【番外編】恐竜を求めて4
「な、なんだこの巨大な鳥は……?」
ジサンは羽毛に包まれた巨大な二足歩行の生物を見てつぶやく。
「なにってティラノサウルスですよ」
「な、なんだと……っ!?」
サラの冷静な答えにジサンは動揺する。
(俺の知ってるティラノサウルスはもっとこう恐竜味の強い……オオトカゲだったはず……)
「以前も少し話しましたが、最近の研究では恐竜はより鳥に近い姿をしていたんじゃないかって言われてるみたいですね。なので、姿の予想図が鳥に寄って来てるというか……」
「そ、そうなんだな……」
「で、でも……あくまでも予想図ですから。本当の姿は結局のところわからないんですよ」
明らかに落胆しているジサンの姿を見て、サラがフォローする。
「ほ……」
「ちなみに世界一美しい恐竜化石と言われるボレアロペルタってご存知ですか?」
「い、いや……知らない」
「その化石を見ると、割と元々、想像していた姿に近いみたいなんで、希望はあるかもしれません! 一度、観てみるといいかもしれません」
「へぇ……」
(サラは詳しいなぁ……)
「ねぇねぇ」
(……?)
「ねぇねぇ、おじさん」
「え……?」
ジサンは自分が声を掛けられているのに気づき、振り返る。
すると恐竜の帽子を被った眼鏡の少年がいた。
「ねぇねぇ、おじさん、ヴェロキラプトルとステゴサウルスどっちが好き?」
「はい……?」
「だから、おじさんはヴェロキラプトルとステゴサウルスどっちが好き?」
「え、えーと……ヴェロキラプトルかな……」
「じゃあ、ヴェロキラプトルとプテラノドンは?」
(な、なんだろこれ……)
「え? ヴぇ、ヴェロキラプトルかな……」
「じゃあ、ヴェロキラプトルとブラキオサウルスは?」
「ぶ、ブラキオ?」
「じゃあ、ブラキオサウルスとパキケファロサウルスは?」
(勝ち抜き方式か……!)
「え、えーと、パキケファロサウルス……」
「じゃあ、パキケファロサウルスとアロサウルスは?」
「アロサウルスかな……」
× アロサウルス VS アンキロサウルス ○
○ アンキロサウルス VS ギガノトサウルス ×
× アンキロサウルス VS トリケラトプス ○
× トリケラトプス VS スピノサウルス ○
× スピノサウルス VS モササウルス ○
「じゃあ、モササウルスとティラノサウルスは?」
「モササウルス」
「ふーん、おじさんはモササウルスが好きなんだね」
「え、うん……」
(……終わったのかな?)
「…………最後まで質問に答えてくれたのはおじさんが初めてだよ、変な人だね」
(えっ……それ君が言っちゃう?)
「……でも、楽しかったよ……ありがとう、これあげる」
「え?」
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■魔具:モサチケット
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「ダンジョンで使ってみてね……」
「え、え?」
ジサンが驚いていると、いつの間にか少年は消えていた。
(……何だったんだ? ゲームのイベントだったのかな……)
「ま、マスターはモササウルスがお好きなんですか?」
「え、まぁ、どうだろ。勝ち抜き方式で応えてたら確かにそうなったね……水族館に……というのが頭にあったのかも」
「へぇー……って、え?」
「ん……? どうした? サラ?」
「い、いえ……」
「……?」
サラはなにかに少し驚いたような仕草を見せたが、何も言わなかった。
実はモササウルスは分類的には恐竜ではなく海生爬虫類なのである。
知らぬが仏。
◇
翌日、ダンジョンに行ってモサチケットを使ったら、モサダイナが現れたのでテイムした。
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■モサダイナ ランクP
レベル:80
HP:2367 MP:0
AT:720 AG:252
魔法:なし
スキル:捕食、遊泳
特性:巨体、海大好き
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ちなみにモサダイナ以外にも恐竜モンスターはいたが、ウエノ同様、最下層でもランクKやLがほとんどであった。
ジサンやサラは忘れがちであるが、一般的なダンジョンに出現するモンスターのレベルはそれくらいなのである。
◇
「ジイニ……こいつを展示したいんだが……」
ジサンは牧場へ戻り、嬉々として、水族館の館長であるジイニにモサダイナを見せる。
「いや、こんなでかい奴、展示できる水槽がねえよ」
「…………」
もっと水族館を大きくしようと誓うジサンであった。




