【番外編】恐竜を求めて2
「恐竜を求めて」は初心に帰って、どちらかというと原始的ダンジョンおじさんっぽい当て所ないストーリーです。
ウエノミュージアムダンジョン――
「マスター、ここに本当に恐竜いるんですかね……」
白銀の髪の少女サラは自身がマスターと慕うおじさんにそんなことを尋ねる。
「……うーん、どうだろう……」
実際、来てはみたものの今のところ出現しているモンスターは獣を中心としたオーソドックスなタイプであった。
(……有名なダンジョンだけあって、結構、人も多いな……)
それがジサンがこのダンジョンを敬遠していた理由でもある。
「別の層に行ってみたら、がらりとモンスターのタイプが変わるかもしれない」
「それもそうですね」
そうして二人は深層へとつながるポイントを探すことにする。
◇
ウエノミュージアムダンジョン4層――
「ここまで来ると大分、人も少なくなりましたね……」
「あぁ……」
当然であるが、ダンジョンは層を上がるごとに難易度が上がる。
ウエノミュージアムダンジョンは深層へのポイントに毎回、門番モンスターがいるタイプのダンジョンであったこともあり、4層になってようやく、視界の範囲には誰もいないくらいまばらな状況となった。
「そろそろ出てきてくれますかね……」
「そうだといいのだけど……」
まだまだ出なかった。
◇
ウエノミュージアムダンジョン9層――
「マスター……! 出ました! 恐竜! 恐竜です!」
「うーん、……これはワニ……だな」
「……ですよね」
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■パニックワニ ランクK
レベル:35
HP:820 MP:0
AT:290 AG:140
魔法:なし
スキル:かみつく
特性:咬合力
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「でも、ワニって恐竜みたいなものじゃないですか?」
「確かに……」
生物学的には恐竜とワニ、トカゲ、カメ等の違いは脚の生え方である。
ワニ、トカゲ、カメ等は身体の横から脚が生えており、這いつくばるように歩行する。
恐竜の脚は身体の下に生えており、しっかりと立つことができる……という違いがある。
もはや有名な話となりつつあるが、このような特徴を持った生物が鳥類であり、鳥は恐竜であるという。
サラの知識をサポートするデータ・アーカイヴにもその情報は掲載されており……
「マスター、恐竜はどちらかというと鳥に近いようです」
「……少し聞いたことがあるな」
「ですが、マスター……思ったのですが、見た感じ、鳥とワニ、どっちが恐竜っぽいかと言われたら……」
「……ワニだよな」
(……もうワニでいいか)
「…………ふと思ったんだけど、ドラゴンってどっちなんだろうな……」
ジサンは呟くようにサラに尋ねる。
「ドラゴンですか……ドラゴンは架空の生物ですね」
(そ、それは知ってるけど……)
「ドラゴンって四本脚に翼があるじゃないですか?」
「確かにそういう奴が多いな」
「あれって、地球上のほとんどの生物的には有り得ないみたいなんですよね」
「え……?」
「ほとんどの陸上生物って四肢じゃないですか。それって始めて陸に上がった肉鰭類っていう魚が四肢で、それをルーツとしているからだそうです」
「詳しいんだな……」
「データ・アーカイヴのよる情報ですけどね……まぁ、そんなわけでドラゴンって六肢なので、敢えて言うなら虫ですかね?」
「む、虫!?」
(ドラゴンが虫だと? た、確かにトンボはドラゴンフライって言うしな……そうか、ドラゴンは虫か……シゲサトくん、知ってるのかな)
「あ、あの……冗談ですよ?」
「っ……!」
「実際にはドラゴンは虫の特徴である外骨格でもないですし、脊椎動物っぽい特性もありますので、やっぱり架空の生物としか言いようがないですよね」
「なるほど……」
ちょっとほっとしたジサンであった。
二人がそんな話をしていると、少し開けた空間に到達する。
10層へ向かうポイントらしき空間だ。
「マスター……!」
「あぁ……!」
そこには身体の下に脚が生えている爬虫類っぽい見た目の生物がいた。
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■エドモントダイノ ランクK
レベル:35
HP:900 MP:0
AT:253 AG:193
魔法:なし
スキル:草食べ
特性:無害
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