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ダンジョンおじさん  作者: 広路なゆる


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61.おじさん、ばったり

「うぅう……ひどい……」


 寒い……


 体よりも心が寒かった。


 すっかり辺りも暗くなり、外は吹雪のトレジャーボックスの中、少女は一人、咽び泣く。


 少女はエルフとシルフ(風の妖精)のハーフ。高貴なるシェルフでルィという名であった。

 少女はかつてホッカイドウの地でジサンらと会い、その後、金銭と引き換えに攻略に役立つ情報をジサンらにもたらしたのであった。


 そんな少女は思う。


 こっちに来てから、こんな仕事ばかり……


「っ!?」


 と、外から足音が聞こえてくる。


「っっ……!」


 お仕事モードに切り替え、眠った振りをする。


 ガコンっ! と自身が身を隠すトレジャーボックスを開く音がする。

 ルィは薄目で解放された蓋の方を確認する。


「へぇ~、こんなのがいるニャか」


「……?」


 トレジャーボックスを開けた人物は獣人のように頭頂部付近に耳が生えた小柄な少女であった。


「あなたは……?」


 何となくプレイヤーのようには思えず、箱の中から体を起こしたルィは獣人のような少女に尋ねる。


「名乗るほどの者でもニャいのですが、興味本位で、ちょっと君をキルしてみたいのニャ」


「えっ……!?」


 唐突な殺意にルィは心臓付近に激しいざわつきを覚える。


「おい……お前……」


「っ……!?」


 ルィは再び驚く。また別の声が目の前の獣人少女の後方から聞こえてきたのである。


「ニャ?」


 獣人少女もその声の方に顔を向ける。


 そこにはやはりルィが知らない青年がいた。その青年は鮮やかな橙色地(オレンジ)に白い(まだら)模様のパーカーを着ており、夜の雪上には似つかわしくない格好をしていた。その青年が獣人少女に何かを尋ねる。


「徘徊型か? ランクは?」


「大魔王ニャ……」


「……そうか」


 獣人少女の発言に青年は眉をピクリと動かすも狼狽えはしない。


「……君は何ニャ……?」


「ここは俺のテリトリーの一つだ。荒らしてくれるなよ……」


「テリトリー? ははーん、ニャるほど……ひょっとして君は……」


「……」


「うーん、君をキルしてみるというのも面白そうではあるけど……」


「自由度設定が高過ぎだ……まぁ、それも一興ではあるのかもしれないが本懐ではない」


「じゃあ、どうするニャ? 君にその気が無くともウチは(ニャ)る気満々ニャ」


「血の気の多い奴だ……だが、言っただろ……? ここは俺のテリトリー……」


「ニャ?」


「相手が規格外なら少々、アンフェアな権限も行使できる」


「あっ、ずるいニャ! やめるニャ!」


「少し反省してろ。三日間禁固だ」


「ニャーーーー!」



 ◇



「マスター……あんな奴、放っておいていいのに……」


「……そうもいかんだろ……」


 ジサンはサラと共に、氷結湖上を歩いていた。日中発見したトレジャーボックスの元に向かうためだ。


「ん?」


 しかし、現場に近づくと夜にも関わらず、なぜか辺りが不思議な発光エフェクトに包まれていた。


「何だ!?」


 ジサンは慌ててエフェクトの方に駆け寄る。


「ん?」


「……」


 そこにはジサンが見たことのない鮮やかな橙色地に白い斑模様のアバンギャルドなパーカーを着た中性的な青年が背中を向けて立っていた。


「……あ、あなたは……?」


 ジサンは思わず、その少年に尋ねると、パーカーの青年は背中を向けたまま軽く振り返る。


「…………いずれ分かる。だから、諦めてくれるなよ」


「え……?」


 それだけ告げるとパーカーの青年は足早にその場を立ち去ってしまった。


(……なんだったんだ?)


「うぅう……もうこんな仕事辞めたい……」


「…………」


「はっ!? プレイヤー!! ぱんぱかぱーん!!」


「「…………」」


 ジサンは宝箱から飛び出てきたシェルフの少女と目が合い、しばしの沈黙が流れる。


「なななな何で閉めたしっ!」


「す、すまん……つい……」


「つい!? そのせいでアタイは大変な目にあいかけたんだぞ!」


「それはすまなかったな……で、何でこんなところに?」


「何でって、この辺はアタイの庭みたいなもんだ!」


「へぇ……」


(確かに初めてこいつに遭った時もホッカイドウだったな。ずっとあの森のダンジョンに居るものかと思っていたが、そういうわけでもないのか……)


「……」


(……ところで何だ、この雪の塊は……昼間はこんなのあったか?)


「マスター、何ですかね? これ……」


 サラもジサンが気になっていたものについて気付いたようであった。


「さぁ……」


 ルィがいたトレジャーボックスの脇にはまるで中に何かがいるかのように、不自然に雪が積み上げられた”かまくら”のようなものがあった。


 なにはともあれ、二回目の発見により、ルィとの友好度が上昇した…………のか?



 ◇



「さて……どうするかニャ……奴は三日間禁固と言ってたかニャ?」


 オレンジパーカーの青年が作り出した空間に閉じこめられた獣人の少女は呟く。


 そこは可動範囲が一辺、二メートル程度の狭い立方体であり、何もない空間であった。


「ん~~……でもこの狭さ……何だか…………落ち着くニャ……」


 獣人の少女は丸くなる。


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