表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンおじさん  作者: 広路なゆる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/92

83.おじさん、援護する

 湖上のフィールド――

 フィールドの大半を円状の湖が占めている。

 湖の外周は陸地となっている。

 また、湖上にも大人一人(おとなひとり)が立てる程度の浮石が点々と配置されているが浮き沈みしており、居座ることは難しいようであった。

 プレイヤーらの初期配置は外周の陸地となっていた。


 湖の中心にはパーカーのポケットに手を突っ込んだジイニが佇んでいる。


「喜べ……俺が四魔帝最強のジイニだ……」


「え……?」


 シゲサトが驚いたように声を上げる。

 それはジサンにとっても、少し意外であった。

 魔帝との戦闘条件を見る限り、別の魔帝が最強位置にいるのかと思っていたからだ。


 その時、ポップアップが出現する。


[本戦闘は”逃げる”ことが可能です]


「まぁ、このように親切設計になっているわけだが……願わくばそうならないことを望む」


 湖の中央にいるジイニとはそれなりに距離が離れている。

 ジイニ自身も大声を上げているわけではなかったが、フィールド内は声が通りやすくなっているのか、ジサンらの耳にその宣言はしっかりと届いていた。


「それじゃあ行くぜ……」


 そうジイニが呟くとHPゲージが急速に充填される。


「「っ!?」」


[特性:共生]


 ジイニが戦闘態勢になるやいなや、ジイニの足元から巨大なモンスターが出現する。


「あ、あれは……イソギンチャク……!?」


 シゲサトがそう呟くように、その巨大なモンスターは青紫色の太い触手を大量に持ち、イソギンチャクのような姿をしていた。


「俺の相棒……アネモネだ」


 ジイニはそのように巨大なモンスターを紹介する。

 過去にも魔王:エスタが巨大な船を召喚していたことはあったが、ジサンにとって、モンスターが別のモンスターを使用するのは初めての体験であった。


[スキル:触手]


「っ!?」


 アネモネから伸びてくる触手が早速、ジサンらを襲う。湖中央にいるジイニらからはかなり離れているが、アネモネの触手の攻撃範囲は相当に広域に渡るようであった。


 ジサンらはひとまずその触手による攻撃を回避する。

 触手の発信元と距離があることから、攻撃の進路を予想する時間的猶予があり、この地点では避けることはそれ程難しくない。

 しかし……


(これ……どうやって奴らに近づくんだ……)


 ジイニとアネモネは湖の中央に陣取っている。つまり水上にいるわけで、ジサンやサラにとっては容易に近づくことができなかった。


「任せてください! こういうフィールドこそ俺の本領です!」


(お……?)


 シゲサトの頼もしい声が聞こえる。

 シゲサトはピククに跨り、湖中央に向かって、発進する。


(……なるほど、これがドラグーンの強みの一つか……)


 ドラグーンは飛行能力のあるドラゴンに乗り、戦うことができる上にボウガンによる遠距離攻撃も可能だ。

 そういう意味でフィールドの足場による影響をほぼ受けることなく、戦うことができた。

 どのような状況下においてもゲームオーバーとならないことが重要なリアル・ファンタジーにおいては非常に重要な強みであった。


「スキル:速射砲!!」


 湖中央に接近したシゲサトはジイニに向けて、連射攻撃を仕掛ける。


[スキル:パトリオット・テンタクル]


「っ……!」


 しかし、その攻撃はアネモネの触手により叩き落されてしまう。

 通常、ボスは回避行動を取ることがないが、ジイニはアネモネにより、攻撃を阻害してきた。


「有難う……アネモネ……」


「のわっ!」


 ジイニはアネモネへの感謝を告げながら、シゲサトに対し、水泡での攻撃を仕掛ける。


「ごめん……ピクク……」


 ジイニからの攻撃があることをやや油断していたのか、ピククがその攻撃を被弾してしまう。


「いえ、こんなものはどうってことありません。私も攻撃を仕掛けます……! スキル:インパクト・アイ!」


 ピククが魔眼スキルを発動する。

 確かにピククの得意とする視覚スキルであれば、触手に邪魔されることはない。

 インパクト・アイはミテイとの戦いでも使用していた視認した相手にダメージを与えることができるスキルであった。

 が、しかし……


[特性:契りの守護 により攻撃は阻害されました]


「なに……?」


 ジイニへのダメージは確認できず、ポップアップが出現する。

 一方で、ピククのスキルにより、アネモネのHPゲージは減少していた。


(これはつまり、イソギンチャクを倒さないとジイニへの攻撃はできないということか……だけど……)


「要するにまずは側近から倒せってことだね」


 シゲサトがこれまでの事象から、当面の指針を示す。


「フェアリー、シゲサトくんを援護してあげてくれ」


 ジサンはフェアリー・スライムにシゲサトの援護を支持する。


「きゅぅうううん」


[魔法:メガ:ヒール]


 フェアリー・スライムの回復魔法により、ピククがジイニから受けたダメージを回復する。


(……あとは)


[魔法:フルダウン]

[アネモネの全ステータスが1段階ダウン]


「オーナー……!」


「可能な限り、援護します」


 ジサンはせめてもの援護として、アネモネに対し、弱体化魔法を使用する。


「他人を援護している余裕はあるのかな……? 魔法:オーシャンズ・ファング……!」


(っ……!?)


 ジイニが魔法を宣言すると、数百はくだらない色彩豊かな魚群が出現する。

 魚群は湖内に散らばると、外周に陣取るジサンらに向かい進行する。


(ちょ……卑怯な……この色はどう見ても海水魚だろ……!)


 そして、まるで魚雷のように襲い掛かってくる。


「ふん……」


 が、しかし、魚群がジサンに到達する前にサラが黒い光弾により、魚群を蹴散らしていく。


「雑魚が……マスターに触れようとはおこがましい……」


 しかし、魚群も負けまいというように次々に湧いてくる。


(どうやら外周のメンバーも休ませてはくれないようだな……)


[スキル:触手]


 ジサンらが魚群と奮闘している間にも、湖中央ではシゲサト・ピククとジイニ・アネモネのペアが激戦を繰り広げている。


 アネモネの触手による攻撃が空中のシゲサトに襲い掛かる。

 対抗するように、ピククも光のオーラにより作り出した触手により応戦する。


「ナイス! ピクク!」


 触手がぶつかり合う轟音と水しぶきが発生し、その光景はさながら怪獣大戦のような迫力であった。


「スキル:龍雷砲……!」


 シゲサトもその様子をただ眺めているわけではない。

 強力な銃撃をアネモネに浴びせていく。

 巨体ゆえ当てることは難しくない。

 アネモネのHPは膨大ではるが、ヒットするたび着実にダメージを蓄積している。


「っ……」


 アネモネへの被ダメージに眉間にしわを寄せ、不快感を示すジイニは掌をシゲサトへと向ける。


「くらえ……!」


 ジイニの掌からは十数の蒼い光弾が五月雨に発射される。


「っ……!」


 が、光弾はシゲサトに到達する前に叩き落される。

 シゲサトがそのヘビィ・ガンで以って、対空迎撃したのであった。

 ドラグーンには特性:常時迎撃により全攻撃に迎撃効果が付与されていた。


「弾幕は弾幕を以って制する……だぜ」


「くっ……」


 シゲサトのちょっとした得意顔にジイニは唇を噛み締める。


「ふん……面白い……だが、こんなもんじゃねぇぞ」


「望むところだ……!」


 両ペアの激しい攻撃の応酬が繰り広げられる。



 ◇



[スキル:刺胞触手]


 アネモネの触手が黒紫のエフェクトをまとう。


「やばい……! 毒だ! 引いて、ピクク……!」


「了解……」


「スキル:撃滅貫通砲……!」


 シゲサトから放たれたレーザーのように残像を残す弾丸はアネモネからの触手を細切れにしながら直進し、そのままアネモネに突き刺さる。


「ギギィイイイイイイ」


 アネモネのHPは残り1/6程度まで減少していた。


「……よし」


「ふん……!」


 反撃とばかりにジイニが蒼い光弾を乱れ撃ちする。


「っ……! ピクク避けて……!」


「はい……! くぅ……!」


 ピククは回避行動を起こす。

 しかし、間に合わず、いくつかは被弾してしまう。


「っ……」


 アネモネのHPは残り僅か。

 あと一押しで、倒すことができるところまで来ていた。

 しかし、追い詰めているはずのシゲサトの表情からは、むしろ焦りの表情が読み取れる。


「どうした……? 得意の迎撃は休暇中か?」


「!? ま、まぁね……」


 ドラグーンにはデメリットがあった。

 ドラグーンに限った話ではない。

 火器を使用するクラスに共通する弱点である。

 それは弾切れである。


 通常は起こり得ないような軽微なデメリットであるが、魔帝という未知の領域の激しく、そして高頻度の弾幕攻撃により想像以上に弾数を消費させられてしまっていたのである。

 そしてこの弱点は一度、発生すると致命的な弱点になってしまう。


「まさかもう終わりか……?」


「ははは……まさかね……そんなまさか……」


 シゲサトは強がって見せるが、実は先ほど使用した撃滅貫通砲により、彼の残弾は”1”となっていた。


「はは……! そうだよな……! だったら遠慮なく行くぜ! スキル:スプラッシュ・ディフュージョン!」


「くっ……!」


 ジイニが放つ蒼い光弾の弾幕がシゲサトとピククを襲う。

 シゲサトは迎撃を行うことができず、一発二発とシゲサト、ピククに光弾が被弾していき、共にHPが1/4以下になってしまう。


「し、シゲサト……! あれは……!?」


 この状況に溜まらず、ピククがシゲサトに何かを確認する。


「わ、分かってる……!」


 チャンスはなくはない。

 しかし、この一発を外したら確実にこの対面は負けてしまう……確実に当てなくちゃ……そんなプレッシャーがシゲサトを襲う。


[スキル:刺胞触手]


「やばっ……!」


 アネモネによる毒の触手が再び襲い掛かるかと思われたその時であった。


[魔法:スロウ]

[アネモネは低速化した]


「お、オーナー……!」


「シゲサト!! 今しかない!」


 ピククがシゲサトを鼓舞するように叫ぶ。


「分かった……! やろう……!」


 そう決意を固めるとシゲサトはピククの背中から高く飛び跳ねる。


「何だ……? とち狂ったか!?」


 下は水中である。一度落ちれば、地獄に落ちる様なもの。故にジイニにはその行動が理解できなかった。


 その間、シゲサトは空中でヘビィ・ガンを構える。


「これが俺の最後の一発……!」


 シゲサトが叫ぶと、ピククが姿を消す。と同時に、まるで装填されたかのようにシゲサトの持つヘビィ・ガンが強い光を放つ。


「行くぜ! スキル:決戦龍撃砲 だぁああ!」


「やばい……! アネモネ……!」


 ジイニはそのように叫ぶがアネモネはすでに攻撃スキルを使用する体勢に入り、その上、低速化状態となっており、次の行動に変更することはできない。


「うらぁあああああああ!!」


 シゲサトの銃口からは眩い光のドラゴンが放たれ、その全てがアネモネの全身を駆け抜けるように突き刺さる。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
【作者新作】

<新作のリンク>

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ