46.おじさん、牧場に戻る
[ジサン:アクアリウムを設置したいのだができるか?]
ジサンは牧場前のフロアに着くと、すぐにダガネルにメッセージを送る。彼は神出鬼没なので、自分から会いに行くことは難しい。
[ダガネル:あら? 帰っていたのですね。アクアリウムの設置、もちろん可能です。海洋エリア付近に設置しましょうか]
[ジサン:頼む]
[ダガネル:OKです。すぐに設置します]
[ダガネルがアクアリウムC委譲の承認を求めています。承認しますか?]
[はい]
◇
「おぉ……!」
ジサンは思わず感嘆の声をあげる。
「すごいですね! マスター!」
「おぅ……」
(……想像以上にしっかりした設備だ)
海洋エリア付近には、まるで水族館のような建造物が出来上がっていた。
無骨な巨大水槽一つと想像していたジサンは思わぬ結果に内心大喜びする。
「中に入ってみますか?」
「お? おぉ……!」
どこからともなく現れたダガネルに誘われ、中に入ることにする。
(うお……!)
「うわぁあ! すごいですね! マスター!」
水族館内部には数種類の大型の水槽が陳列されていた。
水族館の入口付近には小型の生体をしっかりと観察できそうな中型(といっても十分大きい)の水槽。
奥に進めば、水族館の主役となりそうな巨大な水槽。
それらは非常に期待感を膨らませる。だが……
「でも何もいないですね、マスター」
「お、おぅ……」
サラの言う通り、水槽は空っぽ。今のままではただの貯水タンクである。
「ふふ、それはこれからの楽しみじゃないですか? 今いる水生モンスターもいくつか入れることができると思いますが……」
「なるほど……」
「アクアリウムの副次効果として、水生モンスターであればアクアリウムに収容可能な範囲でモンスターBOXの五〇〇上限の枠を超えて、テイムすることができますよ」
(なんと……! 尚更、〝アレ〟を入手しなくてはならないな……)
ジサンの中で、何となく欲しいと思っていたものが、かなり欲しいへと昇華する。
「あっ、ちなみにですが、これは珍しいCタイプですね」
「ん……?」
「ほら、アクアリウム〝C〟って書いてあるじゃないですか?」
「確かに……」
(Cとは何なのか……多少、気になってはいたが……)
「どういう効果があるんだ?」
「どうやらこのアクアリウム……いや、水族館はカスタマイズ可能なCタイプのようです」
(……カスタマイズ可能……)
「特徴としては、その名の通り、通常のアクアリウムに比べて、自身での拡張性が高いです。水槽の位置を変更したり、施設そのものを自分で開発したりすることができます。ただし、デメリットとして、維持費が掛かります」
「維持費……? どれくらいだ……?」
「拡張状況により変動もしますが、初期状態では、一か月でだいたい五〇〇万カネです」
「いっ、五〇〇万カネ!? そ、そんなにか……!?」
「そんなにです。ただ、慌てないでください。一方でもう一つ、大きな特徴がありまして……」
「なんだ?」
「水族館を一般向けに公開することができます!」
「えっ……?」
「だから、この水族館を一般のプレイヤー向けに公開することができるんですよ! もちろん、有料にすることもできるというわけで、そうすることで維持費をペイ……いや、うまくいけばリターンも期待できるわけです!」
「な、なるほど…………いや待て、公開するってことはこの牧場に人が来るのか?」
「いえ、入口は別の場所にすることができます。入口は別の場所で、一般客はそこからこの水族館にワープして鑑賞することができます。一般客は水族館の外に出ることはできないので、牧場内に一般客が入ることはできません。一方で、管理側は実際の設置位置……つまり、牧場から入ることができますが、入口から出ることはできません」
「そういうことか……」
(新たにワープが可能になるわけではないのだな……)
「入口はどこでもというわけではなく、いくつかの候補地から選ぶことになりますが、今のところ、アクアリウムCを所持しているのはオーナーだけなので、好きなところを選べるようです。カントウだと、カサイ、イケブクロ、シナガワ、カワサキなどですね。選びたいならお早めが良いかと」
「そうか……」
(……しかし)
ジサンは二つ返事ができなかった。
一般客に公開するということは、それは即ち、世間の人との交流が増える可能性が高まるということを意味する。
世間との関わりが苦手なことから過去に安楽死を選択するまでに追い込まれていたジサンはその点において少なくはない不安を覚えたのであった。
(しかし昔なら信じられないが……五〇〇万なら、カスカベ外郭地下ダンジョンの深階層でしばらく生活するか、強めのボスを倒せば払えないことはない……)
「オーナーいかがしますか?」
無意識に少々、深刻な表情になっていたジサンの顔を窺うようにダガネルが尋ねる。
(……)
「け、検討しておく……」
「そうですか……わかりました」
◇
水族館のことが少し引っ掛かりながらも、ジサンは配合施設へと向かった。
実のところ向かわなくてもメニュー上で実施可能なのだが、せっかく現地に来ているので施設内で配合を行うことにする。
(……まずは……)
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■フェアリー・スライム ランクO〝+2〟
レベル:70
HP:1237 MP:496
AT:530 AG:723
魔法:エレメント、メガ・ヒール
スキル:まとわりつく、硬化タックル、妖精の歌
特性:液状
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カスカベ外郭地下ダンジョンで入手したPランク、Qランクモンスターを素体として、フェアリー・スライムの限突配合を行う。
フェアリー・スライムはその緩い見た目とサイズ感からどんなシーンでも使いやすいという特徴により濃いメンバーの中で貴重な存在である。
優勢配合をした結果、想定外の姿になることを恐れ、ジサンはフェアリー・スライムに関しては姿を変えずに育てていくことにしたのである。
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ディクロ ランクR US
フレア ランクQ US (精霊)
シード ランクQ US (精霊)
デリケート・ドラゴン ランクO+2
フェアリー・スライム ランクO+2
ドミク ランクO US
US:ユニーク・シンボル
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現在、ジサンがわりと頻繁に使役するモンスター達である。
言ってしまえば〝お気に入り〟達である。
なお、ユニーク・シンボルは配合ができない代わりに、ランクにかかわらず元からレベル上限がないようだ。
そして本日のメイン・ディッシュ。
非ユニーク・シンボルのランクRをテイムした時から決めていた。
【優勢配合】
デリケート・ドラゴン(ランクO+2) × ベヒルス(ランクR)
配合不可メッセージは表示されない。




