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ダンジョンおじさん  作者: 広路なゆる


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64/121

64.おじさん、止められる

(あれ……)


「……」


 シゲサトと合流し、ビワコへ向かうため、牧場からトウキョウ方面へバスを乗り継ぎ、西へ向かうバス停に向かうため小さなダンジョンを突っ切ろうとしていた時のことである。進行方向にどこか見覚えのある二人が立っていた。


 その二人は町中でも目立つ赤い装備に身を包んだ男女であった。

 街中で赤の装備をしているのは自治部隊”P・Ower”の特徴だ。


「よぉ、シゲサト」


 二人のうちの男、短髪で顔が整った気難しそうな青年が片手を上げる。


 長めの髪で眼鏡を掛けた女性はその男をじっと見ている。


「や、やぁ、グロウくん」


 シゲサトは少々歯切れ悪く返事する。


 それはカスミガウラ周辺の斡旋所で遭遇したシゲサトと因縁ありげなP・Owerのメンバー……グロウとアンであった。


「ど、どうしたの? こんなところで……」


 シゲサトは困惑気味に質問を投げかける。


「お前を守るために来た」


 真剣な顔つきで言うグロウにシゲサトは反射的に応える。


「あ、いえ、間に合ってます」


「お前を守るために来た」


「う、うん……それはさっき聞いたよ……」


 グロウは聞き間違いの可能性を考慮し、もう一度、言ったのだろうが、流石に聞き間違いではないことを認識したのか渋い顔をしている。


「でもグロウくん、よくここがわかったね……」


「……まぁな……それより、お前こそどうやってホッカイドウから一気にカントウまで戻ってきたんだ」


「っ!?」


 シゲサトは驚く表情を見せる。


(……シゲサトくんの居場所が察知されてる?)


 ジサンは少々、不気味に思う。


「……それは企業秘密だよ」


 シゲサトも困惑しつつも、牧場に関する情報は伏せる。


「そうか……ところでシゲサト……これからビワコへ向かうのだろう?」


「うん、まぁ、そうだけど……」


「先ほど、お前を守ると言ったが、つまりはビワコへ行くのを阻止しに来た」


 グロウは抽象的な表現により思いを十分に伝えられなかったと判断したのか具体的な手段の提示により訴えかける手法に切り替えたようだ。


「できれば好きにさせて欲しいのだけど……」


 だが、シゲサトにはあまり響いていないようだ。


「どうしてわかってくれないんだ?」


「え、えーと……」


 シゲサトは困り顔を見せる。


(……)


 傍から見ても全く理解できないなぁとジサンは首をかしげる。


「ちなみに何でビワコへ行くのを阻止するのかな……?」


 なるほど、それが分からないから意味が分からないのだなとジサンは頷く。


「なぜって、シゲサト……お前、自分が狙われているのが分かっていないのか?」


「ん……?」


「とんでもなく鈍感な奴だ……お前……魔王を倒しただろ? 最近になって魔王を倒した奴らがどうなっているかは流石に知っているだろ?」


「うん、まぁ……」


「実際にサロマコで謎の二人組に狙われたんだろ?」


「っ……!? 詳しいんだね……」


「自治部隊に入っていればそんな情報も入って来るさ……」


 グロウはいくらか得意顔だ。


「……ヒロさんが共有したのかな……まぁ、善意なんだろうけど……」


 シゲサトは少し顔を曇らせる。


「ちなみにどうやって俺達がここにいるってわかったのかな?」


「フレンドの居場所が感知できる魔具がある」


「なるほど……」


「本題に戻るが、ビワコに行くのは止めろ」


「……っ!」


 グロウはやや強い口調で言う。


「サロマコで狙われたということは、お前がビワコに行くということは間違いなく予期されている。以前より更に強い刺客に狙われるかもしれない」


「……そ、そうかもしれないけど」


「シゲサトが狙っているのは仙女の釣竿だろ? お前にとっては欲しい物なのかもしれないが、無くてはならない道具ではないはずだ……それよりもお前の命の方がよっぽど大切だ……!」


「……っ!」


 シゲサトは口籠る。


(…………)


 独りよがりな論理にも思えたが、今のジサンには彼の言い分も多少なりとも理解できた。


「いい加減に目を覚ませ! モンスターはリポップするが、お前の命は一度きりだ……!」


「ちょっ! そ、それは聞き捨てならないよ……!」


 シゲサトは抵抗を示す。


「まぁ、いいよ! グロウくんがいくら止めたって俺は行くから!」


「そうか……ならば力尽くで止めるしかないな」


 グロウはそう言うと、ゆっくりと武器を取り出す。


「えっ……?」


 シゲサトはそこまでされるとは思っていなかったのか動揺していた。


「決闘は相手の合意の上で……ですよ!」


「「!?」」


(……何だ?)


 後方から聞こえた第三者である女性の声がグロウの行動を停止させる。


 自然とシゲサトやグロウ、そしてジサンやサラもそちらの方向を見る。


(あ……)


 肩より少し長いくらいのストレートなミディアムに明るめの髪色の可愛らしい女性。白をベースに水色の模様があしらわれた騎士風の格好をしている。ジサンはその人に見覚えがあった。


(あれはカスカベ外郭地下ダンジョンから出てきた時にも遭遇した……)


 それは初代に配置された四魔王のうち、第一魔王、第三魔王を討伐したレジェンドパーティであるウォーター・キャットの魔女:ミズカ、その人であった。

 ミズカは魔女のクラスで名が知れているが、装備自体は魔法職というよりは戦闘職の格好をしていた。


「な、何だ、君……こちらの事情に口を……」


「さっきも言いましたけど、決闘は両者の合意の上でするのがいいと思います」


 ミズカはぴしゃりと言う。


「そ、それは……」


「ぐ、グロウ……あの人……」


「ん? 何だ? っ……!?」


 アンが注意を促したことで、グロウも相手が何者であるか気付いたようであった。魔王討伐者は基本的に顔が公開されている。


「どうしてもって言うなら、私もそちらの困っている方々に加勢しようかと思いますが……」


「っ……くっ……」



 ◇



「有難うございました!」


 小さなダンジョンを抜け、西へと向かうバス亭の近くで、シゲサトがウォーター・キャットのミズカにお礼を伝える。


「いやー、まさかシゲサトさんだったなんて……! あんなのは不要でしたね……お恥ずかしい……」


 ミズカは言葉の通り、恥ずかしそうに頬を染める。


「そ、そんなことないです! ミズカさん、格好よかったです!」


「そ、そうかな……それならよかったです。あっ、すみません、もう少しお話したいところですが、私、ちょっと遅刻中の身にて、急いでいますので、これにて……」


「承知しました! 急いでいるところ、本当に有難うございました! それでは、俺達はこっちなので……」


 シゲサトは感謝を告げ、バス停へと向かおうとする。


「あっ、私もそっちです……」


「え……」



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