02.おじさん、とんでもない者を配合する
魔物使役により、ジサンのダンジョン攻略はより効率的なものとなっていた。
単純にソロに比べて手数が二倍になり、ターゲティングされるリスクも半分に分散されるからだ。
魔物を使用することのメリットとして、通常の仲間と戦う場合に行われる経験値分配が行われないようであった。
仲間と戦ったことのないジサンはこの事実には気づいていなかったが、これが本人の成長を事実上、倍加させていた。
ジサンは大型のモンスターは何となく邪魔なので、小型のモンスターを好んで使用していた。
多くはスライム系や悪魔、妖精といった人型のモンスターを重用していた。
モンスターも戦闘に出すとレベルが上がり成長する。
しかし、経験値による成長よりも新型のモンスターをテイムし、配合する方が、より高効率で強いモンスターを得ることができた。
そのため、一体のモンスターを長く使うことはあまりなく、次々にモンスターを入れ替えていった。
また、本人もテイマー以降も魔物使役を引継可能なクラスをいくつか転々としながら、レベルを上げていった。
ゲーム開始からひたすら地下ダンジョンに潜り続け、87階層まで到達したジサンはユニーク・クラスを獲得する。
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■ジサン
レベル:94
クラス:アングラ・ナイト
クラスレベル: 0
HP:2040 MP:304
AT:659 AG:712
魔法:フルダウン
スキル:魔刃斬、自己全治癒
特性:地下帰還、魔物使役、魔物交配、状態異常耐性
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アングラ・ナイトの特徴として、特性”地下帰還”により、ダンジョンの自己が到達した最下層までの移動が可能となった。
これでジサンが外の世界に出ない理由であった『元の階層に戻るのが大変であるから』は解決された。
クラス名に惹かれてとりあえずアングラ・ナイトになってみたものの、ジサンは特段、外の世界に用事はなかった。
そのため、その後もしばらくは地下帰還の特性を使用することはなかった。
◇
アングラ・ナイトのクラスを得た頃、ジサンは珍しく来ていた通知を確認していた。
(第四魔王:アンディマ……討伐されたか……)
世間では初めて魔王クラスのボスが討伐されたらしい。
(月丸隊……ツキハ……勇者)
魔王クラスを倒すとパーティ名、パーティメンバー、クラスが公開されるらしい。
(……勇者とは……渋いなぁ……)
魔王討伐のパーティが使用していたクラスは彼にとっては一昔前に選択を迫られたクラスであった。
そのためジサンにとっては魔王討伐のプレイヤー達は上位のクラスを使用しない渋いプレイヤーに映っていたのであった。
◇
第四魔王:アンディマの討伐が報されてから三か月経過した。
ダンジョンは地下90階層を超えると難易度が急激に上昇していた。
一階層の攻略に一か月の期間を要するのもざらになっていた。
ジサンの目下の目標は92階層の攻略であった。
午前3時。その日もジサンは探索を終え、キャンピングツールの中で休息に入っていた。
アングラ・ナイトがクラスレベル10で習得したスキル『巣穴籠り』。
このスキルにより、約5分の時間を要することで、ダンジョンのどこにでも安全な地下キャンプを作成することができた。
おかげで、わざわざ生活施設に戻らずに翌日も探索を再開することができ、非常に重宝した。
アングラ・ナイトは地下探索に便利なスキルをいくつか習得できるようで、ジサンはとても気に入っていた。
(さて、今日はいいモンスターは生まれるかな……)
夜間の休息時間はすなわち、彼の密かな楽しみ……モンスター配合の時間である。
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ダーク・フェアリー ランクP
ゴッド・ゴートン ランクP
フェアリー・スライム ランクO
ライトニング ランクO
ギダギダ ランクO
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ジサンが現在所持している最高ランクのモンスターは二体のランクP、三体のランクOであった。
その下のランクNのモンスターはこつこつと溜めて、50体ほど所持していた。
(Nランク同士でいくか……)
ランクNであれば、うまくいけば野良でもテイム可能である。
まずはセオリー通りランクN同士の配合でランクO、ランクPを狙っていく。
(今日はとりあえずランクPが一体出るまでやるか……)
■1回目
ブリザード・ファング(ランクN) × ガイアックス(ランクN)
⇒グランド・スフィア(ランクN)
■2回目
ナイーヴ・ドラゴン(ランクN) × エンペラー・シザー(ランクN)
⇒センシティブ・ドラゴン(ランクN)
■3回目
グランド・スフィア(ランクN) × センシティブ・ドラゴン(ランクN)
⇒ナイーヴ・ドラゴン(ランクN)
(……またナイーヴ・ドラゴンか……まぁ、もう少しやれば良いのが出るかな……)
………………
…………
……
50体のランクNモンスターがいれば、1回の配合で1体ずつモンスターが減っていくため結局、49回の配合を行うことができる。
最初は49回もやるつもりはなかった。
しかし、今日に限って、一体もランクOやPが出現しなかった。
これが最後……もう一回やれば出るだろ……というガチャの魔力にことごとく敗北したジサンはついに49回目。
■49回目
ジクー・ドラゴン(ランクN) × スライム・ヒロイン(ランクN)
(……本日、最高の組合せだ。これで出ないならクソゲ―……おりゃっ!!)
[ナイーヴ・ドラゴン(ランクN) が生成されました]
(……………………うがぁああああああ!!)
ジサンは一人、頭を抱える……
運が悪い日は当然、これまでもあった。しかし、こんなに運が悪い日は流石に初めてであった。
(…………こ、こうなったら……)
ジサンは血迷う。今でこそ最下層到達プレイヤーであるが、元はただの自殺志願のコミュ障。
そんなおじさんは衝動を抑えることができなかった。
ダーク・フェアリー(ランクP)
ゴッド・ゴートン(ランクP)
彼の所有する最高ランクの二体。
(さ、流石にもったい……い、いや、仮に失敗してもランクPより下にはならない……)
[配合を実行しますか?]
[はい いいえ]
(やっちまえ!!)
ジサンはやけくそ気味に”はい”を押す。
[サラ(ランクS) が生成されました]
(えっ……S? P、Q、R……エス!?)
その時、普段の配合と異なり、光エフェクトが発生する。
そして、ジサンの目の前に小柄な女の子が出現するのであった。
女の子は130センチくらい。肌はやや褐色で、髪は白銀で少し長い。。スレンダーな割に出るところは出ている。
赤い瞳に、やや小さいが雄山羊のような二本の巻き角。
露出度の高いエキゾチックな衣装、何より小柄なわりに目を奪われるような美しい容姿をしていた。
ジサンは驚き、尻餅をついてしまう。
しかし、その女の子は尻餅をつくジサンの前で跪く。
「我はサラ――魔族の者」
(……………………しゃべった)
「召喚に従い……貴方にこの身、この心、全てを捧げます」
次話「おじさん、ランクSを野に放つ」




