77.おじさん、別れる
「メンバーとは、現地集合することになったので、私はここから北上してホクリクの方へ向かいます」
「分かりました……!」
龍人族の西の森からのバスはいつの間にか謎の森を抜け、いつものリアル・ファンタジーの世界に戻っていた。
出た場所はちょうどグンマの辺りであった。
そこで、数奇の巡りあわせで、龍人の森での旅を共にしたミズカとは一度、別れることとなった。
「ジサンさん、シゲサトさん、サラちゃん、短い間でしたが、お世話になりました」
「ミズカさん、ミテイさん、こちらこそ有難うございました! また、機会があればご一緒しましょう!」
「そうですね! あっ、そういえば……ジサンさん!」
「はいっ!?」
急にミズカからご指名され、油断していたジサンは少々、驚く。
「ジサンさんと初めて会ったのは、カスカベ外郭地下ダンジョンの入口でしたよね?」
「えぇ、そうですね」
「もしかして攻略されているんですか?」
「えーと……まぁ、そうですね。あそこには色々と縁みたいのがありましてね……」
「へぇ~、なるほどです。実は我々も最近、攻略を始めまして……」
「そうなんですね」
(あんな難易度だけ無駄に高くて、何もないところを攻略するなんて、変わってるな……)
「ちなみに差し支えなければジサンさんは今、何層まで……?」
ミズカは何とはなしに尋ねる。
「えっ? えーと、九〇……」
「九〇っ!?」
「あ、はい……」
(九五……)
「た、た、た、大変なことだよ……み、ミテイさん……えっ!? 切り替えていけ? そんなぁ……!」
ミズカは狼狽えているのか、人目をはばからず、思いっきり脳内の住人と会話を始める。
「はっ! す、すみません……私としたことが……」
「い、いえ……」
「そ、それでは、またどこかで会いましょう! カスカベ外郭地下ダンジョンはどちらが勝っても恨みっこなしですよ!」
「えっ、あ、はい……」
(あそこに勝ち負けなんかあるのか……? まぁ、いいか……)
そうして、ジサンらはレジェンドパーティ”ウォーター・キャット”の筆頭メンバー、ミズカ&ミテイと別れた。
◇
(ほっ……)
ジサンらは西へと向かうバスに乗り、一息つく。
彼らは魔帝:ジイニに挑むべく、ニホン三大湖ダンジョンのテイムミッションを攻略中であり、最後の目的地ビワコへと向かう最中であった。
ジサンは龍人族の災厄イベントで得られたものを確認する。
まずは魔王:ネネの討伐報酬で得られた”珠玉槌”である。
”珠玉槌”は鍛冶スキル、特性の強化が可能な魔装である。
現状、鍛冶スキルとは無縁なジサンには全く使い道がない。
更に魔王:ネネの討伐とディザスター・ドラゴン討伐支援により得られた経験値により、レベルが2、クラスレベルが1上昇していた。
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■ジサン
レベル:152
クラス:アングラ・ナイト
クラスレベル: 50
HP:3620 MP:612
AT:1717 AG:2370
魔法:フルダウン、スロウ
スキル:魔刃斬、地空裂、陰剣、地滅、鼠花火、自己全治癒
特性:地下帰還、巣穴籠り、魔物使役、魔物交配、状態異常耐性
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特記すべきはアングラ・ナイトクラスレベル50で習得したスキル”鼠花火”である。
鼠花火の効果は”一定時間スキル連発可能。以降、戦闘中、魔法やスキルが使えなくなる。”というものであった。ジサンはまた癖の強いスキルを習得してしまったなぁなどと考えていた。
(あ、そう言えば……)
ジサンはメッセージを打ち始める。
[ジサン:稼働してるか?]
[ルィ:絶賛営業中やい!]
ジサンはお金を払えばゲームの情報を提供してくれるシェルフのルィを利用する。
サロマコで再会を果たしたことで友好度が上がったことで……
[ルィ:特別に1パーセントのポイント付きだよ!]
という特典が得られた。
(友好度が上がったという割にあまり恩恵がないな……ポイント渋いし……しかし……)
ついついリピートしてしまい、しばしば利用している絶好の鴨ジサンであった。
[ルィ:それで今日は何だい?]
[ジサン:カスカベ外郭地下ダンジョンをずっと潜っていくと何があるんだ?]
ミズカとの先ほどの会話により、ちょっと気になってしまったのであった。
[ルィ:それは1000兆カネだよ]
(……は?)
[ジサン:バグってるのか?]




