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ダンジョンおじさん  作者: 広路なゆる


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44/119

44.おじさん、福引をする

 とある夜――ジサンらが九五階層に到達するよりも前の出来事――

 トウキョウはユウラクチョウの一角にて。


「貴方の持つ〝魔剣レーヴァテイン〟を譲ってはくれませんかねぇ? えぇ……無料(ルビ:ただ)でとは言いません……十万カネほどで……」


「へへ、兄さん、このレーヴァテインがどんな代物か知ってるのか……? しかも十万カネという無料同然で譲れだと? ……流石に舐めてるだろ?」


 四人に囲まれた一人の男は抵抗を示す。


「それは私達が〝哨戒商会〟であると知った上での回答ですかね?」


「っ……! それは脅しか? お前達が魔王:マリキチを討伐したというのは知っている。だが、それとこれとは関係ない」


「そうですか……残念です……」


「あぁ……交渉は決裂だ……じゃあな……!」


 男は去ろうとする。


「っ……!」


 しかし、四人は立ち塞がり、それを阻止する。


「いえいえ、本当の交渉はこれからですよ……」


「えっ……?」


「ミツミ、お前は少し離れてろ……」


「えーっ……! 俺もツビさんの交渉術……見てみたいです……!」


 ミツミと呼ばれる西洋風の顔立ちをした少年はそう言う。


「お前にはまだ本当の交渉は早い……いずれな……」


「分かりましたよー!」


 そう言うと、ミツミはやや不満そうな顔ではあるもののその場を離れる。


「………………さて」


「いい加減にしてくれ! 交渉は決裂だ! こちらはもう話すことなんて何もない!」


「おぉ、それは奇遇ですね……実はこちらも話すことはもうないのです……」


「え……?」


[魔具:魔物寄せ(強)が使用されました]


 男性は自身のポップアップに表示された文字を見て、自身の目を疑う。


「グルルルル……」


「っ!?」


 そしてすぐに大型の獣の姿をしたモンスターが出現する。


「おっと、偶然にもこんなところに強力なモンスターが……」


「お、お前ら……まさか……」


「あとは君がそのレーヴァテインをドロップしてくれることを祈るのみ……」


「っ!? ま、待て……! 交渉だ……! 五百万カネで……」


「…………」


 ツビは冷たい目で男を見つめる。


「わ、わかった……! 十万……! 十万だ……!」


「承知しました。交渉成立です」


 ツビはニコリと微笑む。


 ◇


 渋々、レーヴァテインを受け渡した男は去っていく。


「ツビ、今日の商談も成功だな……!」


「あぁ……今日は人が死なずに済んで本当によかった……人助けとはよいものだ」


「よく言うわ……!」


「「「ダハハハハハハ」」」


 哨戒商会の三人は上機嫌に笑う。

 が、その時であった。


「あーあー、君たち……駄目だよ、そんな悪いことしちゃ……」


「「「っ!?」」」


 そこには白い装備に身を包んだ三人の人物がいた。

 その中の一人、真ん中にいる人物は兎のような長い耳を付けている。


「な、なんだ……貴様ら……!」


「なにって君たちがさっき使った魔具は何かな……? 思い出してごらんよ」


「っ……!?」


「はい、時間切れです」


 兎の耳の人物は、ものの数秒で、哨戒商会の三人に対し時間切れを宣告する。


「君達が使ったのは、〝魔物寄せ〟。つまり正解は〝モンスター〟だよ」


「なっ……!?」


「君達は僕をキルしてくれるかな? 楽しみだよ」


「――……!」


 これまで圧倒的な力の差により、理不尽を押し付けていた強者は、より強い理不尽に蹂躙される。


 ◇


 ジサンらが九五階層のボスに到達するまでの一ヶ月の間にいくつかの魔王攻略が達成される。


 ==========================

  ◆二〇四三年一月

  魔王:ガハニ

  ┗討伐パーティ〈P・Ower(K選抜)〉

   ┝ワイプ【死亡】 クラス:剣豪

   ┝バウ 【死亡】 クラス:ガーディアン

   ┝ズケ 【死亡】 クラス:アーク・ヒーラー

   ┗シイソウ    クラス:魔女

 ==========================

 ◆二〇四三年一月

  魔王:フンソウホウ

  ┗討伐パーティ〈Starry☆Knights〉

   ┝ゲンゾウ クラス:聖騎士

   ┝セン   クラス:ジェル・ナイト

   ┝リマ   クラス:マジック・ナイト

   ┗ナン   クラス:ヒール・ナイト

 ==========================

 ◆二〇四三年一月

  魔王:マリキチ

  ┗討伐パーティ〈哨戒商会〉

   ┝ツビ 【死亡】 クラス:マネージャー

   ┝ミツミ     クラス:ブラックスミス

   ┝ズウホ【死亡】 クラス:盗賊王

   ┗ソナタ【死亡】 クラス:ジェネラル・ヒーラー

 ==========================


 しかし、そのうち二パーティの六名が攻略後、すぐに死亡するという怪現象が起きていた。

 前のリリース・リバティBのメンバーと合わせて、魔王討伐の三パーティが一人を残して死亡するという事件により掲示板はかなり荒れていた。

 これにより魔王討伐の勢いがやや減衰する。


 ジサンは月丸隊のことが気になっていた。

 公開リストを見る限りは死亡にはなっていなかったが、ダンジョンに来る前、共に旅をし、魔王:エスタを倒した彼女らに何か起こっていないかと心配になったのだ。

 少し前のジサンならば考えられない現象であった。悩んだ挙句、ジサンは一つの決断をする。


[ジサン:物騒ですがそちら大丈夫ですか?]


(…………あ、やっぱ取り消……)


[ツキハ:ご心配ありがとうございます!! こちらは今のところ大丈夫です! ただ、確かに何だか不気味ですね]


(はやっ……!)


[ジサン:そうですね。なるべく単独での行動は控えて、お気を付けください]


[ツキハ:はい! 気を付けます!!]


 ツキハは嬉しかった。

 完全に信用しているのかもしれないが、メッセージ一つ寄越さない(ミテイ)もいたからだ。


 ◇


 一方、ジサンはサラに加えて、隠魔王にして、サラを除き、所持するテイムモンスターの中で、最高ランクのディクロの最強布陣により、九五階層ボスを撃破、テイムに成功する。

 またドロップ品として福引券Rを入手する。


 ==========================

 ベヒルス ランクR

 ==========================

 ==================================

 ■魔具:福引券R

 【効果】

 使用するとランダムで選ばれた三つのアイテムから一つを選択し、入手できる。三日以内に使用しないと消滅する。

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 ◇


 九六階層、生活施設ベースキャンプに到達してまもなく、ゲームに更に一つの変化が齎される。

 難易度〝魔帝〟ランクの公開であった。


 ==========================

 〈難易度〉〈名称〉〈報酬〉〈説明〉

 魔帝 ナード魔具:慈愛の雫 全員瀕死時、全員全回復する

 魔帝 ジイニ魔具:雌雄転換 使用者は性転換する

 魔帝 リバド魔具:仙女の釣竿×4 よく釣れる釣竿

 魔帝 カガ特性:召喚獣使役 召喚獣を使役できる

 ==========================

 

 魔帝はボスリストにおいて、大魔王と魔王の間に挿入された。

 その位置から大魔王と魔王の中間くらいの強さであると推察された。

 魔帝は出現条件も提示されていたが、これまでの魔王に比べ、ややユニークな物が多かった。

 更に珍しいことに発表から数時間後に、ボスの交代が発表された。


 ==========================

 〈難易度〉〈名称〉〈報酬〉〈説明〉

 魔帝 リバド魔具:雌雄転換 使用者は性転換する

 魔帝 ジイニ魔具:仙女の釣竿×4 よく釣れる釣竿

 ==========================


 リバドとジイニが入れ替わっていた。条件等に変更はなく、単純に配置が変更されたようだ。

 そして、ジサンにとっても魔帝の報酬の中に惹かれるものが一つあった。

 生活施設にいたこともあり、ダンジョンを出る良い機会でもあった。

 階層攻略を始めてしまった場合、途中でダンジョンを出るのは効率を考えると勿体ないからである。

 しかし、魔帝報酬はジサンをダンジョンから出すことを決断させるには至らなかった。


 ◇


 ガラガラガラ……

 少々、シュールな演出の後、結果が表示される。


 ==========================

 【福引結果】

 ①魔装 魔剣レーヴァテイン 強大な炎を秘めし魔剣

 ②魔具 回生の御守り 次の戦闘で使用者は一度だけ瀕死回避できる

 ③魔具 アクアリウムC 巨大水槽。水生モンスターを飼育できる

 ==========================


(あれ……? ②って、魔王:ガハニの報酬だ。運がいいな……)


 ジサンは大して迷うことなく〝アクアリウムC〟を選択し、久しぶりにダンジョンを出ることにした。

 牧場にアクアリウムを設置するために……



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