117.正文字隊さん、オオサカ(地図C)
トウキョウ トウキョウ学園 大講堂前広場――
「へぇ~、アングラ・ナイトはキョウトか。残念……」
「あんたちょっと! 本気でやりなさいっ!」
戦闘中に余裕ありげにディスプレイを確認するウサギに月丸隊のツキハは憤慨する。
「まぁまぁ、いいじゃない。少しくらいは……せっかくなんだ……楽しもうよ」
「こっちはそういう狂人みたいな趣味はないのよ!」
「……! そうそう、君、いいこと言うね……」
「は……?」
「あぁ、いいのいいの、こっちの話だから」
ウサギは上機嫌にクスクスと笑ってみせる。
「でもさ、水猫がツクバ、君達がここトウキョウ、そしてアングラ・ナイトがキョウト……もしかして……オオサカは捨てたのかな?」
「っ……」
◇
2043年6月1日 13:35
オオサカ オオサカ学園――
巨大池付近にて。
「引くなぁああ! ここは何としても守り切るんだぁあ!」
青い武装をした盾騎士の男性が叫ぶ。
自治部隊である正文字隊のエリア隊長はそのように部下達を鼓舞していた。
”正文字隊”とはカンサイを中心に活動する自治部隊である。
イメージカラーは青。そのイメージカラーの通り、彼もまた青い武装を着用していた。
正文字隊のメンバーもまたP・Owerのメンバー同様に防衛のために配置されていた。
エリア隊長の盾騎士というタンクのクラスも相まってか、自らが前線に立つ姿はそこにいる十数名の勇敢な戦士達全体の士気をいくらか高めていた。
しかし、それも限界が近づいていた。
何とか耐えてはいるものの一言で言えばジリ貧であった。
ゲームにおけるボス戦攻略の基本はパターンを作ることである。
被ダメージ、HPの回復、技のインターバルが一定のサイクルに入り、かつ与ダメージだけが増加していく必要があるのだ。
現状では、与ダメージは軽微。そして、何とかHPを保っているものの技のインターバルが徐々に間に合わなくなってきていた。
「うふふふふ」
「っ!?」
問題を生み出している人魚のような姿をした襲撃者”マリン”が不気味に微笑む。
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④オオサカ オオサカ学園
┗マリン
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その微笑みは危惧していた均衡の破壊を予感させた。
ぎりぎりの状態は一度の大技により、脆くも崩壊する。
「お前ら、引けぇえええええ!!」
「えっ……?」
今まで、引くなと指示していた隊長が真逆のことを叫び、隊員たちは戸惑いを見せる。
しかし、その理由はすぐに分かることとなる。
「スキル:ビューティ・スプラッシュ」
無数の水砲がプレイヤー達、目掛けて襲い掛かる。
「た、隊長! 何人かがゲームオーバーにっ!! 四人……いや、五人は……」
若い正文字隊の部隊員が振り向くことのない隊長に現状を伝える。
「わかっている! だが、今は”そんな数”を数えている余裕はない!!」
「っ……!」
そんな数? 人が亡くなっているというのに……
正文字隊エリア隊長は自身の直前の言葉に嫌悪感を抱く。
だが、彼にとって今の状況を端的に表すならば、これだろう。
“本気でやばい”
最悪の場合、全滅し、多くの市民や学生に死者を出してしまうかもしれない。
それだけは避けなければならない。
「皆!! 今が正念場だ! ここだけは死守せねばならぬっ!!」
隊長は先頭に立ち、強い覚悟を持って叫ぶ。
「――――…………?」
が、しかし、誰からも返事がない。
隊長は少なくとも没する覚悟と強い意志を持っていたのかもしれない。
隊長が実は煙たがられ、疎まれていたわけでもない。隊員達は彼を尊敬していた。
ただ、他の者達は隊長よりも少し早く心を折られてしまったというだけだ。
「っっ…………」
隊長は唇を噛み締める。
そして“危機的状況”から”最悪の事態”へと状況が遷移したことを悟る。
と、その時であった。
キィキィイイと状況に似つかわしくないブレーキ音が辺りに響き渡る。
「……な、何だ?」
見ると、最近ではめっきり見ることのなくなったバス以外の車……しかもオープンカーがそこにあった。
「おいおい……詐欺じゃねえの」
「……!?」
「遠くから見たら、人魚の姿してるからすげえ美人かと思って期待したが、近くで見たら人魚というか……ほとんど半魚人じゃねえの、これ……」
「っっ! 貴様ぁあああ!」
オープンカーから放たれた人魚に対する暴言に対し、人魚”マリン”はすぐに反応し、水砲を車に向けて連射する。
「魔法:リフレクション!」
「っ!! 避けろっ!」
「うわぁああ!」
オープンカーを守るように現れたバリアエフェクトにより、跳ね返された水泡は戦士達の方にも飛散する。
「サンキュー、リッマ」
「別に……車を守るためであってセン輩のためではありません」
「ははっ……結構じゃねえの……!」
戦士達が何とか跳ね返った水泡を避ける中、当の本人達はあまり気に留める様子はない。
「よいしょっと」
黒を基調とした正装を連想させるデザインの騎士風の装備をまとった四人がオープンカーから堂々と下車する。
「Starry☆Knightsだ……」
戦士達の一人が有名である彼らの正体を呟く。
「どもども」
それが聞こえたのか赤髪の男……Starry☆Knightsのエース、ジェル・ナイトのセンが手を前に上げながら言う。
「どもどもって……どうしてもっと早く来てくれなかったんだ! そんな余裕ありげに来やがって!」
そのStarry☆Knightsの立ち振る舞いに対し、若い戦士が不平を言う。
「その上、さっきの反射魔法……! 我々に当っていたらどうするつもりだ!」
「あん? 勘違いするな。俺達は別に人助けに来たわけでもねえ」
「え……?」
「ただ、強い奴を倒しに……つまり攻略しに来ただけだ」
◆
二日ほど前。
2043年5月30日――
エクセレント・プレイスからの犯行予告が届いた頃――
「はぁーん、要するに裏切りの自治部隊主催の襲撃イベントってところか。面白そうじゃねえの……」
「そうですね、セン輩、参加は確定ですね」
「……さぞかし腕に自信があるんだろうよ。ならば、行かないという選択肢はねえな……」
Starry☆Knightsは早々に参加の方針を固めていた。
「トウキョウ、イバラキ、キョウト、オオサカと……カントウかカンサイか……さてさてどれにしようかね……って、ん……?」
その時、センの元に一通のメッセージが届く。
「どうしました? セン輩」
Starry☆Knightsのマジック・ナイトであるリマが訝しげな表情でセンに問い掛ける。
「メッセージじゃねえの」
「え? セン輩、フレンドいるんですか?」
「うるせえ。いねえわ」
「え? じゃあ、誰からですか?」
「月丸隊のツキハ」
「「「!?」」」
「え? セン輩、ツキハとフレンド登録してたんですか!?」
「いんや、してねぇな……」
「ってことは、サインボールですか?」
「だろうな……ツキハにそんなもん渡した覚えはねえがな」
リマの質問にセンもやや釈然としない様子で応える。
「それで内容は……?」
リーダーの聖騎士、ゲンゾウが本題に移す。
「まぁ、要約すると、襲撃イベントでどこに行くか教えろってことだな」
彼らはかつて女の子に渡した”サインボール”がおじさんを経由し、ツキハに譲渡されたことを知る由もない。
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■魔具:サインボール
【効果】
サインをしたプレイヤーがフレンドでなくても一度だけメッセージを送ることができる。
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◆
現在に戻る。
「おー、リーダー&リマ頑張れ」
「事が済んだらすぐに来てくださいよ!」
「あぁ……」
そう言って、センは一歩下がる。
「ちょっと待て、攻略しに来ただけってどういうことだ!?」
戦士は納得いかない様子で、センに噛み付く。
「あん? 何だお前……」
「だから、攻略しに来ただけってどういうことだと聞いている」
「そもそも、急ぎもしてねえが、別に寄り道したわけでもねぇし、お前はお前で、死を覚悟して戦場に来たんじゃねえのか?」
「っっっ」
噛み付き戦士は言葉を失う。
「止めておけ……」
そんな戦士を隊長が窘める。
「し、しかし……隊長……」
「今は彼らの強さが必要だ……」
「くっ……」
噛み付き戦士は唇を噛み締める。
「賢明なようだが、ピントがずれてるぜ? 隊長さんよ」
「なにっ……?」
「だーかーら、言ってるだろ? 自分達のために来た。ゆえに、へそを曲げて帰ったりはしない」
「っ……!」
「さっきも言ったが、人助けに来たわけではない……ただしだ……」
「……何だ?」
「この中に、俺達のファンがいたら手を上げろ……」
「はっ……?」
「もう一度言う……この中に、俺達のファンがいたら手を上げろ……」
「ふざけてんのか! そんなもんいるわけ……! っ……!」
女性二人、男性一人が手を上げる。
「そうか、先程はすまなかった。詫びに後でサインボールをプレゼントするから、俺達の後ろに下がってくれ」
「センさん! 大ファンです!!」
センは求められた握手に応じ、ファンの皆様を自分達の後ろへエスコートする。
「所詮……顔面か……」
「えっ……?」
「い、いや……」
隊長の呟きに噛み付き戦士が反応する。
そして、ファンの中の唯一の男性も若干、緊張しながらセンに握手を求める。
「……お、応援しています……」
「……おぅ、応援ありがとう。嬉しいじゃねえの」
「……!」
センは笑顔で握手に応じ、女性達と同様に男性を後方へ送り出す。
「セン輩! そろそろ来てください!」
「おう……! すまねぇ。……ファンの皆様、そこで観ていてくれ。あと他のも邪魔だから下がってろ」
「っ……!」
「ここは下がるぞ……」
「っ……! ……はい」
噛み付き戦士は隊長の誘導に応じる。
◇
「さて……待たせたな」
ファンの誘導及び邪魔の排除を終えたセンが戦線に復帰する。
「セン……こいつ、強いぞ……」
聖騎士のゲンゾウがそう告げる。
「へぇ……そいつは結構なことじゃねえの」
「Starry☆Knightsか……残念……三強と呼ばれるパーティの中では”最弱”か……」
「っ……」
マリンの呟きにセンはぴくりと反応する。
「……しかし、これはどういうカラクリだ? こいつらってプレイヤーなんじゃねえの?」
センは人魚女に表示されている”マリン”という名称を眺めながら言う。
名称が表示されるのはプレイヤーではなくモンスターの特徴だ。
「元からモンスターでプレイヤーのふりをしていたのか、はたまたプレイヤーがモンスターになることができるのか……」
センがぶつぶつと考察しているとマリンは割り込むように答える。
「私はモンスターだ……」
「顔面の話じゃねえよ」
「っ……! てめぇ……! ぶっ殺す!」
マリンはセンの返答に対し、怒りを露わにする。
「おう……怖い怖い……」
センがそう言うと彼の肩に乗った星形のスライム(ヒトデ・スライム)も同調するようにクスクスと笑う仕草を見せる。
「スキル:人魚雷っっ!!」
センとそのテイムモンスターの態度が癇に障ったのか、マリンは即座にスキルを発動する。
「っ!?」
マリンは直線的な動きでセンの方に突撃してくる。
「セン輩が煽るからっ!」
マリンの突進はセンにクリーンヒットする。
「うおっ……! ……魚なだけに……」
「ふざけてる場合ですかっ! まだ続きますよ!」
スキル:人魚雷は一度の突撃では終わらない。
鋭く方向転換をしながら前衛の三人に何度も襲い掛かる。
「大丈夫か? リマ」
「えぇ……」
マリンの攻撃が一段落する。
攻撃そのものは成功し、Starry☆KnightsのHPゲージは確かに減少させた。
しかし、マリンとしては、その結果については、やや不満であった。
肝心の自身を侮辱してきた男に対してのダメージが想定より軽微であったからである。
「ってか、リマよ……」
「何ですか? セン輩……」
「リマとマリンって紛らわしいな……字面が……」
「後にしてください!」
リマは憤慨する。
「さてさて、お次はどうなさるんだい?」
なおも、その男は余裕を見せる。
「っ……!」
ならばと……マリンは、少し趣向を変えたスキルを選択する。
「スキル:微睡の歌」
「ん……?」
人魚から波紋状のエフェクト、音符のエフェクト、そして奇妙な効果音が発生する。
「っ!! 状態異常攻撃ですっ!」
リマが叫ぶ。
「魔法:エフェクト・ガード!!」
「だ、大丈夫ですか……?」
魔法により難を逃れたリマがリーダーのゲンゾウに確認する。
「あぁ、なんとか……装備に付与されていた状態異常耐性が作用したようだ」
ゲンゾウはそう言う。
離れた場所にいたヒーラーのナンもサムズアップで無事を伝える。
そして……
「…………くかー」
一人だけ見事に被弾してしまう。
「セン輩っ!! あんだけ煽ってたくせに、何しに来たんですか!!」
リマがすやすやと眠っているセンを揺する。
何故かちゃっかりと難を逃れていたヒトデ・スライムもセンの頬をペチペチと叩く。
「…………くかー」
「っっ……」
しかし、駄目。
「無駄だ、ゲーム的に眠っている」
「は、はい……」
「仕方ない、しばらくは三人でやるぞ」
「了解です」
◇
「う、うーん……朝か…………ん?」
センが深い眠りからようやく目を覚ます。
「お、おはようございます……セン輩……」
「お、おぅ……リマ……えーと……」
センは眠る前の記憶を呼び起こす。
確か……美しい人魚と……
「で、これどういう状況?」
センの眼前には魚の身体に人間のような腕と脚だけが生えた奇妙なモンスターが立ち塞がっている。
「マリンですよ……!」
「はっ……? これどう見てもモンスターじゃねえの!」
「だから、モンスターって言ってるでしょ! 本人も!」
「まぁ、確かにな……」
「セン輩がすやすやお眠りしている間、大変だったんですからっ!」
「そのようだな……」
センが瞬時に確認した状況によると、マリンのHPは残り多くない。
一方で、Starry☆Knightsのパーティメンバーのうち、ヒール・ナイトのナンが倒れており、ゲンゾウとリマのHPも半分程度となっている。
ゲンゾウは今もマリンと接近戦を演じている。
「……ナンは?」
「眠らされました」
「なるほどな……呑気なもんだ」
「つっこみませんよ。マリンはHPが1/3くらいになってから、パワーが大幅に強化されています」
「なるほど、それでリマは俺達を守ってくれていたというわけか」
「っ……! たまたまセン輩が後ろにいただけです」
「きゅぅううう!」
「あぁ、悪かった、ヒトデっち、お前もだな」
「セン輩! すやすやしていた分、きっちり仕事してくださいよ!」
「言うじゃねえの! なら、行くぜ……」
センは駆ける。
「ゲンゾウ、待たせたな……」
「……あぁ……随分と待たせやがって」
「悪かった……しかし、こいつはまた愉快な姿になったじゃねえの……」
「ぎゅぅいいいいいいい!!」
「特性:人魚姫……により、あの姿に変身した。どうやら言葉を失っているようだ」
「人魚姫だ? 俺の知ってる人魚姫のイメージとちょっと違うじゃねえの……言葉を失って人間の脚が生えたところは同じだが……」
センは呆れたように言う。
「そうだな……だが、それはそれとして、奴は魔法やスキルは使わないもののスピードとパワーは別次元だ。ナンも眠ってしまい、回復手段は少ない。うかつに攻められず、正直、苦戦している」
「なるほど……パワーね……なら、俺の復活がさぞかし待ち遠しかっただろな」
「今まで寝ていたやつが偉そうに……」
ゲンゾウが苦笑いする。
「おらっ! かかってきやがれ、不細工魚がっ!」
「っ!! ぎゃあいいいいいいい!!」
マリンは人魚の姿だった頃の記憶が微かに残っているのか、センの煽りに対し、怒り狂ったように反応し、突撃する。
「っ!? はやっ!」
その見た目に反し、極めて俊敏に動き、そして二本の腕から強力な連続打撃を繰り出す。
「ぎぃいいいいいいいいいい!!」
あまりの速度に二本の腕が無数にあるかのような残像を残し、それらの攻撃がセンに襲い掛かる。
「ぎぃいいいいいいいいいい!! ……ぎ?」
しかし、マリンは気づく。
対象のHPがあまり減っていないことに。
「どうした?」
「ぎ、ぎぃいいいいいいいいいい!!」
マリンは懸命にセンを殴打する。
だが、その手数とは裏腹にセンのHPへの影響は少ない。
「ぎぎ……」
「へへ……もう終わりか? 不細工魚……」
「ぎぃ!?」
「スキル:リキッド・ガード……俺はジェル・ナイト……気高きスライムの能力を使うことができる。液状の緩衝フィールドがあらゆる攻撃のダメージを極小化する」
「ぎ…………」
「打撃一辺倒か……? お前……変身する前の方が強かったんじゃね?」
「ぐぎっ!?」
「お前が寝かせてくれたおかげで、頭すっきり。何よりスキルを出し惜しむ必要もねぇじゃねえの……」
「ぎっ……!?」
[スキル:メテオ・ブレイド]
モンスター側にそれが通知されるのかは不明であるが、プレイヤー側にはそのスキル名がポップする。
「詰みだ……お姫様……お前、結構可愛かったぜ」
「…………ェっっ」
流星のエフェクトをまとった一閃がマリンの魚体に巨大な斬撃を与える。
◇
「おい……お前……」
「……!」
気が付くとマリンは変身前の姿に戻っていた。
「っ……」
マリンは自身のHPを確認する。
HPは僅かに残されているが、弱い攻撃でも一度受ければゼロになってしまいそうな程に僅少である。
そして、自身は地面にへたり込み、目の前に立つ赤髪の男に剣を突き付けられていた。
その気になればいつでもとどめを刺せる状態であることは誰が見ても明らかであった。
「なぜ私は元の姿に……」
「さぁな……? 効果が切れたんじゃねえの?」
「……」
「さてさて、それはそうとしてこのままHPをゼロにしたらどうなるんだろうな?」
「っ……!?」
「要は【プレイヤーにプレイヤーはキルできないルール】と【プレイヤーでもモンスターはキルできるルール】……どちらが優先されるんだろうな?」
「……」
「後者ならお前は死ぬわけだが……」
「……」
「一応、聞いておくか……お前、なぜモンスター化したんだ……」
「っ……! …………」
マリンはしばし俯き、そして覚悟を決めたように前を向く。
「わ、私は……ゲームが始まる前に……弟を……」
「あ、いや、動機の方じゃなくて、原理の方……」
「っ!?」
「お前よう……! これからキルするかもしれない奴の身の上話なんか聞いたらキルしづらくなるかもしれねえじゃねえの!」
「……! …………とある方に、モンスター化の権利を付与された。それだけだ……」
「へぇー、そんなことができるのか、あんがとよ」
「……」
「つまりまぁ、プレイヤーがモンスター化するってことだな……」
「……」
マリンは事実であるが、あまり認めたくないのか、眉間にしわを寄せる。
「それじゃあ、モンスター化を解け……」
「……!」
「モンスター化を解くなら、この剣を降ろしてもキルされることはないだろ? それとも戦闘中は元に戻れないとかあるのか?」
「…………できる…………だが、解かねえよ」
マリンは唇を噛み締めるようにして言う。
「はぁーん、それでこのままキルされることになったとしても?」
「……無論だ……」
「わかった……いい覚悟じゃねえの……」
そう言うと、センは剣を握る拳を強める。
「せ、セン輩っ!?」
リマが驚くように声を上げる。
「本当にやるんですか? セン輩……」
リマは先輩の”人殺し”には賛成できないようであった。
「あぁ……こっちも命懸けでやってんだ。ならば、躊躇する方がモンスター様に失礼ってもんじゃねえの」
「っ……! そ、それは……」
「「……」」
ゲンゾウとナンはセンの判断に任せることを決めたのか黙っている。
「マリン、お前をモンスターだと認めよう……」
「っ……」
「キルされたら……普段の行いの悪さを呪うんだな……!」
「っ……!」
センは剣を振り下ろす。




