124.おじさん、トウキョウ
「な、なんなんだ、このサメは!?」
「うざってぇんだよ!」
「っ……!」
サメ男殴られる。
「ぐぬあっ!」
サメ男噛みつき返す。
「くそがっ……!」
ウサギは益々暴れるも、サメ男も必死に噛みついている。
「全く……マスターってば……」
ウサギとサメ男はもみ合っているうちにツキハから10メートル程、離れていく。
そのツキハのすぐ近くに褐色肌の少女がふらっと立つ。
「さ、サラちゃん……」
ってことは……このサメの人……
「……そんなに急いで行かなくても……そんなにこの人間が大事なのですか……?」
えっ……?
ツキハがその言葉の意味の解釈に脳の全リソースを奪われている間に、サラは若干、不服そうに頬を膨らませながらも魔法を宣言する。
「魔法:リバース」
「っ……!?」
サラが宣言した魔法がサメ男に着弾するエフェクトが発生する。
すると、どうしたことでしょう。
サメ男はみるみるうちに、中年男性へと姿を変えたではありませんか。
「……!? お、お前は……!?」
「……」
「あ、アングラ・ナイト!?」
ウサギはようやくサメ男の正体に気が付き、口をあんぐり開ける。
一方、少し離れたところでは別の人物が眼光を輝かせていた。
「ふふ、あいつが気に入ってた奴……うちがつまみ食いしてもいいかニャ? おっといけないニャ……」
ネコマルは垂れそうになっていたよだれを肩で拭き取るような仕草をする。
「おい……お前……」
と、そこに一人の少女が割り込む。
「ニャ?」
「マスターの邪魔はさせない」
「さ、サラちゃん、気を付けて! そいつは……」
いつの間にか傍らから消えていたサラに対し、ツキハは警告を発する。
「ん……? ネコ……マル……?」
サラはその少女の横で宙に浮く文字を読み上げる。
「ほほう……お前が……」
「ニャ? お前、にゃんか生意気だニャ」
「ふふふ……そうか?」
サラは不敵そうに微笑む。
「我はサラ……」
「ニャ……? サラ……? ひょっとして……いつも空席の……?」
え……? 何……?
と疑問に思った瞬間、ツキハは背筋が凍るような感覚を受ける。
二者が放つプレッシャーに気負わされたのだ。
何……? 何なの……?
「生意気なのも納得ニャ。これはなかなか……愉快なことになってきたニャ。」
「はぁ……悔しいが同意なのはやはり我も同族であるからであろうか……」
「「……」」
二者の間に一瞬の沈黙が流れる。そして……
「特性:テイム・オブ・オブジェクト……! 行くニャ! 従者たちよ!」
ネコマルが手を前方に付き出すと、ユウタを苦しめていた地蔵、ライゲキを拘束していたミミズ、ツキハを上空から攻撃していた猛禽類が一斉にサラに向かって襲い掛かる。
「サラちゃん……! そいつらは……!」
「スキル……黒魔弾」
「っ……!?」
サラの周囲に夥しい量の黒い光弾が発生する。
そしてその黒弾は襲い来るクリーチャーに向けて放たれる。
信じられない光景であった。
黒い光がクリーチャー達の行く手を阻み、次々に着弾していく。
そして、あれ程、苦しめられた難敵が間断なく消滅していく。
「ニャ……!?」
更にはそれらを突き破り、その操者にまでその弾丸は到達する。
「ニャ―!!」
ネコマルは黒弾の雨を受ける。
ネコマルのHPが初めてまとまった減少を示す。
「……す、すご……」
ツキハは思わず感嘆の言葉を零す。
「……ニャー……こりゃ本物ニャ」
「っ!?」
しかし、被弾したネコマルは嬉しそうに微笑む。
「お前も本物のようだな……まぁ、ユニークネームのモンスターの時点で疑いようがないわけだが」
「その通りニャ。はぁ、こんなチャンスが巡ってくるなんてうちは付いてるニャ。まさか同ランクとやりあえるなんて……」
「……!?」
同ランク……?
ツキハは自身の耳を疑う。
「……そういう酔狂に興味はないが……ちょうど我も虫の居所が悪く……発散したい気分だったのだ……」
「それは良かったニャ! ならば……存分にやろう!」
ネコマルとサラは同時に掌を前に突き出す。




