45.おじさん、騒がれる
「それじゃあサラ……外に出るぞ」
「はい! マスター」
「特性:地下帰還」
想定通り、カスカベ地下外郭ダンジョンの入口前広場に出る。
ダンジョンに潜っている間に年を跨ぎ、季節は秋から冬に変わっていた。
冬のどこか薄く感じる空気と朝の日差しがジサンらを迎えてくれる。
相変わらずカスカベ地下外郭ダンジョンの入口前広場は人が多い。
と……
「わぁああああああ!」
「きゃああああああ!」
悲鳴……ではなく、歓声が上がる。
「!?」
(な、何事だ?)
歓声をあげる人々を見ると、入り口付近……つまりジサン達の方を見ている。
(えぇええ!?)
「ミズカぁああ!」
「ユウタさん、おかえりーー」
「キサちゃんこそ正義」
(……え?)
よく見ると、人々が見ているのジサン達……ではなく、ジサン達の隣にいた三名であった。
彼らは元祖の第三魔王、第一魔王を討伐したパーティ”ウォーター・キャット”であった。
「久しぶりの外、やっぱり気持ちいいね」
「熱烈な歓迎に感謝だぜ」
パーティの中の一人の女性と一人の男性がそんなことを呟いている。
一人は肩より少し長いくらいのストレートなミディアムに明るめの髪色の女性で、公開されている写真の通り、高水準の顔面偏差値をしていた。
ウォーター・キャット筆頭の魔女のミズカである。
(……でも格好が魔法職っぽくないな)
もう一人は……
(あれ……? この人ってユウタさんか……顔が全然違うが……)
まぁ、特殊な特性か魔具の類だろうとジサンは名推理……いや、迷推理する。
(兼任大変だな……挨拶くらいした方がいいだろうか……)
「あ……あの時の……」
(ん……?)
喧騒の中、三名の中の一人、白黒のフードを被った女の子がこちらに気付く。
「あっ……」
確か、彼女はカモガワオーシャンワールドで遭遇したヒール・ウィザードのキサであった。
「あ……あの時のお姉ちゃん、覚えていてくれたの?」
いつも割と尊大な態度のサラであるが、なぜかこの人には見た目相応の対応をする。
「シャチフレは忘れない」
「わーい、有難う! ところで何してるの?」
「……」
キサはすぐには答えない。
「あれ? キサが誰かに話し掛けるなんて珍しいな」
ユウタが割り込んでくる。
ジサンは軽く会釈をする。
「……?」
ユウタは不思議そうな顔をしつつも会釈を返す。
「えーとな、俺達はわけあってカスカベ外郭地下ダンジョン100階層を目指しているんだ」
「へぇー」
「ユウタ……そういうのは言わない方が……」
ジサンはツキハからもそうであるとは聞いていたが100階層を目指しているとは初耳であった。
(……100階に何か特別なものがあるのだろうか……)
「まぁまぁ、いいじゃん。減る物じゃないし」
「ユウタ……彼らはすごく強いかもしれない。下手したら減る」
「えぇ!?」
「ちょっとユウタ! ミテイさんもアホって言ってるよ!」
「す、すまねえ。ミテイの兄貴……!」
(……? なんだこいつら……だからミテイって誰だ? 幽霊か?)
「でも、なら、どうして出てきたんですかー?」
サラは更に突っ込む。
「え……それは魔帝の……」
「ユウタ!」
「あ、いや、何でもないですぜ」
(魔帝の…………報酬を狙ってる!? やはり彼らもアレを……!? となると、あまりうかうかしていられないな……)
勿論、両者が狙っている物は異なる。
◇
ウォーター・キャットの面々と離れ、人気の少ないところまで来る。
「さて、久々に戻るか。牧場に……」
「はーい」
ジサンは週一回の牧場帰還のワープ権限を行使する。




