11.おじさん、仕様変更
第一魔王ロデラが撃破された直後、特段、何もイベントは発生せず、世間は何となく、この後どうなるのだろう……という不安感に包まれる。
しかし二日後、変化が起きる。
全プレイヤーに一通目の”重要なお知らせ”が届く。
それは、ボスリストの更新であった。
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<難易度><名称>
┗<報酬><説明>
魔神 レオメル
┗??? ???
魔神 リスティア
┗魔神:リスティア ???
大魔王 モドリス
┗魔具:複写石 任意の魔具を複製する
大魔王 ネコマル
┗航空機:01 海外エリアへ移動できる便を開通
大魔王 ルイスレス
┗<大規模DMZ> 一部の地域を人間の安全地帯とする
魔王 エデン
┗魔具:テンナビ 同ランクの任意のクラスに変更できる
魔王 カンテン
┗魔装:ゲルル 状態異常無効の装備
魔王 エスタ
┗魔具:最強千 最上位プレイヤー同等になれる
魔王 アルヴァロ
┗魔具:呪殺譜 任意のプレイヤー一名を死亡させる
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魔神という未知の存在、魔王が普通に追加されている、
物騒な報酬等、気になる点は多数あったが、ジサンにとってことさら目を引いたのは、二つ。
一つは魔神 リスティアの報酬……魔神 リスティア。
これはつまりテイム対象ということであろうか。この事実にはジサンの胸も幾ばくのざわつきを覚える。
そして、もう一つは、ボスランク:大魔王の存在である。
ジサンはこれを見て、一年近く、予想の範囲を超えなかった事実がほぼ確信に至る。
大魔王 サラは隠しボスである。
サラもきっとジサンが気付いたことに気付いたであろう。
だが、二人はその思いを胸に秘め、そして変わらない。
余所余所しくなるでもない、逆に急激に絆が深まるでもない。
つまり、何も変わらなかった。
翌日には、二通目の”重要なお知らせ”が届く。
その中にはルール変更に関する記載がされていた。
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【重要なお知らせ】
日頃からリアル・ファンタジーをご愛顧いただき、誠に有難うございます。
皆さまによりゲームを楽しんでいただくため、本日より、下記のルール変更を適用致します。
①NPCの追加実装
これまでギルド案内嬢(通称、NVC)のみであったNPCを追加実装します。
運営公式の装備販売やヒント情報が充実します。
多種多様なNPCの反応をお楽しみください。
②プレイヤー同士の攻略情報の交換を解禁
これまで禁止していたプレイヤー同士のネットワークを介する情報交換用の専用掲示板を解禁します(メニューに追加しています)。
より深い攻略をお楽しみください。
③プレイヤー同士のダンジョン内での攻撃解禁
これまで禁止していたプレイヤー同士の攻撃をダンジョン内に限り解禁します。
モンスターとの戦闘中はこれまで通り同士討ちは発生しません。
プレイヤーの通常武器による攻撃でHPがゼロになった場合、死亡はせず、30分間の行動停止となりますのでご安心ください。
気軽に決闘をお楽しみください。
④レイドボスの実装
4人上限のパーティ枠を超えた総力戦で挑める強大なボス戦を用意します。
勝てば報酬、負ければ罰則のハラハラドキドキバトル!
熱い戦いを期待します。奮ってご参加ください。
なお、本ルール変更は、魔王討伐がなされなくても実施予定でした。
魔王討伐パーティを恨まないで上げてね☆
リアル・ファンタジー運営
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(……何だこれ)
ジサンは思う。
これが任意参加のゲームならば、喜ばれることなのかもしれないが、強制参加のゲームにおいてはもはや怪文書に等しい。
しかし、叫ぼうが喚こうが運営の決定は絶対である。
ジサンはそれぞれについて考える。
①NPCの追加実装
ジサンはギルドを使用したことがなかったため、あまりピンと来なかった。
確かにこれまではっきりとNPCと呼べる存在には遭遇していなかったのは確かだ。
逆説的に言うと、サラはNPC扱いではないということだ。
②プレイヤー同士の攻略情報の交換を解禁
ジサンは元々、ネット掲示板をよく見ていたため、多少、興味が沸く。
③プレイヤー同士のダンジョン内での攻撃解禁
めんどうくさい。
④レイドボスの実装
現時点では何とも言えない。
◇
一週間後。
ルール変更を最もすぐに実感できたのは、情報交換掲示板であった。
デマも蔓延していたが、気になる情報がいくつかあった。
■同じボスランクでも強さの幅がかなりあるらしい
■ボスリストにいない隠しボスがいるらしい
■プレイヤーを殺せるキルウェポンが存在するらしい
■リリース・リバティというクランがやばいらしい
■プレイヤー有利なバグは改修しない方針らしい
特にクラス板は大いに賑わっていた。
==クラス板========================
111 名無しさん ID:igjaa330
魔物を使役できるクラスがあるとの噂
120 名無しさん ID:jgi09a0
>>111
テイマー
203 名無しさん ID:u90pjapo
勇者は処女しかなれない、魔女は非処女でもなれる はガチ
207 名無しさん ID:pjopapaa
>>203
ツキハ純粋、ミズカ淫乱
212 名無しさん ID:ecfnav037
>>207
ツキハさん、ちーっす
212 名無しさん ID:llllagaloe
>>207
ミズカはエロいエロいLOE
675 名無しさん ID:w0j90aeexx
まとめました。
○上位のクラスチェンジはそれなりのリスクあり
・ 元のクラスに戻れない
・ 同ランクのクラスを選択し直せない
・ クラスレベルがリセットされることで一時的に弱くなることがある
677 名無しさん ID:ghaidhgae
>>675
クラス迷子した俺死
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(結構、荒れてるな……)
ツキハとは第四、三、二の魔王討伐に関わった勇者のクラス。
ミズカとは第三、一の魔王討伐に関わった魔女のクラスの女の子のようだ。
また、クラスチェンジは無暗に行わない方がいいという書き込みもよく見られた。
ジサン自身も長くアングラ・ナイトを使用していた。
今思うと、アングラ・ナイトにしたのも少し安直だっただろうかと思う。
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■ジサン
レベル:130
クラス:アングラ・ナイト
クラスレベル: 38
HP:3160 MP:530
AT:1455 AG:1964
魔法:フルダウン、スロウ
スキル:魔刃斬、地空裂、陰剣、自己全治癒
特性:地下帰還、巣穴籠り、魔物使役、魔物交配、状態異常耐性
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サラについて。
ジサンはサラのクラスのみを知っており、レベルやステータスについては知らなかった。
サラはクラス:大魔王レベル0の時点ですぐに低ランクモンスター収集の旅に出たため、ほとんどクラスレベルが上がっていなかった。
初期職が大魔王であるというチートであるが、逆に継承して使用できる魔法、特性がないせいで、種類はそれほど多くなかった。
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■サラ
レベル:122
クラス:大魔王
クラスレベル: 3
HP:3539 MP:1960
AT:1294 AG:1171
魔法:リバース、ドレイン、ムーヴ、ランダム
スキル:支配
特性:徘徊
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一方で成長したものもある。身の丈だ。
一年前130センチ程度であったサラの身長は10センチほど大きくなっていた。
◇◇◇
ルール改定後もジサンとサラはしばらくダンジョン巡りを継続する。
ジサンは、このまま日本一周してもいいなと思い始めていた。
そんな時、変更点 ①NPCの追加実装 を強く実感する出来事が起きる。
その日、ジサンとサラはホッカイドウのとある森林ダンジョンに来ていた。
「マスター! だいたいマッピングは終わりましたかね」
「そうだな……」
最上層に到達し、そろそろ撤退しようかと考えていた。
そんな時、マップ中央にあった巨木のてっぺんの方に大きめのトレジャーボックスのような物が見える。
(一応、開けておくか……)
「ナイーヴ・ドラゴン!」
「ガゥ!」
このダンジョンは割と人の寄り付かない場所にあり、他のプレイヤーがほとんどいなかった。
そのため、ジサンはナイーヴ・ドラゴンを使役していた。
あの日の出来事以来、このナイーヴ・ドラゴンに何となく愛着が湧いており、配合素材にできずにいたのだ。
そもそもあの日以来、高レアランクのモンスターを入手していないというのもあった。
ジサンはナイーヴ・ドラゴンの背中に乗り、トレジャーボックスのところまで連れて来てもらう。
そして開ける。
(っ……!!)
中を開けて驚く。
トレジャーボックスの中には、透明感のある羽がついた……まるで妖精のような美しい少女が体を丸めて眠っていた……
ので、ジサンはトレジャーボックスをそっと閉じた。
[ぱんぱかぱーん]
(…………)
宝箱を開けたファンファーレ?のような効果音(自前)が閉じたトレジャーボックスの中から聞こえる。
「…………ナイーヴ・ドラゴン、降りていいぞ」
「ガゥ!」
ジサンはそのまま去ろうとする。
「ちょちょちょちょ、ちょっと待ってぇえええ!」
(…………)
トレジャーボックスの中から眠っていた妖精風の少女が飛び出してくる。
改めて見ると、身長は150センチくらい、翠髪のショートヘアで耳が少し尖っている。
白地に緑の装飾があるふわっとしたワンピースを着て、背中からは半透明の羽が四枚生えていた。
「何で閉めた!? おかしいでしょ! あの演出で普通、閉める!?」
妖精風の少女はジサンをまくし立てる。
「いや、名称が表示されてないからモンスターじゃないだろ?」
「えっ……そ、その通りだけど、どういうこと?」
「い、いや……」
(……説明するのが面倒だな)
「アタイはエルフとシルフのハーフ。高貴なるシェルフのルィ」
(シェルフ……? そういう設定か? 棚(shelf)みたいだな……)
「マスター……どうやら新しく追加実装されたNPCのようです」
(なるほど……)
「それでテイムできるのか?」
「マスター……残念ながらできません」
「じゃあ、いいです」
「ガゥ」
引き留められていたナイーヴ・ドラゴンがジサンの声を聞き、高度を落とそうとする。
「ちょっ! 待っ!!」
(…………)
ジサンはそのまま高度を落とす。
「ちょ! 本当に! アタイ、何でもするから! いや、何でも知ってるから!」
(…………)
「えっっ! まじ!? これでも効果ないの?」
ルィは本気で困惑している。
「うっうっう……せっかくの初仕事なのに……うっうっ……」
今度は泣き出す。
「うっうっう……せっかく100%テイム武器のありかも知ってるのに……」
ぴくっ 。
ジサンの肩がわずかに揺れる。
「ん……?」
ルィはそれを見逃さなかった。
「知ってるよ~~、100パー、テイム武器のありか……知ってるよ~~」
(…………)
「……話を聞こう」




