82.おじさん、ダメ元
「あれ? でも肝心の魔帝:ジイニとはどうやって戦うんでしょうね?」
シゲサトは首を傾げる。
「簡単だ、お前らが探しているジイニはここにいる」
後ろから、声が聞こえた。
(……もしやと思ったが、やはりか……)
振り返ると、そこには釣竿を貸してくれたオレンジパーカーの青年がいた。そして、青年には先程までなかった名称が表示されていた。
その名称は――“ジイニ”。
挑戦条件を満たしたことでボスとしてアクティベートしたようだ。
「ど、どうしましょう……」
シゲサトは眉を八の字にしてジサンに尋ねる。
ジサンもそうであるが、困ったことに青年への情が多少なりとも湧いてしまっていたのだ。
ジイニは公開ボスだ。故にテイムもできない。
倒してしまえば消滅して終わりだ。その後、どうなるのかは分からない。
「情など不要だ。俺は早く自身の存在意義を果たしたかっただけであって、別にお前らのためじゃない」
などと、ジイニは言う。
「そんなに心配せずとも大丈夫だと思いますが……」
サラがそんなことを言う。
「所詮はデータですよ」
サラのその発言は逆効果であり、ジサンは珍しく反感を持つ。
「サラ、言わせるな」
「え……?」
「俺はお前が言うそのデータにデータ以上の何かを抱いてしまっているのはお前が一番よく知っていると思っていたのだが……」
「っっっ……!」
ジサンは熱くなったせいか、いつもより幾分長い言葉を発する。
「マスター……! ごめんなさい……今の発言は取り消させてくださいっ!」
「あ、いや、俺の方こそすまん……」
「ど、どうします……? オーナー……ごめんなさい……俺は……実はもう……! ……そんなにジイニを倒さなくてもいいんです」
シゲサトは何やら申し訳なさそうにそんなことを言う。
「ま、待て……! 俺はどうなる……!? お前らが挑まぬなら、俺は何のために生み出されたのだ!?」
「……」
(……さて、どうしたものか……ダメ元で聞いてみるか……)
[ジサン:公開ボスを消滅させずに倒す方法はあるか?]
[ルィ:2000万カネの情報だよ]
(……2000万カネか。それなりにするな……)
[ルィ:……なんですが、ラッキーですね! 現在、友達割引セール実施中! 今ならたったの2カネ!]
(なんという極端過ぎる割引……!)
◇
盲点であった。
ルィから提供された情報は……
[ルィ:テイム条件を満たせばいいだけだよ]
テイム条件を満たすとは、要するに戦闘の開始から終了までテイム武器を装備した状態でテイム武器により止めを刺すということだ。
言われてみればテイム選択で“いいえ”を選択したモンスターは消滅せずに去っていくようなエフェクトになる。
公開ボスは強制的に、この“いいえ”を選択した状態と同じになるという原理のようだ。
(さて……どうするか……)
ジサンは考える。ジイニを消滅させないということは理論上、クリア可能だ。
しかし、それはリスクを伴う。魔帝という未知の領域の敵に対し、テイム武器で挑むのはそれなりにリスクが高い。
もちろん、こちらには魔帝より格上の大魔王がいるが、プレイヤーとボスでは、仕様がかなり異なることを考えると油断はできない。
自身には死亡フラグ破損なる現象があり、これも有利な要素であることは間違いないが、検証が不十分であり、安全を保証するものとは言い難い。
「オーナー、やりましょう!」
「おっ?」
「きっと俺達なら大丈夫です!」




