60.緑のおじさん、詫びる
「どういうつもりですか!? ヒロさん!」
サロマコ周辺の宿にて、ターゲットに返り討ちにされたウルトマとパンマは不平を漏らす。
ウルトマは計画とは真逆の行動を取り、ターゲットを狙わない……どころか自身に攻撃を加えてきた男を問い詰める。
「いやいや、悪かったって」
ヒロは頭を掻きながらそんなことを言う。
一方、ネコマルは興味なさそうに持ち込みの炬燵でみかんを食べている。
「ヒロさんとネコさんが加勢してくれれば4対3で数的優位……いかに相手があのシゲサトと言えど確実に仕留められたはずです!」
「そうかもねぇ……」
「そうかもねぇ……って……!」
とぼけるような態度のヒロにウルトマは苛立ちを向ける。
「まぁまぁ、そんなにカッカしないで……でさ、君、誰に倒されたんだっけ? そのターゲットのシゲサトだかだっけ?」
「えっ?」
ウルトマは不意にそんなことを言われ、ふと当時のことを想起する。
そして、思う。そう言えば、俺は誰に倒されたのだろう?
シゲサトではない。ソロで行動していると噂されていたシゲサトとなぜか一緒にいた……謎のおじさんだ。
プレイヤー名すらわからない。
「そ、それは……」
ウルトマは、その事実を突きつけられ、自身を不甲斐なく思う。
「いや、ウルトマくん、責めてはいないよ」
「え?」
ヒロの想定外の反応にウルトマは虚を突かれたような表情を見せる。
と、そこへ通話リクエストが来る。
「ん……?」
「ウサギさんからです」
「つなげろ……」
「はい」
エクセレント・プレイスにはリーダーは存在しない。しかし、中心となる人物が二名いる。それが、ヒロ……そして、今の通話リクエストの呼び出し元である”ウサギ”であった。
エクセレント・プレイスの構成員は大きく分けて二つに分類される。
一つはヒロのように自治部隊エクセレント・プレイスの表の顔も担っているオープンメンバー。もう一つはシャドウメンバーと呼ばれ、その名も世間では、一切知られていない暗殺特化のメンバーである。ウルトマやパンマもシャドウメンバーに分類される。
そして、ウサギはそのシャドウメンバーの中でも中心人物であった。
[やっほ~~、ヒロさん! あれ~? シゲサトちゃんがご存命みたいだけど、どうしたんですかーー?]
「訳あって、延期した……」
[へぇ~~、君がターゲットを見逃すなんて珍しいですね]
「あぁ、途中でそれよりも興味深いものを発見した」
[興味深いもの!? なるほど~、それは是非とも教えていただきたいですね~~]
「匿名希望のアングラ・ナイト……」
[っ!? 見つけたのですか?]
「あぁ……恐らくな……」
[なるほどなるほど……それは確かに興味深いですね~~……情報は貰えたりするのかな~?]
「勿論、提供する」
[……ってことは、僕が狙っても?]
「好きにしろ……」
[太っ腹ですね~~]
「そうか……?」
[ふふ……おかげで、退屈しないで済みそうです。アングラ・ナイト……その人なら、僕をキルしてくれるかな……]
「……さてどうだろうな……」
[それじゃ、後で詳細な情報送ってくださいな!]
「わかった」
そこで通話は切れる。
「まさか、あの男が……!? 本当に……?」
ウルトマがヒロに確認する。
「さぁな……単なる勘だが……」
「っ!?」
「とりあえず奴らが次に向かうのは恐らくビワコだろう……そこへ先回りするぞ」
「了解です……ってあれ? ネコさんは?」
「ん? さっきまでそこに……」
「いないですね……」
「……ったく、あの気まぐれ猫は……とりあえずお前らは先に行ってろ」
「わかりました、行くぞ、パンマ」
「ういっ! って、あっ、でも私の顔、見られちゃいましたね」
パンマは能天気な様子でそんなことを言う。
「あー、確かにそうだな……となると、新しい着ぐるみに住み替えるしかなさそうだな」
普通の人間の姿をしているパンマに対し、ウルトマが奇妙なことを言う。
「あー、そうだよねー、仕方ないなー、この顔、結構、気に入ってたんだけどなー」
「しゃーないだろ。そう思ったら今度からマスクでもしとけ」
「えー、どうしよっかなー、それじゃーえーと……このヒーラーのズケって人にしよっかな。うん! 実はヒーラー一回やってみたかったんだよねー」
そう言うと、パンマは背中の”皮膚に”付いていたファスナーを降ろす。




