12.おじさん、散財する
「なるほど、お前と決闘して勝てば情報を教えてくれるというわけだな?」
「そうだよ! ちなみに決闘は1対1、負けても死亡はなし!」
「なるほど……じゃあ……」
「マスター! 私にやらせてください!」
「えっ?」
サラが決闘への参加を申し出る。
「だ、だが……」
「こんなことでマスターを煩わせる必要はありません。それに、私、やりたいのです」
サラは久しく強敵と呼べる相手と戦っておらず、多少なりともフラストレーションが溜まっていた。
(…………まぁ、いいか。死亡はなしと言っているし……)
「それでいいのか?」
ジサンはルィに確認する。
「アタイは誰でも構わないぜ?」
「それでは……」
◇
直径100メートル程度の森林ダンジョンの最上階、中央付近でサラとルィの二人は向き合う。
「準備はいいかい?」
「……あぁ。構わんよ」
「……!」
サラの雰囲気が変わり、ルィは少したじろぐ。
「死亡なしのルールでよかったな……小童……」
「っ!! お前も小さいだろ!」
そう叫びながら、ルィが竜巻のような暴風をサラに向けて解き放つ。
だが……、避けない。
ルィの放った暴風に対し、サラは回避行動を起こさない。
暴風はそのままサラに直撃する。
「なっ!?」
だが、サラは不敵に笑みを浮かべている。
ルィは焦燥の表情だ。しかし、すぐに次の手を打つ。
「ならっ! これはどうだ! 魔法:ブレッシング・ウィンド!!」
今度は圧縮された魔力、大量のソニックブームのような三日月体がサラを襲う。
「うーむ、それは少し痛そうだ……」
サラは右手を前に出す。
「ほいっ」
無数の黒き闇がサラの周りに発生する。
そして、ルィの放った三日月状の光弾を一つ残らず撃ち落とす。
「っっ……! 魔法:ウィンド・ソード」
今度は、ルィの手中に翠の光を放つ剣が出現する。
ルィは光剣を握り締め、風の力を借りるように、一気にサラとの距離を詰める。
「っっらっ!!」
ルィは叫びながら小さい身体をくねらせるように力を溜め、全体重を載せて、サラに正面から切りかかる。
「気迫は悪くない」
次の瞬間、ルィのその魔力剣は大きく空を斬る。
「え……?」
サラは一歩も動いていない。
動いた、いや、動かされたのはルィの方であった。
ルィは戦闘を始めた位置に立っていた。
「……ち、ちくしょう!!」
ルィは大型の弓を具現化し、手に持っているウィンド・ソードを矢の代わりにして、サラに狙いを定める。
弓は激しくしなり、エネルギーを溜め込むようにギチギチと音を立てる。
それがルィの有する最大威力の攻撃であった。
「らぁっ!!」
ルィが矢を放つ。
剣の矢がサラを目掛けて猛烈な速度で飛翔する。
「最初からそれをやれ」
矢が放たれてからサラに到達するまで僅かな時間しかなかったはずだが、ジサンは確かにそう聞こえたような気がした。
サラは手の平をルィに向けている。
未だ残っていた無数の黒い光がルィを目掛けて移動を始める。
ルィの剣矢はいくつかの黒い光を掻き消したが、やがて勢いを失う。
そして、減滅した気配のない漆黒球が次々にルィに襲い掛かる。
「な? 死亡なしのルールでよかったであろう?」
「っ……! うわぁあああああ!!」
◇
「……参りました」
「やりました! マスター!」
「あ、あぁ……」
(やっぱり大魔王……つえぇ……ルィは恐らくサラが戦った中で過去最強であった。恐らく上位の魔公爵程度の強さだろうか……それを全く寄せ付けなかった)
「アタイも結構、強い方だと思ったんだけどなー。まだまだ精進が必要みたいです」
「うむ……」
「アタイを倒した特典として、アタイのフレンドIDと入金IDをプレゼントするよ」
「え……?」
「これでいつでもどこでもアタイの有する知識を提供できる」
フレンドIDはともかく、入金IDとは……?
(金取るんか……?)
ジサンとサラはルィをじっと見る。
「そ、そういう契約なんだからしょうがないでしょ!」
契約とは何だ? それを言うなら設定では? と思うジサンであった。
◇
「100%テイム武器の名称は”契りの剣TM”と言います」
「え? どこにあるか? それは有料だよ」
「ダンジョン”ウエノクリーチャーパーク”にあります」
「え? どうやって入手? それは有料だよ」
「隠しボス、魔公爵:ドミクの討伐報酬です」
「え? 隠し部屋の入り方? それは有料だよ」
(…………)
ジサンは、めっちゃ金を毟り取られた。
◇
時を同じくして、トウキョウ――
PM11時頃、”ウエノクリーチャーパーク”にて。
「うわぁあああ! お前ら何をする!?」
一人のはぐれプレイヤーが複数のプレイヤーに襲撃されていた。
「何って…………モンスターごっこ?」
「っな…………!」
「ごめんねー、今週もノルマきついのー」
「っ……! お前ら、まさか……リリース・リバティの……」
「さーて、どうだか……」
「こんなことして、ただで済むと思うなよ! 絶対に倍返しにしてやるからな!」
「は? 倍返しってどうやって?」
「え……?」
「まず前提が間違ってるね」
「……どういう?」
「おっさん、生きて帰れると思ってるでしょ?」
「っっっっ!?」
「えっ? おっさん、知らないの? 殺し武器のこと」
「え……? 嘘だよな? 冗談だよな?」
「試してみる?」
「っ!! や、やめてくれぇえ!!」
◇
数日後。
「うわー、なんだか人がたくさんいますね! マスター!」
「そ、そうだな……」
ジサンとサラは久しぶりにカントウ地方に来ていた。
ジサンは人混みが苦手であり、トウキョウに来るのはあまり気が進まなかったが、それよりも魅力的なものがここにはあった。
ターゲットは勿論、100%テイム武器”契りの剣TM”だ。




