



 ◇



 悔やみはしない。だが、悔しさはある。


 真剣勝負を望んだことを悔やみはしない。

 だが、力の差がこれ程までに逆転したことに対する悔しさはある。


「スキル:スプラッシュ・ディフュージョン!!」


 魔帝:ジイニは得意の蒼い光弾を大量に巻き散らす。


「くそっ……当たらねぇ……!」


 しかし、数を増やしたところで、ターゲットには着弾している様子は見られない。それどころか弾幕の合間を縫って、接近してきている。


[スキル:魔刃斬]


「ぐあっ……!」


 ターゲットによる斬撃スキル一発により、HPが如実に減少する。そして、いよいよ残HPが1/5のところまで来ていた。


 ジイニは自身の置かれている現状を分析する。


 もう一人、同程度の力を感じる女がいる。奴はまだ十分に力を残している。

 いざとなったらこの男を助けるという主旨の発言をしていたにも関わらず、全く手を出ししてこない。こいつを信じているということか……はたまた、分かり切っていた実力差ということか……いずれにしても……この戦闘の敗戦はほぼ確定的。


 だが、こいつ(ジサン)だけは持っていく……!


「ここから先は誇りを掛けた戦いだ……!」


 ジイニの目に力が籠る。そして自身の切り札とも言えるスキルを宣言する。


「スキル:オーシャンズ・アベンジャー!!」


「っ……!」


 そのスキルの発動と共に、倒れたはずのアネモネの触手がウネウネと動き出す。


「俺の相棒はやっぱりこいつなんだよ……!」


「くっ……!」


 ターゲットは焦りの表情を浮かべる。それもそのはずだ。奴が今、立っている場所はアネモネそのもの。つまり触手の包囲網から逃れることなど不可能であった。


「こいつは絶対に逃れることも防ぐこともできないぜ……!」


 触手がターゲットに襲い掛かり、一矢報いる……はずだった。


「避けることも防ぐこともできないなら…………倒すしかないな……」


「っ……!?」


 ターゲットがぼそぼそと呟くのが聞こえたような気がした。

 だが、ジイニにとって、にわかに信じられない発言ではあった。


 戦いは終盤とはいえ、まだ自身のHPは1/6も残っている。


 撃ち損じを危惧して、相当、早いタイミングでの切札の使用に踏み切ったつもりでいたからだ。


 回復が前提に設定されたプレイヤーの残HP1/6とボスの残HP1/6では全く意味が異なる。この1ターンで倒せるなんてことが……


[スキル:鼠花火]


「っ……!?」


 ジイニはターゲットによる一つのスキルの発動を確認する。


[スキル:陰剣]


「……?」


 直後――




[スキル:陰剣][スキル:陰剣][スキル:陰剣][スキル:陰剣][スキル:陰剣]……




「っ…………!? 冗談だろ……!? ぐぉおおおおおおぉお!!」


 魔帝:ジイニは同一のスキルの連続的な表示、および自身の身体に発生する無数の斬撃エフェクトを目撃することとなる。



 ◇



 ジイニに切札があったように、ジサンにも切札があった。


 魔王:ネネとの戦闘後に習得した新スキル:鼠花火の効果は”一定時間スキル連発可能。以降、戦闘中、魔法やスキルが使えなくなる。”というものだ。

 そして、超高速斬りのスキル:陰剣と組み合わせた。

 陰剣のデメリットは使用中、防御力が激減するというものであるが、避けることも防ぐこともできない状況ならば、それはもはやデメリットにはならなかった。


 ジサンは、正に捨て身の連続攻撃により、瞬間的な超火力を叩き出したのであった。


 フィールドは消滅し、元のビワコの湖畔に戻ってくる。


(……お疲れ。少し休んでろ)


 ジサンは奮闘したフェアリー・スライムをボックスに戻す。

 シゲサトも同じようにピククを休ませる。


「悔しいが、完敗だ……」


 ジイニは呟くように言う。

 呟けるということはぼったくりシェルフの情報通りに事が運んだということだ。

 ジイニは消失せずに済んだのだ。


 戦闘前からの変化として、ジイニの表示名は再び無くなっている。どうやら現在はモンスターとしてアクティベートしていないようだ。


「ナイスファイトでしたね! 魔帝:ジイニさん! ジイニさんのフェアプレイ精神、痺れました!」


 シゲサトが屈託のない笑顔で、健闘を讃えるように語りかける。


「っ……! 舐められるのが嫌だっただけだ……ちっ……次は負けねえ……」


 ジイニは悔しそうに応える。


(……ゲーム的に次なんてあるのだろうか?)


「ところでジイニさんはこの後、どうするんですか?」


「えっ、いや……特に行く当てもねえな…………戦うために生まれてきた俺が生き残っちまった……その後の使命なんてもんもない……どうしたものか……」


「そうですか……」


 シゲサトは困ったように眉を八の字にする。消滅を阻止したもののその後のことまで考えてはいなかったのだ。


(………………あっ)


 そんな時、ジサンはふと思いつく。




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― 新着の感想 ―
これはもう水族館の館長になってもらうしかねぇなぁ!? 平和を愛してそうな感じだし適材適所や
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